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MIDIのI/O複線化

 弊社制作環境の話なので、どこまで他の方の参考になるかわかりませんが、一応記録も兼ねて書いてみます。

 これまでは、USB-MIDIがブルースクリーンを出すこともあったので、それらは全部外して、Babyface ProFSのDIN-MIDIで全てのハード音源をドライブしてました。
 ただこれだと、MIDIチャンネルが被ったりしてさすがに不便なので、恐る恐るUSB-MIDIを復活させてみた。
 一番問題なさそうだった、Roland TR-8をUSB MIDIでドライブすることにして、ここからDINのMIDI OUTで繋いで、Mother-32とモジュラーシンセSytem100をディジーチェーンで繋ぐ。

 そしてBabyfaceのMIDIは、Roland FA-06専用とした。

 これで数日様子を見ているが、以前のようにブルースクリーンが出ることもない。PCに繋いでるUSB機器を減らしたのが功を奏したかもしれない。

 また意外な嬉しい副作用として、アナログシンセ類のMIDI制御で反応が明らかに良くなった。遅延が結構出ていたんですね、DIN MIDIはレガシーでシリアル通信だから。

 ただ、少しまだTR-8からのMIDI OUTで、信号が出ないことがある。仕様なのか相性なのかわからない。このあたりは運用で逃げるしかない。

 弊社程度の規模のハード音源の数でも、制作に組み込もうとすると苦労しているんだから、昔のハード全盛の頃は、随分トラブルも多かったのでしょうね。

 仕様上繋がる、って話と、実際に繋がってトラブルがない、って話は全然別だもんね。

 ハード音源の音は、やっぱりソフト音源とは質感が全然違う。具体的には録り音に迫力と存在感がある。それで最近はかなりシンセパートはハードで賄うようにしています。

オーケストラ音源の定位話

 これまでフルオケ曲はUVIのOrchestra Suiteで書いてました。
 今回新たに、NI Kompleteバンドルに入っているシンフォニーシリーズ音源で書いてみたんだけど、定位の調整で大ハマリ。
(UVIの時も苦労したなあと思い出しつつ…)

 不案内な方のために説明すると、オーケストラって楽器ごとに舞台上の位置が決まっているわけですね。これを再現するために、サンプリング音源でもちゃんと位置(定位)を本物と合わせないといけないわけです(ガン無視でも良いが、リアリティが落ちる)。

 更に、左右の位置(+幅)だけでなく、奥行きのほうも、リバーブ量の増減で調整しないといけない。音が大きい金管楽器(トランペット等)や打楽器(ティンパニ等)はステージの奥の方にあるから、リバーブ量は大きめになります。逆に弦楽器は最前列だから少なめ。
 これらの仕掛けでオーケストラのスケール感を演出する。作曲というよりミックスの話ですね。

 これらのパラメータを、楽器グループごとに、オーケストラの楽器配置図と見比べながら、実際に聞いて不自然にならないよう調整していくわけです。

 ここで事態をややこしくするのが、実はオーケストラの楽器配置は、完全に固定されたものではない、ということ。現代では音響的に良いということで、弦楽器はバイオリン1・2、ビオラ、チェロ、コントラバスと左から右に並べられることが多いですが、これとて変わることがある。金菅・木管・打楽器に至っては、色々な配置があるようです。(一応代表的なものはあるが…)
 更にややこしいのが編入楽器(ゲスト参加の楽器)。サキソフォン、ユーフォニアム、ピアノetc。これらも位置は決まっていない。

 今回は、結局ヤマハのWebサイトで見つけた、オーケストラ配置図のPDFを参考にした。ググると色々な配置の図が他でも見つかります。全部微妙に違っている。(実際、オケごとに違ったり、下手をするとステージの広さの都合で会場ごとに変わることもあるらしい)

