月別: 2017年11月

アビーロードスタジオの秘密?

(二つ前の記事からの続き)

良かったぁ、「AR Modern Drummer」の深刻なバグなんて無かったんや!

 今回は曲書いてる人間以外チンプンカンプンだと思うけど、敢えて……説明しよう。
 あ、ARというのは、Abbey Roadの略で、もちろんこれは世界で一番有名な音楽スタジオの名前です。ビートルズやピンクフロイドなどがここで数々の名盤を作ってきました。
 ロンドンにあるこのスタジオが録音・監修して作られているサンプリングの「ドラム音源」のひとつ、それが冒頭に書いた製品。すごい時代でしょ?

 ざっくり言って、この音源はミキサーやエフェクト(EQやらサチュレータやらリバーブやらディレイやらコンプやら)、それもかなり高品質なやつを内蔵していて、更に超高品質な録りの各サンプルと相まって、まあ何種類かあるプリセットのまんまで、非常にいい感じの音で鳴ってくれるわけですよ。やっぱ世界の一流スタジオだから、そこは。
 スタジオのミキシングコンソールが画面の中にあると思ってくれ。

 で、今回はその中からSparkle KitのR’nBというプリセットを使ったんですわ(ドラムキットも2種類ある)。
 そしたらね、アレンジが完成して、ミックスの準備でパラアウトした途端、大半の音が消えてしまって、非常に焦った。(もう専門用語の解説はしない)(笑)
 ルームとオーバーヘッドあたりは大丈夫だった。

 どうしてパラアウトすると音が消えるのか? これはバグだ!と思っていたわけよ。
(パラアウト=キックドラム、スネア、ハイハット…といった具合に、個別出力してファイルに落とす行為。あ、解説しちゃった)

 ところが、色々と試していると、どうも非常に小さな音でキックやスネア他が鳴っているのがわかった。消えたわけではないがやはりバグなのか? と思い、音源のミキサーセクションをあちこちチェックしていると、マスターでコンプを通しているのがわかった。犯人これでしたわ(笑)。ここでがっつりコンプ掛けて音を大きくしていた!

 パラアウトとするとマスターバス通らなくなるから、音が小さくなってた。
 だからDAWのミキサーでドラムバス作って、似た設定でバスコンプ掛けたら、アーラ不思議、ってわけでもないが元通り。

 それはいいが、問題はなんでこんなことをアビーロードのエンジニアがしていたか、ってこと。

 他のプリセットだと、パラアウトした段階で全部はっきり大きな音で出力されるんですね。(もちろん、どのプリセットもキックならキックごとにEQやらコンプやらできっちり音が作ってある)。ところがこのR’nBだけはこの段階では非常に音が小さい。

 つまりこれは、アビーロードスタジオの現在のドラムミックスのやり方なんだろう、と気付いて鼻血が出るほど興奮したぜ!(笑)

 パラの段階ではかなり小さめの音にしておいて、バスコンプでガーンと持ち上げると、確かにドラム各パートの間でいい感じの一体感が出て、R&Bで使われるあの感じのドラムサウンドになる。

 お家でドラム音源使っているだけでアビーロードのミックスの秘密が覗けてしまう。なんという良い時代だ。
 いきなり渡英して実際のアビーロードスタジオ行っても、ミキシングなんかまず見せてくれないだろうしね。(もっとも、今はここも多角経営で、ハイテクベンチャーと組んでエンジニア養成スクールをやってるらしい。伝承していかないと、この時代だから技術が消えちゃうんだって)
 あと、グーグルアースだかで確か内部をぐるっと回れたはず。こうなると一種の観光名所か?

 さて。今回の本題はこれからです(今までのは前置き)。
 そういえばアビーロードスタジオ(英語表記だとStudiosと複数形なんですね)のサイトまだ見てなかったなあ、と思って、実は今回見てみました。
 ビートルズのアルバムジャケットで写っていたあの横断歩道が見えるライブカメラとか、非常にくだらないコンテンツもありつつも、驚いたのが。
 ネット経由でミキシングやマスタリングを受け付けているんですわ!

 えええええ!?と思った人はよく訓練された情弱クリエイターだ! ちなみに自分もだ。いやー驚いた。昔ならアビーロードスタジオでミキシングなんて、メジャーでよっぽど売れていないと絶対無理ですからね。ほんとひと握りのアーティストの特権。それが今やお金さえ払えば誰でも受け付けて貰えるとは。文明はどんどん進歩しているな。

 気になるお値段は、現在のGBPレートだと日本円でミックス1曲が45000円位。マスタリングが1.5万弱だったかな?結構お手頃じゃないだろうか。
 ただ心配なのが、さすがにネット経由だから本物のエンジニアがやってくれるか確認できないこと。もしかしたら学生バイト君がテキトーにやっつけてるんではという疑惑が。一応、エンジニアの顔写真とプロフィールが出てきて、誰に頼むか指定できる体裁にはなってるんですが。

 で、ググってみたら、なんと数年前にここでマスタリングをした方のブログ記事が見つかった(そんな前からやっていたらしい)。スタジオ関係者の方らしいのでかなり信頼度は高そうですが、やはりバイト疑惑を持ちつつもエイヤ!っと依頼したら、ちゃんと曲ごとにマスタリングの方法論を変えてきてて、どうやら本職エンジニアが仕事してくれているらしいとのこと。
 いやー、これはいいんじゃないか?…と普通思うじゃないですか。
 あっしも一瞬思ったよ。
 ところがですね。

