月: 2020年2月

Q理論: 4度堆積和音メモ書き

 今回は作曲勢の皆様にしかわからない話。

 ちょっと前ここで言っていた4度堆積和音の表記法、今書いている曲から導入してみました。「CQ」みたいなやつね。これでCから上に4度-4度のトライアド(3和音)。実音だとC-F-Bbですね。
 これは本来の表記法だと、C7sus4 omit5ですね。もし5thをomitしないで1オクターブdropすると、G-C-F-Bbになって、これが実はまた4度で、4度堆積のテトラド(4和音)になる。思った以上に4度堆積はsus4と関連が深い、面白い。
(テトラドの表記だと、この場合GQ#9というのを考えています、今のところ)

 で、細かい話は置いておいて超ザックリとした感想だけど、どうもこのQ和音はサブドミナント類といえそうな感じがする。ドミナントではないし、トニックでも勿論ない。
 というのは、従来の機能和声(普通のコード進行)の中にこいつをいれると、どうやらサブドミナントのような機能になっているんですね。その証拠に、本物のSDを連結しようとすると、機能が同じ感じでうまく進行してくれません(実表記だとFとか代理のDm)。逆にトニックやドミナントだとうまく行っています。
 そして面白いことには、これはsus4ではないんですね、構成音は同じでもきっちり4度で堆積していると、違う和音に変化してるような感じ。
 ま、これはまだ1曲書いただけのファーストインプレッションなので……。
 あと、テトラドになると、ちょっとテンションが当たっているフレーバーになる、なのでCQ#9という表記は案外良いのかも。

 とりあえず、Q理論といってるけど、衒学的に追求するつもりはさらさらなく、従来のコード理論の中で、いかに簡単に簡便に4度堆積を使うか、使えるようにするか、という超実戦的なものを目指しています。まあちょっとした理論拡張ですね。日々の作曲活動の中で便利に使えればそれで良いわけです。
 もともとコードネームが発明されたのも、クラシックの表記ではわかりにくいからと、コードを簡単に扱えるようにという意図だったはずなので。20世紀初頭のアメリカが発祥だったと何かで読んだ。(それがデューク・エリントンらのジャズの理論構築にもつながっていく)。

 最後に、Cメジャーの場合の構成音一覧:

●QUADトライアド

CQ [IQ] C-F-Bb
DQ [IIQ] D-G-C *
EQ [IIIQ] E-A-D *
FQ [IVQ] F-Bb-Eb
GQ [VQ] G-C-F *
AQ [VIQ] A-D-G *
BQ [VIIQ] B-E-A *

[*] – スケールトーンだけで構成されているもの(=ダイアトニックコード)
(つまり、CQとFQはダイアトニックコードにはならない)

●QUADテトラド

CQ#9 [IQ#9] C-F-Bb-Eb
DQ#9 [IIQ#9] D-G-C-F *
EQ#9 [IIIQ#9] E-A-D-G *
FQ#9 [IVQ#9] F-Bb-Eb-Ab
GQ#9 [VQ#9] G-C-F-Bb
AQ#9 [VIQ#9] A-D-G-C *
BQ#9 [VIIQ#9] B-E-A-D *

(今度はI IV Vが外れてしまった)

 まあ独自研究というもんでもなく、頭の体操みたいなもんですわ。

POPS=ファミレス論

 ある新曲を聴いていて思ったこと。「ああこれ、バックにストリングスとか一杯伴奏入れたいなあ……」

 シンガーソングライターの皆様が、ピアノだけ、またはギターだけで伴奏する曲を作って発表したくなる気持ちはわかります(少しの付加楽器は、この際考えない)。それだけ純粋に歌のテーマ性が浮かび上がるし、うまくハマれば非常に効果的ですからね。
 ただ、やっぱり作曲やっている人間から言わせてもらうと、より聞き易くするために(=より多くの人に聞いて貰えるように)、ちゃんとフルアレンジしてバッキング一式を付けた方が、一般的には良いんじゃないかと思うわけです。その方が、確実に発表した歌を理解して聞いてくれる方は増えるはずなので。