 実家にあったクラシックのレコードの写真を見ても、やっぱりオケごとに細かいところは違ってます。

 そんなこんなで最初に決めた音源の配置は、CDに焼いて楽曲をステレオコンポで再生してみると、センターがスカスカの状態で失敗。アナライザーとステレオイメージャーの画面に頼りすぎたのが敗因。
 こんな場合はちゃんとミックス時モニタースピーカーで鳴らすのと、ヘッドフォンならスピーカー音場を再現できるプラグイン、Waves Nxが良い。
 で、何回か微調整を続けて、ようやく自然な定位になりました。

 とりあえず、一度決めてしまえば、あとはテンプレートにして使い回せば良いのでそこは楽。ただ常用音源を変える度にこの作業が発生するのは気が重い(w)。

 以下おまけですが。
 今回、定位決めの参考に何枚かクラシックのCDを聞いていて気付いた衝撃の事実。同じ組曲の中でも、例えば第一曲と第二曲で楽器の定位が変わっている場合がある。ティンパニが左から中央に移ってたりとか。
 びっくりですね。音響的なことを考えて、たぶんレコーディングの合間に移動させたりするんでしょう。指揮者の方は大変だ。ティンパニが左にいると思って指揮棒振ったら他の楽器だったりしてね(w)。きっと演奏会でも目立たないだけで、こういうミスは起きてるんだろうなあ。

声:音読さん

シンセモジュール自作の顛末

 今回は頓挫した自作計画の話。

 モジュラーに限らず、シンセで一番重要な部分はたぶんVCO(発信器)でしょうが、アナログシンセのVCOはそんなに様々な波形が用意されているわけじゃないんですね。これがソフトシンセなら100種類ってことも珍しくないが、アナログだと3~5種類くらいが多い。(変調は掛けられるが) アナログ回路で作れる波形は限られているんですね。
 そこでバリエーションを出すために、この出力波形をモデファイしてみようと、モジュラー用の(一種の)エフェクターを構想したことがあった。
 まずは何より歪みだろうと、しかも一番簡単なダイオードクリッパーと呼ばれる回路を作ろうと、色々実験。そして実際にダイオードクリッパーをブレッドボード(仮組み用の基板)で作ってみた。

 実は発光ダイオードを使ったんですが これも普通にダイオードとして作動するんですね。(ギター用のエフェクターで歪素子に使われることもあるらしい)。
 ものすごく簡単な回路ですが、ギター用だと前段にプリアンプ(OPアンプ)が必要になります(あと後段もそうだったと思う)。ただモジュラーは10Vppの世界で動いているので、順電圧が2Vくらいの発光ダイオードなら、そのままで動いてしまう。以前の秋月電子”Neyoトランス”に続いてこいつもパッシブです。面白いでしょ?

 この回路にVCOから三角波を入れたり、のこぎり波、なんてやっていくと。
 動作すると光るんです、発光ダイオードだから。なかなか笑えますね。

 発光ダイオードは色によって順電圧が違うそうで、当然クリップ波形にも違いが出て、音に影響します。

 …とまあ、このあたりも追加実験していく予定だったが(最初は赤色でやった)、ここで計画は見事に頓挫。
 海外の自作サイトに書いてあった、「自作モジュールはメーカー製モジュールと一緒に使うな。壊したら大損害だぞ」という親切な警告にビビりまくったからです(w)。

 そうなんだよ、イモハンダに空中配線のショートとか、ありがちなことをやりかけたのでね。モジュールパネルも作ったし、超簡単な割りには音として面白かったが、まあやっぱり餅は餅屋かなと思いました。
 毎日の楽曲制作に使える堅牢さがあるかというと、なかなか自作ではそこまではできません。

