月: 2022年1月

「PSP audioware」割とバグ多い?

 バンドサウンドにフルオケが絡んでくるような野心的アレンジの曲を書いたが(ちょくちょく書いてる)、今回はアレンジ作業よりミックス・マスタリングが滅法難しかった。
 というのは、音場設計を普通とは違う感じにしたからで、スタジオで録ったバンド演奏に、あとから小ホールでオーケストラを重ねた、という体なんですね。
 これだと音場がスタジオ(バンド)とホール(フルオケ)で2種類になるわけで、2mixを作るまでは良かったが、これがマスタリングになると色々な意味でバランスを取るのが激ムズで、3日掛かってしまった。
 いつものやり方(企業秘密)だと、ビンデージ過ぎてフルオケの音がくすんでしまってダメでした。で、そこからトライ&エラーが始まって、最終的には解決したのですが、その作業中に発見した意外な事実。

 「PSP audioware」社のプラグインは結構バグが放置されてる……。しかも致命的なやつ。DAW巻き込んで落ちるから。
 Vintage Warmerなどでお馴染みの、高品質なアナログ系プラグインデベロッパーですが、そういえばワンポイント的に使っている人は多くても、あまりガッツリ使いまくっている人の話は聞かない。そんな理由かも。
 具体例書きますが、MasterCompでOUTPUTノブのところで直接キーボードで数値入力しようとすると、高確率で落ちますね。
 BussPressorも同じでノブの数値入力で、DAW巻き込んで落ちる。
 ま、今回はフルオケ+バンドでかなり重いプロジェクトだったので、その影響があったかもしれませんが……。(当然、ミキシングではWAV化してますよ)

 なかなか好きな系統のプラグインが多いデベロッパーだったので、ちょっと残念。Softubeはそんなことないもんなぁ。
(こういうところが、WAVESなんかはやっぱりしっかりしてる。実用には安定性は重要。そういえば最近ちょくちょくPSPはアップデートしてるが…)

CD-BOX「Yumi Arai 1972-1976」聴いた

 初期ユーミン(「荒井由美」時代)のアルバム作品を集めたCD-BOXを聞いたんだけど、音楽制作をやっている人間として非常に収穫がありました。
(「Yumi Arai 1972-1976」)

 デビュー作は、「ひこうき雲」が入っているものの、さすがにまだ少し色々と未整理でした。ミックスもあまり良くなかった印象。最初ユーミンさんはアレンジもやってたらしいですね。もう松任谷正隆さんや細野晴臣さんを始めキャラメル・ママがバックに入ってますが。
 それが2枚目から、いきなりアレンジもミックスも超A級になってしまうんですね。ユーミンさんのボーカルも素晴らしい。もう楽曲から風格さえ漂うようなクオリティ。以前も書いたけど、まぶゆいような才能の輝き。かなりメンバー間で時間を掛けて作戦を練ったんじゃないでしょうか。初期ユーミンが文学的と言われる理由もわかった。ちょっとクラシカルなアレンジがあったり、売れ線は全然狙ってない。これ今聞いて喜ぶのは音楽マニアだけだと思うけど(汗)、当時これがちゃんと受け入れられて売れたのは、若いリスナーの耳も良かったんだなあ、と。
 3枚目も同じ路線、更にクオリティに磨きが掛かった印象。キャラメルママ(ティン・パン・アレー)とユーミンさんのコラボが更に深化・進化したってことでしょう。「卒業写真」が入ってるけど、今聞くと非常にジャズっぽい。これちゃんと売れたのか、なんだか凄いよ。本当にリスナーがレベル高かった。
 4枚目、文学的なところから売れ線への移行期ともいえる。「中央フリーウェイ」入ってます。これ76年なんだからほんとため息が出る。完全にシティポップですからね。改めて凄いセンスだなあ……。これだけ音楽的にハイレベルなことをやって、ちゃんとリスナーがわかって売れてしまうんだから。音楽状況は非常に良かったんだと、しつこいけど。

 アレンジとかプロデュースという面でも、自分なんかにはもう宝の山でした。
 これは皆聞いておいたほうがいいと思う。

戦メリ楽譜公式・自分専用

 坂本龍一さんの名曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」(映画『戦場のメリークリスマス』テーマ曲)ですが、1983年に発表されてから、なんと今まで公式の楽譜がなかったそうですね。そのため独自にアレンジされたもの、あるいは誤っているものが多数流通する結果になったんだとか。(楽譜の出版にもJASRACでの手続きがいるのですが、それでもこんな具合…)