 ポピュラーミュージックとは、つまるところエンタメであり、料理店で例えればファミレスだと思うんですね。ファミレスの料理って、例え民族料理みたいなやつでも、ちゃんと食べ易くなっていますので。まさにアレンジです。
 ピアノやギターでのソロ伴奏曲だと、専門店になっちゃって、普通のリスナーには敷居が高くなってしまうんじゃないでしょうか。カレーも激辛専門インド料理店より、ファミレスの方が、まあ食べ易いんじゃないかと(あるいはチェーン店でも同じ)。
 自分がインストを好きだから言うのではありませんが、やっぱりフルアレンジ、+アーティストさんの歌、という形が、一番「ああ、曲を聞いたなあ」とリスナーさんに思って貰える可能性が高い。もちろん世の中には、ピアノやギターだけで聞かせる曲もありますが、普通のPOPSのメインストリームからは外れてくる感じはある。

 蛇足めいてきますが、AORってアレンジありきの音楽ですからね。スティーリー・ダンなんて、実はボーカルはそんなに達者というわけではない。だから楽器で……というわけでもないんでしょうが、自分たちの強みと弱みをよくわかっているなあ、などと聞いていて思うわけです。
 なので、どうやったら書いた曲をリスナーさんに理解してもらえるか、って戦略的なところも、特に一人でやっているアーティストさんは考えていないといけない、ということになりますね。まあそれがプロデュース、ってことになるのでしょうが。
 今回は多少の上から目線に聞こえましたら、心の底からメンゴです(w)。
 まあ世の中にはアレンジした方が映える曲もある、ってことです。

(フルアレンジどうこう書いたけど、ピアノだけ、あるいはギターだけで勝負できるようなインスト曲は除きますよ、もちろん。世の中は怖ろしいまでの表現力のプレイヤーがたくさんおられます、御存じのように。ボーカルを超える器楽演奏、正に神業です。インストで売れている方々は実はみんなそうですね)

(追記:大切なことを忘れてました。メロは大変良質でございました、そしてイントロとピアノのバッキングも良い…ので余計に)

理想のマスタリング

 ミックス後のファイル(2mix)を最終処理する工程、マスタリング。一応、正確な用語では「プリ・マスタリング」ですが。本来のマスタリングはアルバム収録曲すべてのレベルや音質を、リスナーが続けて聞いても違和感ないよう揃えるものなので。
 ただ今は配信ならバラ売りだし、だんだん区別も付ける必然性が減ってきているのは事実。(こうしてみると、コンピ盤やベスト盤は、曲ごとに色々バラバラだから、マスター作りは難しいんだろうな)

 で、プリ省略して書きますが、理想のマスタリングとは、ズバリ限りなく透明であること、でしょう。音圧を上げるにしても、できるだけ2mixのイメージやダイナミクス感を変えない。色をつけないってことです。もちろんステレオイメージも変えない。
 そんな処理で済む2mixを用意しておく、という前提がありますが。つまり、何か曲のイメージを付けたいなら、ミックスの時にやっておく。もっといえばアレンジの時に予めその辺りも考慮して作るってことですね。幸い弊社(者?)の場合は上流から下流まですべてワンストップでやってるので、こういうことが出来るのですが。これが分業だったりすると、そうはいかないけど。

 最近ますますこれは確信に変ってきてます。マスタリングの時、つい色々試してみたくなるけど、結局いつも余計なことをせず一番素直なマスター用のEQとマキシマイザーを差してそれで終り。これが一番良い結果が出る。ミックスで全てやっておけば、あとは弄るべきじゃないわけです。幸い音圧戦争もとうに終り、あまりに音圧上げた曲は歪んで聞きにくいよね、ってコンセンサンスが出来てると思います。そうするとマスタリングで2段コンプとかも、余程のことがない限り要らないんだよなあ。