モジュラーシンセ悲報

 この秋一番のショック。モジュラーシンセのモジュールがまた壊れた…。しかも今回は、壊れる瞬間を目撃してしまった。
 安定化のためしばらく電源入れたままにしていたんですね。そろそろパッチングするかとケーブル差しかけた刹那、突然全モジュールのLEDが瞬いて、その半分が消えてしまったのです。ギョッとしましたね。
 電源ユニットのLEDを見たら、「+5V」だけが消えていたので、ヤバイなんか故障だ!と気付き、すぐさま電源スイッチを切りました。
 冷や汗ものですわ、もしかしたらこの様子からして全モジュールが逝った可能性すらある……。

 とりあえず、電源モジュールと、特に怪しい挙動をしたモジュールを取り外し、原因の切り詰め。電源は単独では「+5V」が点灯したものの、再びラックに収めると、やはり短時間で消えてしまう。この時点でこいつは使用不能。
 怪しい挙動のやつは、最初に全LED点灯させたのを目撃、その後電源を巻き込んだ可能性があるので、後日別環境でチェック予定。

 なんと、電源もそいつも中古だったんです。……うーん、安かったが、どうもモジュラーの中古はほぼ地雷と思った方が良いみたい。これまで壊れたモジュールは全て中古。基本「製品」というより「部品」だからなあ。どんな使われ方をしたかわからんし。ウチのようなハードな使用には耐えられないのかも。

 とりあえず、電源はベリンガーのやつを新調しました。なんのかんの言ってベリは信頼性高い。
 ドキドキしながらラックに組み込んで電源オンすると、幸い他のモジュールは全部無事。いや~、こってり疲れた。

 一応、夏に気付いていたこと。モジュラーシンセは作動中に結構熱を出すようで、ラックの隙間からなかなかの熱気が上がってきて、こりゃヤバイかも!?と思ってた。今は抜けたモジュールの隙間が開いているので放熱は良くなった(w)。
 熱が故障を誘発した可能性もあるので、モジュラーをお持ちの方は、ラックにみっちり組み込むのは避けた方がいいかも。
 いっそパソコンみたいにファンを付けるかと思ったが、ノイズ発生源になっちゃうから、モジュラーには無理でしょう。

 金喰い虫だが仕方ないなぁ~、こいつにしか出せない音がある。

フルオケ曲メモ

 最近オーケストラ曲を書いていて気付いたこと雑感。今度は純粋なインストの話。
 これは理論書にも書いてありますが、アレンジのときコードトーンを重ねるならルートか第5音でないと、ハーモニーが安定しなくて変な感じになりますね(一応は)。逆にバンド曲やPOPS全般だと、根音はベースだけでもカッコイイ場合が多い(ルートを増やすとハーモニーが濁る)。
 オーケストラの場合、音源といえども一音一音のオクタン価は非常に高いから(バイオリンセクションなら30名)、そのあたりが音響的に関係してくるのかも。
(逆に、それを利用して不安定な感じを出すアレンジも作れるはず…)
 大人数の合奏でコードの響きを安定させるには、やはり根音が大切で、一種のハイ・ペダルポイントみたいな扱いで、増やした方が良いのかも(仮説)。

 またそれに関連してボイシングですが、テトラド(4和音)の場合で、オクターブ離してもどうしても当たってM7が使えない場合がある。これは不思議だが、同じメカニズムが関係しているのかも。
 こういう時の対策は、他の楽器でM7の音を出したり……ですね。逆にトライアド(3和音)はほとんどの場合、非常に美しく響きます。大昔に読んだクラシック系の理論書(入門書)で、M7が不協和音扱いになっていた記憶があるが、そのせいか。いや、記憶違いかも?(w)
 テンションは、実は今のところあんまり扱いに困ることはないなあ。そもそもそんなに重ねませんね。

 あと、意外と、ユニゾンやらTuttiが力強くてカッコイイ。ストレートな破壊力がある。複雑な演奏機構で単純なスタイルを取るのが美しいのかもしれません。

 Kompleteのシンフォニーシリーズ音源ですが、使ってみたら意外とアーティキュレーションが少なかった。劇伴に的を絞った感じかそれにしてもバイオリンアンサンブルで8種って、ちょっとどうなのか(w)。音も、まあ劇伴ですねこれは。
 シリーズにハープが入ってないのがショックっていうか、こりゃ酷いクレームレベル(笑)。劇伴で使いますからね。一応他に音源持ってるけどさあ…。