 ミキシング依頼ページの「ミキシング前」「ミキシング後」の音源があったので、試聴してみたんですよ。確かに、音は整理されてそりゃ良くなってる。EQやコンプでトリートして上質の音源に仕上がってますよ。
 しかし……それほど驚くような「変化」でもないかも、と。正直、これ位なら今の日本のスタジオでもクオリティは変わらないし、なんならもっと良くできるところは結構あるんじゃないか?と思ってしまった。
(まさか、そんな訳あるか!という人は実際のサイトへ行って試聴してみて下さい)

 ここで思い出したのが、90年代にインターネットが一般化した時に海外のネットニュースなんかで聞きかじった話。意外と海外には日本製CDのファンが多くて、それは品質がとても良いから。アメリカだけでなくヨーロッパからも、日本のアーティストはCDの音が良いから羨ましい、などど聞こえてきた。
 今にしても思えば、これはCD盤そのもののプロダクト品質だけでなく、録音やミキシング含めた(マスタリングも)クオリティが高かったからかもしれません。
 こういう話は音楽メディアでも見かけたしなあ。

 僕らが意識してないだけで、30年も前から録音・ミックスなどのスタジオワークは、日本も世界レベルになっていたんじゃないかと。もう今となっては機材も方法論も海外と国内で差はないだろうし。
 アビーロードのブランド信仰みたいなのが崩れてちょっとガッカリ(?)な話ではありますが。

 いや、でも、ネット経由のストリーミング再生だから、実際は帯域がかなり絞ってあるはずで、実はWAVで聞いたら凄かったりとか……やっぱりバイト君がやってたりとか?(笑)。ミックスは音源のブラッシュアップだけでなく、どういう方向でやるか、ってのもエンジニアが考えることだから、そこはアビーロードは優れていたりするんだろうか。
 情弱を騙す名前としては、ブランド力は最高ですが(怒られるわ)。
 だって人に「この曲、アビーロードでミックスしたんです」と言ったらどうなるか、考えてみたらわかるよね。主に団塊の世代の人は間違いなく飛び上がる(笑)。

 あ、なんだかんだ言ってもやっぱり音源やプラグインは最高にイイっすよ。(元々オリジナルハードの開発は、ここの伝統でもある。コンソールや有名なダブリングマシン等)。
 アビーロードスタジオ、意外とユーザフレンドリーなんだね、って話でした。

とうとう完成!世界よ、これが2017年版ブランニューAORだ

記事タイトルは威勢いいけど、いざとなるとなかなか気後れするもんですね(笑)。
いかんよね、デモ曲なんだからもっとこうバーン!といかないと。
とりあえず無事公開です。

タイトル / unbreathin’ blue
作詞・作曲・アレンジ・MIX&マスタリング / Gen-oh Akiyoshi
ボーカル / 飯岡あこ

unbreathin’ blue feat.Ako Iioka

 下のプレイヤー(ブログに直接アップ)の方が音が良いです。
 色々やってみたが、Soundcloudは無料ユーザにはかなり音質を絞ってきてるようだ。mp3で128/320とwavでチェックしてみたが、どれもかなり劣悪。全部128にエンコードしてるじゃ?という話があったが、下手をすると96位じゃないか。昔アップした奴の方が音がいいんで、経営難で方針変更したかも。

 それはともかく、どうですか!このボーカルさんの歌唱。不思議な仕上がりです。少年っぽい、と言ったら女性に失礼だけど、少し中性っぽい爽やかさがありますね。それでいて女性的な情感もたっぷり。相反する要素が矛盾なく同居してて、アップしてらっしゃるサンプル曲もこんな感じの歌唱だったので、一発で気に入ってお願いしました。こうなるんじゃないか?と思っていた以上の結果です。

 今回は仮歌ではなく本歌なので、かなり綿密に打ち合わせしつつ、じっくり取り組んで頂きました。楽曲の意図を考えつつちゃんと練習して下さる方だったので、待った甲斐はありました。この場を借りて深く感謝します。

 あとミキシングとマスタリングは難航したな、やはり本歌だから。どんどん欲が出て「こうしたらもっと良くなる」ってのがたくさん出てきて。経験した方はわかると思うけど、こうなるとマスターまで終わっているのにまたミックスに戻って……のが延々(笑)。まさにドツボです。

 かなり後まで悩んだのは、どうも音にクリアネスが欠けてたこと。余分な帯域は削ってるしなんでだろう?と、色々なヘッドフォンやスピーカーやPCで聞くうち、ふとダイソーの100円ヘッドフォンで聞いてみたら、なんと。エレピの中域が異常に膨らんでいて、これだ!と。意外とバカになりません、ダイソーヘッッドフォン。本格モニター用や音楽用は全帯域が聞こえる故に、聞こえすぎる欠点もある。バランスが悪いとダイソーの奴は一発でおかしなところが目立つので。これはミックスのチェックにオススメ。
(当たり前だけど、上手いメジャー曲のミックスはこういうのでもバランスが全く崩れません)

 で、ミックスに戻って調べたらエレピとボーカルの帯域がかなり被っていて、エレピはそれを見越してミドルを下げてたんだけど、それでも足りなかった。で、それ以上削るとエレピも痩せた変な音になってしまうので、今回はコンプのサイドチェインで逃げました。
 こいつの原理は、ボーカルの音量に合わせてエレピ側のコンプレッサーを深くかけて圧縮を大きくします、とすると当然音が小さくなるので、帯域の被りを軽減できるわけ。これがダイナミックに変化するので、リスナーには自然に聞こえます。
 プロの本格ミキシングだとこういう細かい作業を限りなくやってる。

 こういう苦労話はまた今度。なんか今後の展望も開けてきた感じだな。やはりデモ曲、作っていかないと絶対駄目だと思った。