 まあ、マキシマイザーの類も、色がつくようなヤツは、他のミキサーさんがやった曲で、音質を揃えたい時には要る。ただ、アナログ感を予め出した2mixに、アナログ感のあるマキシを掛けたりすると、今度は歪んで聞きづらくなるもんね。(だから手持ちの「PSP Xenon」なんか、いいプロダクトだと思うけど結局いつも出番がない)

 逆に「テラMIDI」感のある2mixやパラデータだったら、徹底的に色をつけた方が良い結果が出るんだけど。(アビーロード系のはっきり色がつくコンプやEQが良い仕事をしてくれる、そんな時は)

 ここ数日はコロナのこともあり、ますますヒキこもって音楽制作と年貢計算に精を出しています(w)。

デモ曲追加・ニュー演歌

 得意分野→演歌としている癖に、デモ曲がなかったので1曲作ってみました。

「空蝉」

 いわゆる「ド演歌」(業界用語、トラディショナルな演歌)ではなく、POPSの要素があるニュー演歌とでもいうべき曲です。現代の演歌は、シンセや歪んだエレキギターをフィーチャーした曲もあるし、サウンドも格好良かったりするので、その辺りも踏まえつつ。ブラスは昭和の歌謡曲っぽい音にしてみました。

 今回は、巴一葉さんという大変達者な方に歌って頂きました。正直ここまで演歌が歌える方は今時珍しいんじゃないかと思います。

 演歌やムード歌謡は、まだまだ可能性の大きい分野。歌謡曲もそうですが、いわゆるJ-POPにはない世界を持った曲が、あまり聞かれなくなったのは寂しいですね。微力ながら復興に力添えできたら……などと夢想しております。

黄色い粉+上納金

 ……マトリが動くようなヤバイあれではありません(w)。でもゼイトリは動くかもな? 花粉と確定申告の季節が一挙にやってきやがりました。目がチカチカしたりクシャミが出たり。はぁ~。
 去年は花粉飛散がかなり遅かったんで油断してたが、今年は重なった……。誰が日本中の山に杉を植えたんですかね。実は利権になっていて変えるわけにはいかない、などという話もあり、この国は一度破滅の道に入ったらもう軌道修正なんて誰もしないんだな、と。コロナウイルスのこともあるし、春が来るのが非常に不安。たとえ感染しても抵抗力で無発症をせめて祈っているけど、虚弱体質にだけは自信があるので(w)。皆さんとお別れかもしれません。昔O157的なやつにも感染して死にかけたからな。(今度のも、対処療法しかないらしい。つまり薬では治らないってこと)
 あとせめて600曲くらいは書きたいので、それまではウイルスこないでくれ。でもマスクでも防げない、目の粘膜からも空気感染するって話だからなあ……。マスク+プラグラス(花粉用のやつはもってる)で頑張るか。このいでたちで銀行行くと完全に強盗。逮捕されます。

 青色申告の準備は、今年はかなり進めてきているんですけどね。これも今後何年かかけて更に面倒になってくので(インボイス制度等)。

 以下余談、昔(戦前)はいわゆる芸能活動は、なんと無税だったそうですね。その代わり鑑札が必要だったらしい(お上への登録制だよね)。歌手の故・淡谷のり子さんの話として、放送作家のはかま満緒さんの本に書いてありました。だから昔の方がよかったとボヤいていたらしい(w)。他にも……。

 淡谷さんは、戦局が厳しいときも(芸能人の矜持として)化粧するのを止めなかった。それでよく街で愛国ナントカ婦人会の人に絡まれたが、「私の顔は化粧でもしてないと見られないの」などと言って(w)、外国化粧品を法外な値段でツテで買っていた。その代わり慰問で呼ばれれば、どんな最前線でも行ってミカン箱の上ででも歌った。いつも兵隊からは大喝采だったそうです。戦後GHQから呼び出されて行ってみたら、軍に出した始末書の束が電話帳くらいになってたそう。(時代が変わっても軸がブレない人って格好良いっすよね)

ジミヘンのギターでトリップ?