 時々無性にオーケストラ曲も書きたくなるので、今後とも合間合間に書いていきます。

追記:ジャズの理論本でも、少し前のやつだとM7の音が準テンション扱いになっているものもある。現代的なハーモニー感進化のなかで、扱いが変わってきたんですね。

7月の雑記

 実家の玄関明かり窓に、ヤモリ3匹目を発見。いや3匹て、大人気だな。2匹いたやつも、数日見ないうちになんだか一回り大きくなっている。商売繁盛といったところか(w)。そういえば今年は少し虫が少ない気がする。3匹目はまだ少し小さいのでこれが一番新入りか。動きも素早く、もう明かり窓が縄張り的に一杯なのか、玄関の曇りガラスに張り付いていた。知らずに開けたら慌てて逃げていきました。こいつらはこいつらで生存競争大変だ。たまに雨の夜にいないことがあると却って心配。

 マイナカードが大変な騒ぎになっていますね。自分は一昨年くらいに取得しました、それはe-taxで確定申告がオンラインで行えるから。この場合はカードリーダーにマイナカードを入れて本人確認手段にします。カードリーダー昔は高かったが、今は1000円くらい。この程度でも結構便利だから良いのに、保険証や免許証を統合するというのはやり過ぎでしょう。当初の予定にはない機能追加だから、ただでさえ複雑なシステムが破綻する訳です。政治家や役人で全体像を理解している人がいない。全部思いつき。凄い国だなあ、これで先進国を自称してるんだから。デジタル化で事務処理を複雑化し、更に利権を得たいという魂胆かも。これでインボイスが始まったら医療現場は地獄です。

 Native Instruments/Kompleteに入っているオーケストラ音源を久々に触っていたら、こいつのストリングスって自動でdivisiしてくれるんですね、びっくりした。和音をMIDIで送ると、自動で各パートに人数が分割されて割り当てられる。バイオリンセクションは30人ですが、そこへ3和音を送ると16+8+6みたいに割り振ってくれる。これはリアルです。実際は、劇伴やPOPSのフルオケ曲ならあんまりdivisiを使うことはないかもしれませんが。ビオラ、チェロ、コントラバスも同様。かなり音を作りこんであるので、クラシック向けではないと思うけど、ゴージャスな感じのオケがハマる曲なら使えそう。ただいまDAWで利用準備中。もしかしたらPOPSのストリングスでも使えるかもと期待。こいつはsoundironが担当したようですね。

ハードは壊れる運命

 いきなりユーロラックのシンセモジュールが一台故障。米国ガレージメーカー、Synthrotek/MSTのMIDI-CV変換モジュールでした。ウチの制作体制だと必須のモジュールで、ベロシティなんかも変換できて便利だったんだが……。わずか3ヶ月ほどの命でした。といっても中古だが、やはり安さの反面こういうリスクもある。どういう使われた方をしたかもわからんもんね。専用拡張モジュールまで用意していたんで結構キツイ。
 ただ、我ながら勘が働くというか、なんだかイヤな予感がしてたんで、先代のベンリガーMIDI-CVを処分せず持っており、こいつに差し替えてコト無きを得た。さすがはベリンガー……と褒めたいところだけど。

 今度はベリのベースシンセTD-3のスイッチの反応がいきなり鈍くなった。このお約束の展開どうですか(w)。鍵盤のスイッチのところで、ウチは音源として使っているんで、ほとんど押していない、音色確認のとき以外は。もし本来の利用法みたくガジェットとして使い倒していたら、半年持たなかったかもしれん、確かにスイッチはかなりチャチい。本体でガチガチ打ち込むのが、本来の使い方だもんね。
 もっとも、それを見越してか、USBでパソコンから本体内蔵シーケンスを編集できる。やっぱり今はガジェット派の人もそっちが主流かな。
 ベース音源としてはなかなかしっかりしていて、以前は文句書いたけど、結構気に入っています。外部のモジュラーとも連携できて、フィルターを外部から制御できますからね。

