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アッテネーター代用

 今回モジュラーシンセ関連の話。

 Moog Mother32とベリのSystem100の間の接続ですが、一応どちらもユーロラック仕様だから、そのまま問題なく繋がるはずと思っていた。が、調べていくときっちり規格が決まってない箇所もあるらしく、ベリからムーグにEnvelope GeneratorのCVを送ると、あきらかにM32側がクリップした音の動きになっているんですね。つまりベリ側の信号が大きすぎるってこと。

 どうもsytem100はmax 10Vppで、M32は8Vppみたい。そこでこんな時登場するのがアッテネーターですが、これはまあ要は抵抗器です。一応、ユーロラックでアッテネーターのモジュールもありますが、大抵パッシブ(無電源)、中身ただの可変抵抗(ボリューム)なので。
 それを入れてもいいけど、またパッチポイントが増えるのと、ラックの場所も食うので、なんとかならないかと考えた。
 そのまま自作で抵抗をかますかと思っていましたが、ふと思いついた。オーディオアクセサリーでボリューム付きの延長ケーブルがあったではないかと。

 アマゾンで捜したら、30cmくらいのものでボリューム付きのノーブランド品が、2本セットでリーズナブル価格で見つかった。3.5mmプラグのステレオ仕様だけど、今回は実質的に無害のはず。(モジュラーはモノプラグ)
 で、買ってつなげてみたら、もともとの抵抗値もあるし、実にいい具合にアッテネートしてくれて、CVが落ち着いてドンピシャでした。ボリュームもあるし、場所も食わないしで最高。

 ただ、中国製ノーブランド品ゆえ、可変抵抗の接続が入出力逆らしく(w)、本来とは逆向きに繋がないと機器に負担が掛かる。(一応、最近のオーディオ機器は設計が優秀なので大丈夫だけど、モジュラーシンセはどうだかわからない)
 このあたり、アマゾンのコメント欄で親切に警告してくれている人がいて助かった。自分もテスターで測って確かめた。

 こういう、パッチケーブル間に挟むだけのアッテネーター製品もモジュラー業界にあるけど、やっぱりお値段はそれなりにする。
 工夫次第で気をつけて使えば、オーディオ用の製品で代用できますよ、って話でした。

蘇る70年代ビンテージペダル

 実家に転がっていたBOSSのエフェクター(ペダル)3台。昔はペダルって言い方もなかったけど、いずれも70年代後期~80年代初頭あたりのもの。自分はかれこれ音楽は30年ブランクがあったので、まあティーンエイジャー時代にアナログシンセに挿して遊んでいたやつです。
 このブログでも前に書いたけど、どれも電源が入らなくて、ああ電子スイッチとかコンデンサーあたりがイカレたか、いつか修理を……なんて思ってた。それで、先日ちょっと一台の裏蓋を明けて基板を見てみたんですね。わかりやすく電解コンデンサーの液漏れとかあるんじゃないかと思って。意外に、コンデンサはセラミックのやつばかりで、見たところ傷みもないし、かなり高密度に部品実装してあるし、これは修理するには非常に手間が掛かるなあと思って、ほぼあきらめて裏蓋戻した。
 ここでふと、もしかしたら入出力のジャックにプラグ(ケーブル)を挿したら、ちゃんと電源入るんじゃないかと、まさかなあ……と思って試したら。電源LED、入ったー!(笑) おい、そういう仕組みだったっけ?すっかり失念していた……。

 ということで、めでたく「コーラス」「フランジャー」が蘇りました。正確には故障もせず40年「持って」ました。「イコライザー」だけは、かなりLEDが暗い、動作は不安。
 なんと本物の80sビンテージ、アナログエフェクターです。これはベリやムーグ(あえてモーグと書かない)のモジュラーに挿して使わなければ、という使命感に今燃えています。
 いやはや、びっくり。この時代の日本の電子楽器・機器は異常な品質でしょ、これ。まあ、毎日40年使い倒していたわけではないので、そこは割り引きたいが、普通故障しますからね。電源も入れてなかったわけだし。
 なかなかの嬉しい驚きの夜でした。

モジュラーシンセの音色記録法

 モジュラーシンセは本当に原始的ともいえる構造なので、プリセットなんて便利なものはありません。音色を変更しようと思ったらツマミを回してパッチングして……という作業を繰り返していくわけです。
 ここで問題となるのが、作った音色をどのように記録しておくか、ということ。一期一会で音色を楽しむだけならともかく(それもまた良い趣味だが)、ウチの場合は制作に使うので、どうしてもあとで再現する必要が出てきます。たとえばラフを作って、あとで本番のレコーディングが必要になった場合。ミックスが終わってから演奏を一部修正したい…なんて時もあります。
 昔は、パッチング用の記録シート紙があって、それをコピーしてそこに筆記具で書いておく、という方式が使われていたらしい。(今でも機器構成が決まっているセミモジュラーでは使われている)