 ふと思い立って、ジミ・ヘンドリクスの曲をYoutubeで探してみました。当時の映像はフィルムだと思いますが、デジタル修復されたのか、驚くほどクリアで発色の良いものが見つかりますね。ついでに音の方も処理されたのかなかなか良い状態。以下はそんな映像の一つ。

 これもフェスでのライブ映像らしいけど、プレイの様子がこんなに克明に見られるのはそれだけで歴史的価値があります。結構、右手だけで音を出しているフレーズがあったりしますね(左利きなので、右手はフレットを押さえる方の手)。右利き用のストラトを逆さにして強引に使うところなんか、もう60年代のカウンターカルチャーの象徴のようなもの。
 楽器が身体の一部のようになっている。インプロヴィゼーションとしても言うまでもなく素晴らしい。こんな人がドラッグのせいで若くして亡くなったのだから、本当にドラッグカルチャーというのは(生み出したものもあるにせよ)、罪深い。
 何度も書いてるけどソニー・ロリンズなんか、廃人同様のとこから復活できたのは、正に奇跡だったでしょう。(並外れてメンタルもフィジカルも、音楽への想いも強かったと思う)

 ディストーションの掛かったハイの強いストラトのソロを延々聞いていると、実はそれだけでトリップしてしまいます。60年代という時代に(自分はまだ子供だったが)何故か引き戻されてしまうのだから、音楽というのは本当に不思議です。そういえばこの人はサイケデリックでもあったのでしたっけ。だからこの衣装なのか?(w)袖が広がっていてギター弾きにくそうだ。

 ジミヘンじゃ極端ですが、こういう自分のスタイルを強固に持っている名プレイヤーに曲を書こうと思ったら(あるいは曲に参加してもらおうと思ったら)、脚本の当て書きみたいに曲も当て書きするしかなさそうですね。(あるいはソロだけまかせるか)
 こういうのはボブ・ジェームスが得意でした、スティーブ・ガッドを起用した「はげ山の一夜」なんかその典型。プレイヤーのことを熟知していなければいけない分、普通のアレンジより数段難しくなるでしょう。(当然、スティーリー・ダンの事例のように、没も出てくるはず)

 ジミヘンは、ギル・エヴァンス・オーケストラとの共演が死去により実現しなかった話が有名ですが、今回調べてみたら、それ以前にマイルス・デイヴィスとも親交があり、マイルスの自宅で行われていたセッションには何度か参加していたらしい(!)。マイルスから非常に高い評価を得ていて、2度ほど共演話があったが流れ、3度目でギルとマイルスとジミヘンでコラボする予定だったのとこと。もし実現していたら、ジャンルを超える歴史的名盤、どころかここから新しい音楽ジャンルが生まれていたかもしれません。

 ギルは、ジミは本当はジャズミュージシャンだ、彼は恥ずかしがりやだからそれを認めないだけ、と言っていたとか。

(今回、ジミヘンの顔って誰かに似ているな、と思ってしまったのですが、よく考えたら若い頃のカルロス・サンタナと似てません? 驚愕の大発見、かも?w)

向谷実さんの珠玉のピアノ

 今回は、ここで四の五の説明する前に、日本を代表するミュージシャンのお一人、向谷実さんの珠玉のピアノ演奏をお楽しみ下さいませ。

 明治の大作曲家、成田為三さんの名曲「浜辺の歌」(作詞・林古渓)、この日本人なら誰でも知っている歌曲を、流麗なハーモナイズで蘇えらせておられますね。ここで紹介するまでもなくもう3万回以上再生されてますが……(w)。
 これは本当に心に染みます。たぶん海外のプレイヤーでは、どんな名手でもこんな風に楽曲の良さを引き出せないでしょう。

