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オーケストラ音源の定位話

 これまでフルオケ曲はUVIのOrchestra Suiteで書いてました。
 今回新たに、NI Kompleteバンドルに入っているシンフォニーシリーズ音源で書いてみたんだけど、定位の調整で大ハマリ。
(UVIの時も苦労したなあと思い出しつつ…)

 不案内な方のために説明すると、オーケストラって楽器ごとに舞台上の位置が決まっているわけですね。これを再現するために、サンプリング音源でもちゃんと位置(定位)を本物と合わせないといけないわけです(ガン無視でも良いが、リアリティが落ちる)。

 更に、左右の位置(+幅)だけでなく、奥行きのほうも、リバーブ量の増減で調整しないといけない。音が大きい金管楽器(トランペット等)や打楽器(ティンパニ等)はステージの奥の方にあるから、リバーブ量は大きめになります。逆に弦楽器は最前列だから少なめ。
 これらの仕掛けでオーケストラのスケール感を演出する。作曲というよりミックスの話ですね。

 これらのパラメータを、楽器グループごとに、オーケストラの楽器配置図と見比べながら、実際に聞いて不自然にならないよう調整していくわけです。

 ここで事態をややこしくするのが、実はオーケストラの楽器配置は、完全に固定されたものではない、ということ。現代では音響的に良いということで、弦楽器はバイオリン1・2、ビオラ、チェロ、コントラバスと左から右に並べられることが多いですが、これとて変わることがある。金菅・木管・打楽器に至っては、色々な配置があるようです。(一応代表的なものはあるが…)
 更にややこしいのが編入楽器(ゲスト参加の楽器)。サキソフォン、ユーフォニアム、ピアノetc。これらも位置は決まっていない。

 今回は、結局ヤマハのWebサイトで見つけた、オーケストラ配置図のPDFを参考にした。ググると色々な配置の図が他でも見つかります。全部微妙に違っている。(実際、オケごとに違ったり、下手をするとステージの広さの都合で会場ごとに変わることもあるらしい)

 実家にあったクラシックのレコードの写真を見ても、やっぱりオケごとに細かいところは違ってます。

 そんなこんなで最初に決めた音源の配置は、CDに焼いて楽曲をステレオコンポで再生してみると、センターがスカスカの状態で失敗。アナライザーとステレオイメージャーの画面に頼りすぎたのが敗因。
 こんな場合はちゃんとミックス時モニタースピーカーで鳴らすのと、ヘッドフォンならスピーカー音場を再現できるプラグイン、Waves Nxが良い。
 で、何回か微調整を続けて、ようやく自然な定位になりました。

 とりあえず、一度決めてしまえば、あとはテンプレートにして使い回せば良いのでそこは楽。ただ常用音源を変える度にこの作業が発生するのは気が重い(w)。

 以下おまけですが。
 今回、定位決めの参考に何枚かクラシックのCDを聞いていて気付いた衝撃の事実。同じ組曲の中でも、例えば第一曲と第二曲で楽器の定位が変わっている場合がある。ティンパニが左から中央に移ってたりとか。
 びっくりですね。音響的なことを考えて、たぶんレコーディングの合間に移動させたりするんでしょう。指揮者の方は大変だ。ティンパニが左にいると思って指揮棒振ったら他の楽器だったりしてね(w)。きっと演奏会でも目立たないだけで、こういうミスは起きてるんだろうなあ。

声:音読さん

雑記シリーズ

 車のオイル交換を車検以来してなくて、行こう行こうと思うだけで酷暑だったり大雨で連続延期、とうとういつものガソリンスタンドでやってもらったが、所要時間にビックリ。ほぼ5分強。ちょっと前まで20分とか掛かってたはずなんだが、見てたら銀色の全自動交換ロボ的なやつに繋いですぐ終った。昔は車の下からオイル抜いて……みたいな感じでしたね。文明の利器は怖ろしい。スタンドもいつまで営業してくれるのか、EV時代には戦々恐々です。近所で廃業したところが複数ある。