 ただ、モジュラーシンセの場合は構成も千差万別だから、記録シートから作って……というのも現実的じゃない。そこでどうするかということですが。
 もう気付いた方もおられるでしょうが、そう、スマホで撮影しておけばいいのです。文明の利器は怖ろしいな。昔は紙に手で書いてたのに。冨田先生の時代はどうされてたのかと思ってしまう(助手がいたので、さすがにその辺りは振っていたか。まあ冨田先生なら全部憶えていても不思議ではありませんが 汗)

 スマホで撮る時も、角度を変えて2枚くらいは撮影したほうがいい。結線が邪魔でツマミの位置がわからない時がある(w)。
 ウチの場合は、撮った写真はすぐPCに転送して、DAWの楽曲ファイルと同じところに入れています。

 写真を見ながらツマミの位置などを合わせても、完全に同じ音色にはなりませんが、元々アナログシンセはそういうものなので、そこは割り切っています。ギターだって次の日は音が変わっていることはよくある。生楽器は全部そうですね。

(なんか、モジュラーのパッチングや機器構成を再現・記録できるサイトもあるらしい。ただこれ2度手間だし、スマホ撮影の手軽さには敵わない)

補遺・「PLANETS」再訪

 どうやら「惑星」でmoogモジュラーシステムを2台使っていたのは確定です。
 「惑星」の次に出た「宇宙幻想」のライナーノーツを見たら、機材リストに「moog IIIp」「moog System55」とはっきり書かれていました。さらにRoland Sytem700も載っているので、どうやらフルサイズのモジュラー3台体制だったらしい。正直今回は度肝を抜かれました。
 これって業界や世間で共有された情報でしたっけ? 自分も1台だと思っていたし、色んな記事を見てきたけど、1台…って感じの扱いばかりだった記憶しかありません。
 最初期の写真だとIIIpが映っていて、その後はSystem55ばかりなので、機種を変えられたのか……と自分は捉えていました。
(IIIpは最終的には修理不能なほど故障して、NHKの放送技術博物館に寄贈されていますね)

 あと「惑星」のライナーは冨田先生ご自身で書かれていますが、その中にとんでもないことが書かれていました。
 弦楽パートは、moogとRS-202を併用したというのですね。202はRolandのストリングス(アンサンブル)キーボードで、トミタサウンドにおける弦楽パートという、非常に重要な役割を担っていたわけです。
 実は今回「惑星」を聞き返していて、今の耳で聞くと弦楽パートで、なぜかストリングスKBっぽい音が聞こえるが気のせいか…と思っていたんですね。これまで読んだ分析記事の類だと、必ずmoogを20回とか弾いて重ねて……みたいな話でしたね。なんと、公式中の公式情報、作品のライナーノーツでこんな「種明かし」がされていたのです。(重ねたのも事実でしょうが)…昔読んだけど失念してた(汗)。

 あと面白いのは、シンセの音をスピーカーで鳴らしてそれをマイクで拾った……という試みをしたパートがあること。メロトロンをそのまま使うのではなく、VCFやVCAを通して加工していること(+moogと併用)。そしてシンセに対する姿勢、どういう意識で「惑星」を制作したのかがわかります。「惑星」の物理メディアを持っている方は、ぜひライナーを読み返してみて下さい。

 フェンダーローズが機材リストに載っていて驚いたのですが、一体どこで使ったのか……と考えて、あぁあれだと。隠し味……ではありません。とても目立つところです。音の鳴りかたがモノシンセじゃないので、読者諸兄ならすぐおわかりになるはずです。ぜひ考察してみて下さい(w)。

 今回思ったのは、Rolandはトミタサウンドにおけるバイプレーヤーとして、非常に重要な役割を果たしていたんだな、ということ。あくまで主役はmoogですが。
 ちなみ、宇宙幻想では、デジタルシーケンサーの走り、Roland MC-8が満を持して導入されています。

TOMITA「PLANETS」再訪

 久々にトミタシンセサイザー作品の金字塔・ホルスト「惑星」を聞き返していました。こういう名作は聞き返す度に発見があって、有り難いことに制作上のヒントも見つかります。