 最後のお洒落な半音下降のところ、例のアレだと思いますが、自信がないので断言はしません(我ながらちょっと情けない?)。少なくともdimではないと思いますが、テンションが当たっている気がするので多分。

 向谷実さんは、マルチキーボードのプレイスタイルを極められた方なので(明らかにオーソリティの一人)、ルーツ楽器はオルガン系かと思われがちですが、実はピアノですからね。
 こうしてみると、アップライトピアノというのも、グランドピアノには絶対ない持ち味があるなあなどと感慨に耽りました、まあ名手が弾いた時限定かもしれませんが。

 これは秋田内陸線の新列車運行記念イベントでの一コマらしいです。この駅では接近を知らせる音楽も、向谷さん作曲のものが流れているとのこと、ご興味のある向きはツイッターを辿って下さい(すぐ下です)。この到着音楽も考えたら環境音楽の一種っすね。

 ……というようなことを書こうとしていた矢先、なんとこの6月には、向谷さんが率いるビッグバンドでのコンサートがあるとのニュースが。豪華メンバー等詳細は[こちら]をご覧いただくとして、ドラムスは神保彰さん。ぬおお。
 「向谷実と輝くオーケストラ」から35年ですか、ついに本物のビッグバンドが結成されるとは……。(輝くオーケストラとは、向谷実さんソロアルバム第1作の中にあった、FMシンセの多重録音による一人ビッグバンド……ですが、調べたら2011年に自主製作版でもあったのですね、勉強不足でした)

 自分も、凄腕ミュージシャンの皆様のお仕事を遠くから拝見しつつ、これからも自分なりにちまちまガンバリマス……。

神保彰さんの新作「26th Street NY Duo」

 遅ればせながら、世界的ドラマー・神保彰さんの新アルバム「26th Street NY Duo」を拝聴しました。いや~もうエガったです(思わず訛った)。

 アダルトコンテンポラリー・フュージョンとでも呼びたくなるような大人のインストゥルメンタル(Smoothというにはまた違うハードさ、シリアスさが底にあります)。なんだかふとMJQ(Modern Jazz Quartet)を思い出しました、不思議です。一音一音の密度・濃度が高いのに、音数は少ないのだから(そう、まるでマイルスのソロのように)、実はスリリングでもあり、次の展開が楽しみで、一度聴き始めたらCDを止めることができません(w)。
 これが実質デュオで演っている音なのだから、驚いてしまいます。

 参加ミュージシャンは、ギターがOz Noy、ベースはWill Lee。二人一度に参加している曲はなく、Oz-Will-Oz-Willとデュオ曲が並ぶ構成。
 Will Leeは、いわずと知れた大ベテランのセッションメンですが(一体世界中で何枚に参加しているか本人もわからないはずw)、今回は非常に落ち着いたプレイ。というか、神保さんの出方を見て少し遠慮しているか、やや楽曲解釈に迷いがある感じはする。
 その分、Oz Noyは激ハマリの大暴れで(といっても節度はありますよ、人のセッションなのでw)、大当たりで楽しめました。方向は違うけど、故Hiram Bullockを髣髴とさせるヤンチャな弾きっぷり。実はこの人のギターは初めて聞きましたがこれはいいプレイヤーっすよ~。
(このあたりの差が、1曲目=withノイ曲という構成になったのかもしれません、まあ憶測ですが)

 前述の通り、音数を絞った神保さんのプレイのカッコ良さ。うーんこれは若いドラマーには無理ですねー、ベテランの余裕と貫禄。そして、もし自分の聞き間違いでなければ、まるで一時転調ならぬ「一時転拍」とでも呼びたくなるような、絶妙なタイミングでのショットが入ったりして、これがまたクール。ただただ脱帽です。
 ステディでタフなタイム感、これはジャズでもロックでもみられない、ジャパニーズ・フュージョンで培った神保彰さん独特のものではないでしょうか。このドラムプレイだけで値千金。