 韓国のコメディ映画「MISSION POSSIBLE」を全く期待しないで観たんだが、大当たり。トムクルーズのパロじゃなくてシティハンターでした(w)。韓国は実際中国や北朝鮮のスパイが入り乱れていて、情報戦は絵空事ではないリアルな世界の話なんですね。本家MIシリーズよりよほど現実味ある。まあほぼ漫画のノリですが、随分とお笑い芸人風の主人公、実は…ってやつです。韓国も拳銃は厳しく取り締まられているそうで、そこへ大量のトカレフをバラまく犯罪組織を阻止する話です。最近のハリウッド映画は演出脚本ヒネり過ぎで疲れますが、こちらはやっぱりアジア圏、安心の出来。

 指揮者の岩城宏之さんの本を読んでいたら、ハープで面白い話があった。オーケストラで使われるグランドハープは、実はメカ内蔵で、重量はケースに入れると100キロ位ある。大人2-3人でなんとか運べる代物ですが、当然ハープ奏者は移動時に運送会社に頼まなくてはならない。東京にはT運送というハープ専門の運送会社があるそうです(少し古い本なので現況は不明)。N響が戦後初めて海外ハープ奏者を招聘したとき、その方が住んだ家の近所に偶然あった小さな運送会社が始まりだそう。最初はオート三輪でハープを運んだらしい。ずれないよう、奏者の方が荷台でケースを押えていた。東京のハープ奏者は必ずお世話になっているとか。

フルオケ曲メモ

 最近オーケストラ曲を書いていて気付いたこと雑感。今度は純粋なインストの話。
 これは理論書にも書いてありますが、アレンジのときコードトーンを重ねるならルートか第5音でないと、ハーモニーが安定しなくて変な感じになりますね(一応は)。逆にバンド曲やPOPS全般だと、根音はベースだけでもカッコイイ場合が多い(ルートを増やすとハーモニーが濁る)。
 オーケストラの場合、音源といえども一音一音のオクタン価は非常に高いから(バイオリンセクションなら30名)、そのあたりが音響的に関係してくるのかも。
(逆に、それを利用して不安定な感じを出すアレンジも作れるはず…)
 大人数の合奏でコードの響きを安定させるには、やはり根音が大切で、一種のハイ・ペダルポイントみたいな扱いで、増やした方が良いのかも(仮説)。

 またそれに関連してボイシングですが、テトラド(4和音)の場合で、オクターブ離してもどうしても当たってM7が使えない場合がある。これは不思議だが、同じメカニズムが関係しているのかも。
 こういう時の対策は、他の楽器でM7の音を出したり……ですね。逆にトライアド(3和音)はほとんどの場合、非常に美しく響きます。大昔に読んだクラシック系の理論書(入門書)で、M7が不協和音扱いになっていた記憶があるが、そのせいか。いや、記憶違いかも?(w)
 テンションは、実は今のところあんまり扱いに困ることはないなあ。そもそもそんなに重ねませんね。

 あと、意外と、ユニゾンやらTuttiが力強くてカッコイイ。ストレートな破壊力がある。複雑な演奏機構で単純なスタイルを取るのが美しいのかもしれません。

 Kompleteのシンフォニーシリーズ音源ですが、使ってみたら意外とアーティキュレーションが少なかった。劇伴に的を絞った感じかそれにしてもバイオリンアンサンブルで8種って、ちょっとどうなのか(w)。音も、まあ劇伴ですねこれは。
 シリーズにハープが入ってないのがショックっていうか、こりゃ酷いクレームレベル(笑)。劇伴で使いますからね。一応他に音源持ってるけどさあ…。