 TD-3はスイッチだから自分で交換できる可能性があるが、MIDI-CVは完全に電子部品がイカれている。修理しても今後うまく作動し続けるか不明。最悪異常な電流電圧出して他の高価なモジュールを道連れにされたら、目も当てられない。嗚呼引退決定。

 まあ経年変化や故障っていうのは、楽器である証拠でもあると思います。こんなの例えばギターなら当たり前ですからね。ソフトシンセばかり使いすぎて、ちょっと基本的なところを忘れていたかもしれない。

モジュラー全景/2023春

 成長を続ける弊社のモジュラーシンセシステム、現在の姿はこんな感じ。

 丸で囲ったところが増えたモジュール。上から4基搭載ADSR、左下がベロシティも出せるMIDI-CV、右下がCVミサキー&ポルタメント。
 その右がバッファードマルチプル、CV信号を分割するが、ちゃんとボルテージフォロワが付いていて電圧が下がらない。こいつだけ実はアメリカ製のキットなんですよ。製作時間のべ2時間くらい。今はキットの製作手順もメーカーのWebに載っているんですね、便利になったもんです。

 これまで使っていたケースに入らなくなったので、大きなケースに載せ替えたら、またスペースが出来てしまい、たちまちモジュールが増えた次第。困った困った、饅頭こわい。

 ところでこのモジュラーケース、見ての通り木製ですが、実は自作ではなく出来合いのものです。しかも驚くほどモジュラーシンセ(ユーロラック)にぴったり。というか、元々同じEIA規格の寸法で作られているんですね。ネジ穴レールを付けるとたぶんサイズが合わなくなるので、もう直接木に穴を空けて、タッピングネジで留めています。これで問題ナッシング。(そもそもレール4本で1万円近くする)
 ホームセンターで見つけたんだけど、たぶん同じようなものが全国どこでも見つかると思います。試しに捜してみてください。こいつの値段は、中央の仕切りバーを入れても全部で1000円以下。またまた業界大激震だな(w)、モジュラーケースは3万5万が当たり前だから。数が出ないから仕方がないが、ちょっとボリすぎだよね(大抵電源付きですが)。まあ弊社は外に持ち出す予定はないからこれで済んでます。

(この木箱、いわゆる6Uのサイズです。ユーロラックモジュラーは3Uサイズ。3Uサイズの木箱も売っている)

 以下、バッファードマルチプルの完成直前の写真。

 最近はこんな感じでシンセ道を追求しているわけです。

モジュラーシンセ話

 モジュラーシンセを取り入れて音楽制作していますが、音は存在感満点で、従来のデジタル/ソフトシンセとはかなり雰囲気が変わりますね。もちろん使う方も意識して使っているからブラシーボ効果もあるんでしょうが、いまの時代、モジュラーにはやっぱり“マジック”があると思う。

 原始的ともいえる構造でパッチングしないと音が出ない、しかもモノフォニック(単音)という、シンセの原点にあった楽器は、ご承知のようにその後の歴史の中で埋もれ、打ち捨てられていったわけです。ポリフォニック化、音色メモリの導入などで、どんどん便利になり「キーボード」化するシンセ。その後完全デジタル化され、ますます利便性は高まっていく。
 そのうち、パソコンの高性能化でハードさえ捨ててソフトシンセが隆盛を極める。ただ、その発展の中で、こう言ってはなんだけど「楽器性」みたいなものはどんどん希薄になり、(悪い意味で)「道具」になり下がっていたんじゃないか。