 またミックスがカッコよいのですよねー、実は、今回のを聞いて言うんじゃありませんが、少し前から神保さんのドラムをワンマイクでスタジオブースじゃない場所(練習部屋とか)で録ったらどうなるだろう……かなり面白いんじゃないかな、などと妄想しておりまして(w)。そしたら、まさにこのCDのサウンドがそれに近いじゃないですか! えええ……と驚くとともに、流石にご本人が一番分かってらっしゃるのだな、と。で、ですよねーw
 神保さんのドラムは、いつも現代レコーディング技術の粋を集めた環境での超ハイファイ録音なので(当然、世界最高レベルのドラマーなので)、そうでない音というのは非常に新鮮で面白いです。
 一言で言えばローファイですか、テープっぽい質感もあって、ルーミィなアンビエンスもたっぷり、スネアなんてアンビエンスのお陰で’80年代のゲートリバーブみたいな感じにも聞こえる。このミックスはとにかくクールっす。
(最近の音は全部こうだったのでしょうかね。妄言多謝です)

 あと同期シンセの音が、ユーロラックモジュラー感のあるアナログRAWな感じで非常に尖ってて現代的、これもプログラミングは神保さんなので。(なお全曲書き下ろしオリジナル曲)

 いやー、世界の名ドラマーから世界の今のフュージョンの音を教えて頂きました。アマゾンのカテゴリランキングで(同時発売のもう1枚と同時に)1位になるはずですね。
 フュージョンの可能性を再認識した作品でございました。

秋吉敏子さんの心構え

 この前深夜にTVをつけたらETVで「SWITHインタビュー達人達」という対談番組をやっていて、この回のゲストがなんとジャズピアニストの秋吉敏子さんと、女優の松坂慶子さん。
 秋吉敏子さんといえば、業界最長老のゴッドマザーにして、文字通り音楽界の生きるレジェンドですが(なんと御年90歳)、全然見えないしまだアメリカでバリバリの現役、番組でもピアノを弾いておられましたが、全く衰えがないですね~。
 そして松坂慶子さんがまたお綺麗でして、ご主人はジャズミュージシャンですから、そしてやっぱりお綺麗ですし(しつこいw)これは良い番組が見られました。って言っても全部見られなかったけど、秋吉さんがすごく印象的なことを言っておられて。

 番組は、まず松坂さんがニューヨークのSOHO地区にある秋吉さんのご自宅を訪問するところから始まりました。
 ここで秋吉さんが言っておられたのは、自分は(音楽家として)まだまだだと思っている、でも今日よりは明日は1日分進化しているから、1日1日良いミュージシャンになっている、ということだったんですね。自分はまだまだ、と思うからこそやっていける、慢心してしまったらそこで終り、まだまだだからこそもっと腕を磨こうと生きていける、とおっしゃる。現役音楽家として70年にも及ぶプロ生活を過ごしてきた方がこうなんだから、これは僕らは絶対見習わないといけないことなんでしょうね。
 それでも、やはり年齢のことがあるから、1日寝てばかりという日もあるそうですが。歳をとっても、それだけ経験を積めばより良いミュージシャンになっていけるはず、ということです。凄いなぁ~。