 時々無性にオーケストラ曲も書きたくなるので、今後とも合間合間に書いていきます。

追記:ジャズの理論本でも、少し前のやつだとM7の音が準テンション扱いになっているものもある。現代的なハーモニー感進化のなかで、扱いが変わってきたんですね。

オーケストラ曲のMIX/マスタリング

 ここでいうオーケストラ曲とは、歌モノをフルオケアレンジしたものです。つまり、映画音楽のようなインスト曲ではない。以下メモ書き風に。

 実は、ドラムスやエレキベースが入らないなら、つまりバックがフルオケだけなら、ミキシングは意外と簡単です。だいたいフルオケ音源って音が作ってあって、つまり一部ミキシング済だったりします。下手をするとパンまで振ってあるやつもある。
 パンが振ってなくても、オケの楽器配置図なんかを参考に、パンとリバーブで位置を決めてやるだけで、まあ一応は終りですね。一応、低音楽器なんかは周波数の下の方を、適宜EQ処理した方がいいかもしれない。ティンパニなんかは、ゲートでリリースを短くしたり、くらいですか。
 下手にEQで色々弄ると、途端に嘘っぽくなるので、特に今の主流音源はバンド曲のノリで弄っては駄目です。念のため、コンプなんかもってのほか(笑)。
(おっと、ミキシングの超基本タスク、ボリューム決めはその分慎重に)

 ちょっと話が逸れたけど、ボーカルもまあできればナチュラルな処理に抑えて、パッツンパッツンにしないほうが吉。ただ、普通のシンガーはオペラ歌唱ではないから、ここはコンプがないと流石につらいと思います。バランス的にオケに埋もれてしまいます。不自然でなければOK。ブレス処理注意ね、目立つから。

 で、ここからがマスタリングの出番ですが。普通はフルオケアレンジなら、静かなところと大迫力のところのメリハリが大きいから、どんな方針でやるか。やっぱり、フルオケとはいえ「POPS」なので、聞きやすさが大切です。クラシックみたいに音圧無関係、という態度では駄目だと思います。で、結局色々と様子を見ながらOzone等で調整していくしかないのです。曲ごとにアレンジも違うから必勝方程式みたいなものはありません。ただ不自然なところギリギリまで音圧を上げ、場合によってはマスターフェーダーも動かして、音圧・音量を(ある程度は)一定にした方が良い結果が出るようです。

 もっとも、これだけ苦労して良いマスターを作っても、配信サイトに投げたら各社の内部処理でメチャクチャにされる可能性だってあるので、まあとりあえずベストを尽くしたら最後は腹を括ろう。身も蓋もないがそれが現実。

(Ozoneなら、プリセットは使わない方がいい。フルオケ曲なんか確実にメタメタにされる。アシスタンスも駄目でしょう。自分の耳を信じて調整していくしかないのです。逆にダイナミックEQやマルチバンドコンプは不要、バランスや定位が崩される)

7月の雑記

 実家の玄関明かり窓に、ヤモリ3匹目を発見。いや3匹て、大人気だな。2匹いたやつも、数日見ないうちになんだか一回り大きくなっている。商売繁盛といったところか(w)。そういえば今年は少し虫が少ない気がする。3匹目はまだ少し小さいのでこれが一番新入りか。動きも素早く、もう明かり窓が縄張り的に一杯なのか、玄関の曇りガラスに張り付いていた。知らずに開けたら慌てて逃げていきました。こいつらはこいつらで生存競争大変だ。たまに雨の夜にいないことがあると却って心配。

 マイナカードが大変な騒ぎになっていますね。自分は一昨年くらいに取得しました、それはe-taxで確定申告がオンラインで行えるから。この場合はカードリーダーにマイナカードを入れて本人確認手段にします。カードリーダー昔は高かったが、今は1000円くらい。この程度でも結構便利だから良いのに、保険証や免許証を統合するというのはやり過ぎでしょう。当初の予定にはない機能追加だから、ただでさえ複雑なシステムが破綻する訳です。政治家や役人で全体像を理解している人がいない。全部思いつき。凄い国だなあ、これで先進国を自称してるんだから。デジタル化で事務処理を複雑化し、更に利権を得たいという魂胆かも。これでインボイスが始まったら医療現場は地獄です。