 そして、これは本当に久々に(多分20年振り位?w)に、LP版のほうのライナーノーツを見てみたんです。いつも曲だけ聞いてライナーなんか見ないので。そうしたら、仰天するような情報が載っていて……。

 実は、冨田先生はミックスダウンはどうしていたんだろう、と最近思うようになったんですね。もちろん冨田スタジオにマスターテープレコーダーやミキサー機材一式があったのは知っていたけど、作品を聞いてわかる通り、かなり複雑精緻なミキシングワークを駆使しているので。たとえばマルチトラックで録音したあと、完全にスタジオ内で2mixを作ったのか、それともラフだけにして、商業スタジオに持ち込んでそこでエンジニアに指示して作ったのか。
 後者ならスタジオの名前がジャケットのどこかに載っているはずだと思って調べてみたら、これが全く見当たらない。ということは、やっぱりミックスダウンまで行ったということでしょう。やはり凄い方です。

 ……と、ここまで終らなかったんですね、ライナー見たら。なんと、「惑星」の制作に使った機材一覧の名前が書いてある。moogシンセサイザーに至っては、モジュールの名前と数量まで(!)。僕らにとっては宝の山みたいな情報です。(昔も見たはずだが、そこまで機材に詳しくなかったので、すっかり失念していたようだ。嗚呼)
 特筆すべきはオシレーター類の18個、そしてENVは12個。VCFとVCAは5・9個。あとユティリティ系モジュール盛りだくさん。最初に冨田先生が購入したというmoog IIIpの構成を完全に超えているので、もう1台買ったか、あるいはmoog system55とかを別に買ったか……。そういやSystem55(箪笥)も昔の写真にありますね。
 あの巨大なモジュラーシステム2組分で作品を作っていたのです。
(だからキーボードユニットも2台かと納得。更に買い足したモジュールもあった感じ)

 またRolandのシステム700(moogと同じフルサイズのモジュラー)の名前も見えます。
 キーボードとしては、Roland RS-202やフェンダーローズ、クラビネットもあります。あとこれは有名だけどメロトロンも(鍵盤の数分テープレコーダーを内蔵したアナログサンプラー)。
 ピックアップ付きのシタール、電気ハープもあります。

 周辺機器も面白い、フェーザーだけで4台あるし、Roland Space Echo RE-201も使われている。
 いやーびっくりです。

 マスターレコーダーは16チャンネルで、他に8~2chのものが数台。あれだけの作品なので16では全く足りなかったはずで、かなりピンポン録音などを駆使してトラックのやりくりには苦労されたんじゃないでしょうか。

 ある意味、これだけ詳細な機材リストは、手の内を明かすようなもので、なかなか表に出すことを躊躇う方もいるでしょう。ただ冨田先生はご自分から公開してくださったことで、こうして後世から研究したり参考になったりするわけです。
 リストの全貌が見たい方は、CD版「惑星」にも書いてあるので、そちらを参照して下さい。
 あの音はこうやってるんじゃないか……ってことを考えるだけで楽しいものです。

モジュラーシンセ追加

 新しいシンセモジュールをシステムに追加。

 ノイズジェネレーター、リングモジュレーター、そしてLFOとS/Hがワンユニットに入っている。これで完全に往年のアナログシンセの構成になりました。(最近のソフトシンセのアナログ再現系なんかは、サンプルホールドはなかなか入っていない)

 現在のシステム構成は、VCOx4 VCFx2 VCAx2 ENVx2 LFOx2で、なかなか面白い組み合わせだと思っています。

 これでもし自分が完全アナログ主義者なら、シーケンサーモジュールを追加してミニマムミュージックを始めちゃうんだろうけど、弊社は商業制作に活かすという絶対的なテーマがありますので。むろん、MIDI-CVコンバーターもシステムに入っています。
 ベリンガーのCM1Aなので、2チャンネル分のCV/GATEを出せる。(ということは、2音ポリフォニックにもできるってこと)

 もっとも、まだ制作にどう組み込んでいくかは試行錯誤の状態です。(もう使っている曲あるけど)
 案外、このベリシリーズ100はパッド系の音が良いんですね。だからそこは多重録音で凌ぐってことになる。

 悩みの種としては、モジュラーを触っていると30分1時間があっという間に経ってしまうこと(w)。なんとか触り過ぎないようにしている。

 自分でも意外に思ったのは、モジュラー導入して以来、「ホームに還ってきた」という気持ちが強くなっていること。自分の音楽体験の始まりはアナログシンセでしたので。
 あと、なんだか永らく失っていたものを、取り戻してしまった…という感じもする。失っていたことすら気付いていなかったもの。なんでしょうねこれは。
 十代と頃の気持ちと、こんな歳になって再び向き合っている。今は昔と違って楽曲を作れるようになっているので、懐かしいというのは違うし、新しいものを作っていこうという意識は横溢している。
 モジュラーに実用性はない(低い)んですけどね。そこを強引に実用にしていく所存。

TSケーブルのノイズ解決?