 秋吉敏子さん、アメリカでのデビューが1953年なんですね。もう驚くなかれですよ、昭和53年じゃないよ(笑)、ガチガチのモダンジャズ全盛期、普段うんちく三昧のジャズマニアがぶっ倒れるよ。
 戦後、九州のジャズクラブで演奏をはじめて、その後東京へゆき、そこで来日したあのオスカー・ピーターソンに見出され、渡米してレコードデビュー。
 当時、向こうのTVに出てたときのビデオが流れてましたが(よく残ってたな)、着物を着てクイズ番組に出演、この日本から来たお嬢さんの職業は何でしょう、みたいなやつ。正解後、スタジオでピアノトリオ演奏するわけです。こういうのは嫌う人は嫌うかもしれませんが、秋吉さんは宣伝になると思ってどんどん出演したらしい。実際それで結構名が売れたそう。そのあたりは流石にショーマンシップ溢れるジャズメンって感じですか。
 ご主人はサックス&フルート奏者のルー・タバキンだし、秋吉・ルーの双頭ビッグバンドじゃ、そりゃお客来ますよ。二人いっぺんに見られる上にビッグバンド、一粒で三度おいしい状態だし。
 うーん、このあたりで時間切れで全部見られなかったのよ、残念。

 以下はおまけ。秋吉さんといえば、「ジャズと生きる」という自叙伝がありますが、この中の渡米後初日夜のエピソードがなかなか衝撃です。知り合いのジャズメンに連れられて、ジャズクラブに行った。演奏していたのはなんと帝王マイルス・デイビス。ビバップばりばりの頃でっせ、1953年なので。
 そしたらマイルスが「一緒に演るか」とゲストに誘ってくれた。ところが緊張とパニックのあまり「NO!」と言ってしまった(笑)。
 その夜のマイルスは「おれって本当は…嫌われているのかな…」などとカウンターで俯いて独りバーボンをあおっていたという。いやそれは嘘ですが。
 怖い怖い、アメリカでデビューするってこういうことなんだよなあ、と。その後、マイルスとは無事共演したそうですが。

 もうこのまま10年でも20年でも現役でいて頂きたい、日本が誇る世界の秋吉敏子さんのお話でした。

ギター音源の再現度

 今書いている曲で、どうもバッキングのアコースティックギター音源のコードがメロと当たる箇所があって、強すぎるのかな?とかボイシングかポジション?とか、ストロークの向きか、などと色々やってみたのですが、どうしても響きが汚い感じになる。
 なんでかと首を捻っていたら、はい、コードネームをふと見たらわかりました。「EbM7」……これ、本物のギターでも響きがよくないやつですわ(w)。ギターって一番響きがいいのは「E」とか「Em」とか根音がEのコードなので。そこから半音ズレたら、これは逆に一番響きが悪くなる感じ。

 だから、今のサンプリング音源は本当によく出来ているなあ、と感心してしまった。本物のギターと同じように、響きが汚いものはそのまま再現しているんですね。昔のMIDI音源なんかだと、例えボイシングを同じにしても、音程的にはジャストでキレイに響いたりするわけだから。

 もちろん、カッティング奏法なんかだと関係ないけど、じゃらーん、みたいなコード奏法だとモロに関係してくる。ギターはそもそも、#やbがついたコードは押さえるのも難しくなるし、結局響きもよくないですね。(ローコードは特に)

 こうなってくると、ギターでコードバッキングをしたいなら、曲のキーもなるべく素直なやつにした方が無難、ということになりますね。そしてコード進行も、#やbがついたコードは避けて代理コードにするとか、無理ならアルペジオやパワーコード等で逃げるとか、考えながら曲を書かないと。
(まあカポタストをつけるって手もあるか。このあたりも今の音源は当たり前に対応してます)

 キーがBbのフュージョンの隠れた名曲を調べてみたら、やはり代理コードでトニック以外のb系コードは避けてました。うーん深い!
 楽器の特性も頭に入れつつ、曲を構想してアレンジを練っていけ、コード進行も考えろということですね。その点鍵盤楽器、なかんずくシンセは最強ですな……。(これも倍音の関係でボイシングに配慮しないといけないが)

 昔は聞き分けられなかった細かいところがだんだんわかるようになってきてるな、と思う今日この頃です。作曲楽しいよ、もう底なし沼よ(w)。