 そこでこの度、坂本龍一さんご自身が監修された公式楽譜(ピアノソロ用)が発売されたのですが、このリリース方法が素晴らしくて、PDFによる電子出版なのですが、なんと楽譜に購入者のメアドが入るんですよ。不正コピー防止のためと、「世界でひとつ=自分だけのもの」というレア感が両立するという、コクレターズアイテム。そこで先日購入して眺めてニマニマしているところです。
 普通のPDFだから変な電子書籍にありがちなDRMもないし、自己使用ならコピーしても問題ない。これ良いと思いませんか?
 今後、楽譜の出版はこんな風になっていくんじゃないか、と思った次第です。
(なおオンデマンドのプリント版もある)

坂本龍一オフィシャルスコアストア – Ryuichi Sakamoto Official score store
https://score-jp.sitesakamoto.com/

 なんか、公式サイト開設と前後して、戦メリの一音一音がNFTでも販売されたらしい。瞬殺で売り切れだったそう。

(余談。世の中に出ている楽譜は、ほぼアルバイトが作ったような滅茶苦茶なものが多いから……。某有名シンガーソングライターの著名曲をヤマハの「ぷりんと楽譜」で買ったことがあるが、メロの音程どころかリズムさえ違うという、恐るべき詐欺物件だった……。こうしてみると公式というのは大きいですね)

ロゴ作成苦労話

 Dew Ridge Recordsのサイトやページを作ったり、楽曲のジャケット画像を作ったりで、だんだんロゴを作らないといけない機会が増えてきました。
 今は昔と違って、商用利用可能なフリーフォントがたくさん配布されているんですね。フリーフォントだけを集めたサイトすら複数あるくらい。
 で、そういう場所から使えそうなフォントをダウンロードして、いざロゴやロゴ入り画像を作ってみると、これがなかなかしっくりこない。というか、(これまたフリーの)グラフィックソフトGIMPを使っているんですが、こいつはフィルタや特殊効果は結構強いんだけど、文字入れをしようとすると、滅法使いにくい。……というよりバグか?日本語フォントが指定できないんだが。

 で、Windowsの3Dペイントなんかを併用しつつ、騙し騙しやっていたのですが、これではいかんとロゴ作成専用ソフトを探してみたら、インストールアプリではピンと来るものはなかったものの、直接Web上でロゴ作成ができるサイトが複数あるんですね。Google Docなんかと同じWebアプリケーションてやつ。
 グラフィックや文字色・装飾もデザイナーが作ったテンプレが無数に用意されていて、いわば音楽プラグインのプリセットと同じ。選んで文字を入れるだけで、使えるロゴを作ってくれる。しかも背景色は透明で、非常に利用しやすかったりする。商用OKのサイトがほとんどです。
 これはいいと、こういうサイトでもっぱらロゴや文字入れを行うようになった。

(昔もそのテのサイトはあったが、もっと制限だらけだったり、利用条件が厳しかった)

 MVのサムネ用画像(ロゴ)にも使えると思うので、インディーズ業界の皆様もぜひどうぞ。ググると紹介サイトがいくつも出てきます。

(思い出した。ホームページビルダー持ってるが、こいつもテンプレはダサいし、ロゴ作成機能もショボい。今はフリーのテンプレや作成サイトの方が遥かに良質なんだから恐れ入る)

SSLのDrumStrip使ってみた

 この前のバーゲンで良さそうだったので買って、早速使ってみた。これはサードパーティ製じゃなく、SSL自身が出しているオフィシャルなプラグインなんですね。動作や音質等、本家だけに期待できるはずと踏んだ。

 で、買ってからよくよく画面を見たら、こいつはStripと言ってはいるが、汎用チャンネルストリップとは違って、サチュレーターの類というのが正解らしい。(一応、コンプも付いているが、普通のとは効き方が違う)

 ドラム用ではあるが、低音楽器にも使えるのではないかと思い、Session Horns ProのTenor Saxに使ってみたら、かなり良い効き具合。やはりサチュレーターも音源との相性がありそう。
 Softubeなどと同じ、非常に上品な効き方で、トラックにインサートした直後はしっかり掛かっている感じはしないが、ミックスダウン→マスタリングして完成トラックを聞くと、あら不思議。非常に高品位で上質なエフェクトであることがわかります。
 サチュレーターとしては汎用的にサンプリング音源に使えそうなので、なかなか頼もしい感じに働いてくれそうです。

Tomboさん(シンガーソングライター)インタビュー

 先頃リリースした音楽プロジェクトACTiVATEの新曲「1983」で、ボーカルを担当して頂いたTomboさん。今回特別にインタビューをお願いして、コンテンツを公開しました。

[Interview]
第1回 Tomboさん(シンガーソングライター)
http://dewridge-records.official.jp/interview.html