 Native Instruments/Kompleteに入っているオーケストラ音源を久々に触っていたら、こいつのストリングスって自動でdivisiしてくれるんですね、びっくりした。和音をMIDIで送ると、自動で各パートに人数が分割されて割り当てられる。バイオリンセクションは30人ですが、そこへ3和音を送ると16+8+6みたいに割り振ってくれる。これはリアルです。実際は、劇伴やPOPSのフルオケ曲ならあんまりdivisiを使うことはないかもしれませんが。ビオラ、チェロ、コントラバスも同様。かなり音を作りこんであるので、クラシック向けではないと思うけど、ゴージャスな感じのオケがハマる曲なら使えそう。ただいまDAWで利用準備中。もしかしたらPOPSのストリングスでも使えるかもと期待。こいつはsoundironが担当したようですね。

Soundironのストリングス音源

 書こうと思って忘れていた、Soundironの「Hyperion Strings Elements」(ストリングス音源)の使用感、軽くメモ。手持ちのストリングス音源が欧州系のやつばかりだったので、アメリカのデベロッパーであるSoundironの音源を試しに購入してみた。デモを聞く限りでは、なかなかブライトでリッチな感じの、アメリカンで良い感触だったので(一応は期待通り)。

 それで早速使ってみたんだけど、困ったことになんだか若干サンプルの処理が荒い気がする。ちょっとザラつき、粒のそろってない感じが聞こえる。
 実はこれはある意味リアルで、昔スタジオにストリングスが常駐していた時代の録音を聞くと、今のようにツルツルスベスベの音じゃなく、ザラつきや乱れた感じ、下手すりゃピッチの狂いもしばしばある。(今のストリングス奏者は、昔より遥かに上手い。ミックスのせいもある)
 奏法も一通り揃っているし、パラメータの設定も一応は使いやすい。だからその点だけどう考えるか、ってことだと思います。これに比べたらNIのストリングスはかなりサンプルの処理を磨き上げているんだなあ、と。
(ある意味荒っぽいところもアメリカンか?w)

 一応、音的にはポップスや劇伴なんかに合う音だと思います。APIのモデリングプラグインを通したら、まさにコテコテのアメリカンサウンドになりそう。持っておいてもまあまあ悪くない音源ですね(たぶん将来上位エディションも出るんだろうな)。

Session Strings Pro2の起用術

 NIのSession Strings Pro2(以下SSP2)ですが、なんとなく利用法が掴めてきたので簡単にメモ。これは編成が大きいストリグスセクションなんですね。ほぼチャンバーオーケストラ(室内管弦楽団)級。というか、普通のやつよりこっちのが編成は大きい。

 そこで、通常のストリングスではなく、チャンバーオケの弦だと思って使うといいかもしれません。(例によってボヤっとしてるが……断定するほうがおかしいよね 汗) 当たり前っぽいが、要はSSP1の高級版(高音質版)だとは思わないこと。あくまで別の扱いが必要になる。
 やっぱり大編成だけに、迫力や印象の強いストリングスが欲しい時に起用すると良いようです。
 とにかく単音でも、音が「強い」そして「太い」「濃い」。あんまり繊細な表現よりド迫力が欲しい時なんかに合うかも。ポップスだと他のパートを喰ってしまうこともあるので、アレンジのバランスには注意が必要。
(ピチカートなんか音のパンチ力が凄い)

 しかしやっぱり欧州の製品だからか、基本的にはクラシカルなトーンなんですね。
 意外にも思えるけど、高品質のサンプリング音源はやっぱりお国柄が出てくるようです。あくまで基本は人間が弾いてミックス処理した録音物なので、こういう結果になるんでしょう。

(ということで先日GETした米国Soundironの弦を試用中)