 ソフトシンセはそりゃ便利だよ、プリセットも使い切れないほどあるし、どんな音色パッチも記録しておけるし、処理容量の許す限り何本でも立ち上げられる。でも、つい出来のいいプリセットばかり使ってしまい、世界中でシンセの音色・質感が均一化してしまったんじゃないか。本来音作りの幅はソフトシンセの方が広いはずなのに、モジュラーの音が今は個性的に感じられる(自分で作るしかないんだし)。
 シンセの原点、原始時代のシンセが、最も濃厚に楽器性を持っていた、というか楽器そのものだった、というのは面白いところだと思います。
(シンセ発展史の中で、一度moogなんて潰れていますからね。他にもアナログシンセを作っていたメーカーが姿を消している、また復活したりしてるが)

 一周、どころか2周3周して、またモジュラー(アナログシンセ)が面白い時代が到来していると思います。
 まあ色々書いたが実用(制作)に使うには、やはり難しい面もあるから、誰にでも勧められるわけじゃないが。

カセットロン(仮称)構想

 最近、またハンダゴテを握ったりしているんですが、まだ電子工作はリハビリ段階。
 で、部品やらキットやら、ネットのウィンドウショッピングが楽しくて、道具類の進化に驚いたり、こんな高機能モジュールがこんな値段で……なんて止まらなくなる。

 そんな流れで、前々から構想していた、ある楽器の構築計画が実現できないか調査してた。その名もカセットロン……メロトロンのカセットテープ版、といえば分かって貰えるかと。
 メロトロンという楽器が’60年代・’70年代に、欧米のバンドを中心に非常によく使われていたんですね。ビートルズも使ってたし、富田勲先生も多用してた。いわばアナログサンプラーで、見た目はオルガンだがなんと鍵盤の数だけテープ再生装置を内蔵して、鍵盤を押すと最長9秒間その音(音程)を再生する。かなりクレージーな代物です。
 これをカセットで代用できないかという話。

 実は2500円程度で、再生専用のカセットプレイヤーがアマゾンで売られています。少なくとも2オクターブは欲しいので、そうなると25台(2oct+1)、62500円。鍵盤はMIDIキーボードで代用し、MIDI信号はArduinoかラズパイ(マイコン基板)で受けて、カセットを駆動する。

 第一案では、ソレノイドを制御して、カセットのプレイスイッチやストップスイッチを押す形態。ソレノイド500円として、500x2x25=25000円。更に調べると、ソレノイド駆動回路も要るらしい。大掛かりになり過ぎだし、メカ工作的な難易度も高い。(巻き戻しも問題)

 第二案は、カセットを回しっぱなしにして、MIDI信号が来たらその鍵盤の音を流すようにする。これだと電子回路だけで済む。ただピアノのようなアタックのある音はダメで、ストリングスやコーラスのような持続音のみってことになる。これならいけそう。

 ただ、よくよく考えてみれば、2オクターブ分の楽音テープを用意するのは大変だし、当然ピッチもカセットでは狂うから、ここまで費用を掛けて稼動したらガラクタだった、という可能性も非常に高い(w)。
 で、今のところ構想だけにしているんですが。誰かお暇な方やってみませんか。Youtubeでちょっと調べたが、流石にここまでバカげた(いい意味で)ことは試みられていないようだ。ただ発想は単純だから、きっと世界のどこかで作った人がいるんじゃないかと思っている。

 実は、テープのローファイ感が欲しいだけなら、もっと単純な方法はある。それはトラックを一旦テープに落としてそれをまたDAWに読み込むってことだけど、これを応用してKontaktに食わせれば、それでサンプリング音源になってしまう。音程ごとに本当に書き出し・読み込みすれば、かなりリアルな「カセットロン」になるでしょう。実用上は、こっちが妥当かと思う。
(音源にも、よくテープストリングスって名前の音色があるが、あれは正にこういう形態を模したものでしょう)

追記 サンプリング音源で良ければ、メロトロンのは結構ありますね。