 自身の楽曲がメキシコデイリー4位に入った…そのことを知らされたのは、なんと意外な…。
 ――続きは本編でどうぞ。

スパイ映画のリアリティ

 アマプラでダニエルクレイグ主演の現007シリーズがあるので時々見ているんですが、もう殺しのライセンスを持ったスパイが他国で大暴れ、ってストーリー自体が流石に荒唐無稽で、成立しない時代になってるんですね。派手にやりすぎて英国スパイの仕業って大抵バレて、作中でも度々外交問題になっている(汗)。それでMI6の00部門は予算縮小だ廃止だのと、国内の委員会で長官が締め上げられる始末。そもそも冷戦時代と違ってイギリススパイが他国でそこまで頑張らないといけない理由もない…。Dクレイグ自体は冷酷な殺し屋っぽくてカッコイイ役者だと思うし、毎回娯楽映画として見所があるので、見て時間損した…とはならないのですが。

 言ってしまえば作中で敵方が大抵世界の情報をハッキングで牛耳るような組織だったりして、諜報戦もアナログなやつは流行らなくなっている。余計な心配だが今後このシリーズどうなるんだろう。もうMI6に居ついた悪霊=ボンドみたいなファンタジーの設定を導入するしかないんちゃうか。ボンドに取り憑かれると人格が豹変して派手に暴れ出すのね。MやQもゴーストだな、でないと予算もこんなことに使えない。(公開中の新作だとボンドは引退しているとか)

 ミッションインポシブルの方も、敵が身内だったり元同業テロリストだったりと、冷戦時代にはなかった感じになってきてるもんね。スパイアクション映画もだんだん成立しない時代になってきました。
(映画を見まくっているわけではないのであまり言えないが、そういえば日本でスパイ映画ってほぼないですね。日本ではリアリティが無さすぎるからか)

 考えたら、世界の情報を牛耳って人々を監視している「悪の組織」って、それGAFAじゃないか。今後の007はアップルやグーグルと戦うことになるのかもね。

楽曲への思い入れ

 今は自分はプロジェクトACTiVATEでオリジナル曲をリリースしているわけですが、音楽的に面白いものを、という縛りの他は、別段テーマもありません。といってもやはりAORとか70s-80sポップスっぽい曲になるかとは思いますが。
 作詞・作曲・編曲からミックス・マスタリングまで全部やって、ボーカルだけは「曲に合う」シンガーさんを毎回見つけてきて、それでお願いしているという形。
 あくまで楽曲が先で、シンガーさんはそれに合った(歌える)人を連れてくるという方式です。(実際ベタ打ちである程度完成したところで人を探し始めることが多い)

 そのせいかどうか、一曲一曲の楽曲への思い入れって、あんまり強くないんですね。常に他の曲を書いて(作って)いるんで、同時並行していることばかりだし、もちろん質的には毎回自分で作れる最高レベルのものですが、もうこの一曲に掛けている……という感じではない。
 このあたりは、もしかしたらシンガーソングライターさんとは違う意識なのかもしれません。ある意味醒めているわけだし、客観視しているというか、レーベル代表としては曲は商材……という視点もあるわけです。(音源=商品なので)

 これが良いことなのか悪いことか……という判断は別にしても、サブスク時代である程度ショートスパンでリリースし続けることが求められるようなって、それは楽曲の海に沈んでしまわないようにするためですが、こういう視点は今はシンガーソングライターさんにも求められているかもしれません。
(というか、ある程度長くやっている人は当然そうなってるんでしょうか……)
 楽曲は楽曲、と割り切ってビシバシとリリースしていく、たぶん過剰な思い入れは必要ない、そんな姿勢が求められている時代だと思っています。
(もちろんこれはヒット狙いの場合で、自分のやりたい音楽を自分のペースで作り続ける……という選択肢はある)

 何かを全否定したりdisったり……という(強い)思いでは、自分は曲は書いてません。もっと建設的な思考かな……曲は曲、なので。(まあ音楽の場合はそれだけはないのがまた複雑なのですが)
 全てとは言いませんが、AORやCITYPOPは「物語の世界」なんですね。つまり職業作詞家が作る歌詞といえばいいか、そういった意味では演歌や歌謡曲とも同じです。少なくとも自分にとってはそう。(そういう分析をする評論家の方も実際います)
 結局のところ、思い入れよりは企画や“作戦”が込められているといえるでしょう。

(上に書いたのは自分のプロジェクトの話で、ご依頼の場合はやはり違って、そちらの方が「思い入れ」主体といえるかも。無論その場合もプロデューサー的視点は必要になりますが)