 モジュラーシンセのVCA出力から標準TSケーブルでオーディオI/Fに繋げているって、少し前書いたが、そこに乗るノイズの話。
 お恥ずかしい話だが、2chのうち片チャンネルは本当にシンセから極々わずか音が出ていたことが判明した(w)。ベリンガーseries100のVCAにはイニシャルゲインのツマミがあるんですね、これを上げると、別段CVにADSRを突っ込まなくても音が鳴りっぱなしになる。これがほんの少し上がっていた。ミキサー音量MAXでようやく聞こえるレベル。
 ただ、これを切ってもやっぱり少しミキサー画面で少しノイズが来ているのがわかる。

 ここで、ラックマウントタイプのコンプレッサー/リミッターを買ってあったのを思い出した。ヤマハの古いやつですが、こいつはちょうど2chでノイズゲートが付いている。
 それで、実家から持ってきてオーディオI/FとVCAの間に繋げてみたわけですよ(TS接続)。非常に上手くいって、ちゃんとゲートでノイズを退治できたわけです。
 ただここで問題が。お察しの通り、やっぱり直接接続に比べて音が変わっちゃうんだなあ。コンプを切ってもそうだし、ONにしたら尚更。若干ハイ落ちするし、中低域が丸まった感じになる。もともとギターやキーボード用の機材で、エフェクトチェーンの最終段でアンプ・ミキサー保護用に入れるような用途のやつなので、そこは仕方ない。

 で、外したり、直接にしたり、色々試していたんですよ。すると……なぜか、直接接続なのにいつの間にかノイズが消えている!? これはどういうことか……。
 どうも、TSケーブルの取り回しが変わったため、ノイズ発生源から遠くなり、ノイズを拾わなくなったらしい(w)。確かにACアダプタとかパソコンとか、そういうものの近くを最初通ってました。
 それで、結局コンプはもういいか、と思い始めたんだが。ただ、やはり直接接続だと何かの拍子にノイズが入る状態になりがちなので、まだ迷っています。
 何かを挟めば、音が多少変わるのは仕方ないといえば仕方ない。昔のBOSSのアナログエフェクター(ペダル)でも、電子スイッチだったので音が痩せる、って問題がありましたね。

(ちなみ、例えノイズが入っても録音後にノイズゲートプラグインや波形編集で消すことは可能)

モジュラーシンセ導入

 ふと思い立って、いつかは……と思っていたモジュラーシンセを揃えた。(自分はもういい歳だから、これ以上先延ばししてもいいことはない 汗)
 ベリンガーのシステム100シリーズです。こんなやつ。

 完全なアナログシンセサイザーで、80年代頃に出ていたRoland System100mのクローンです。(電子回路の保護期間は切れているので、権利的にはホワイト)

 ユーロラック規格で作られており、任意のモジュールを組み合わせて好みの構成にすることができる。
 電源やケースも別に用意しなければなりません。その意味で自作PCの世界に似ているかも。

 こいつらは、パッチング(結線)しないと音が出ないんですね。まあ自分なんかはCV/GATEのシンセで育ったので、パッチ作業なんかは楽勝です。
 アナログ回路だから、利用前に回路を暖める時間が必要だったり、チューニングが必要だったり、そもそも音域によって音程ズレがあったりね。
 まともな楽音を出そうと思うと、物凄く手間がかかる。だからこそ、導入してから気付いたが、これは「楽器」なのだと。

 冨田勲先生は70年代-80年代にこんな手間暇掛けて作品を作っていたのかと、改めて畏敬の念が湧いてきました。冨田先生が主に使っていたのはmoogのモジュラーだけど、80年代にはRolandのこいつらも何セットもスタジオに並んでいたので…。それを思うと、もうエンドルフィンがドバドバ出ますわ。

 これ触っていると、気分が10代の頃に戻ってしまって大変です。
 ようやく導入作業が完了したので(設置場所やオーディオの取りまわしも含めて)、今後の制作に活かします。
 使用感など、またおいおい書いてみたい。