カテゴリー: MIX

アコーディオンのマイキング

 アコーディオンの録音(マイキング)方法について解説した珍しいページを見つけましたのでシェア。(しばらくアコのことを書かないと禁断症状が…)

アコーディオンのマイキング、8つの方法
http://www.shureblog.jp/shure-notes/%E3%82%A2%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%80%818%E3%81%A4%E3%81%AE%E6%96%B9%E6%B3%95/

 といっても、マイク・音響機器メーカーのSHUREのブログですが、なかなか質のいい情報だったので。あっ……今オヤジギャグ思いついたけど我慢する(←察してくれ)。

 それよりつかみのジョークが凄いぞ。

「あんまり治安が良くない場所で、車の後ろの座席にアコーディオンを置いたまま、車を降りて店に入った人がいたんだって。車に戻ってきたら、窓が開けっぱなしだったことに気がついたんだ。焦って車に乗り込んで、後ろの座席をチェックしたら…アコーディオンが二つに増えてたんだって!」

 いや、ちょっと待て(笑)。欧米ではそれだけありふれた物ってことですかね? ジョン・レノンの最初の楽器もアコーディオンだったって書いてある。
 このページにもあるし、その手の本にも書いてあるけど、アコの原型は紀元前の中国で出来たものらしい。それがいきなり19世紀のヨーロッパで改良・発展して現在の形になったそう。アメリカではピアノ鍵盤のタイプが多く、欧州ではクロマチック(ボタン)が主流って書いてある。

 こういうマイクでこんな風にセッティングするとこんな音で録れるよ、って実例が並べてあるので分かりやすい。アコは右手部分と左手部分のレジスターに、リードがパネル裏表にズラッと並べてあるので、やはり一番実感に近い音で録れるのは、右・左にマイクを1本づつ立てた場合らしい。
 これだと右手(メロ)と左手(ベース&コード)がはっきり分離して録れますね、当然ながら。

 少し離れたところからアンビエンス(残響)も含めて録るってやり方も実はポピュラーで、アンサンブル感を重視する場合は、この方法が多いかも?(いわゆるオフな感じ、前述のやつはオンな音)
 国内のアコーディオン奏者の皆さんの録音を聞いていても、この「L/R分離派」と「アンビエンス派」の2通りに分かれるみたい。(大抵、特定の奏者はどちらかの方式で固定してることが多い、サウンドイメージが変わってしまいますからね)

 さすがにライブのPAだと、レコーディングとは違ってくるとは思いますが。特に、あれだね、襲いくるナマハゲを笑止千万といった表情で待ち受けるアコーディオニストの音を録る時は、クリップマイクみたいなヤツで録るしかないわな、ワイヤレスで(極端な例)。

 まあ、ぶっちゃけ自分は打ち込みなんですけどね、今度試しに録ってみるかなあ。サンプリング音源のアコーディオンでも、高品質なやつはやっぱり左右きっちり分かれてますね、打ち込みも別々入力。ベローズ(ふいご)の開け閉めはMIDIのModulation信号等で行い、音色・音量がリアルタイムで変化します。キーの打鍵音もVelocityで強弱ついたりする。
 といっても、最終的には生楽器(+名プレイヤー)には絶対勝てるわけがないので、このあたりは割り切るしかない。でも、ダメなプレイヤーの生より、今は打ち込みが勝ってしまう時代ではあります。キビシイのよ、音楽業界も。

 逆にそれだけ名プレイヤーの生演奏には、高い価値が認められているということでもあります。テクノロジーの発達で生演奏の価値が上がってるのだから、面白いですね。

ディザリングのニッチな問題話

 いやぁ、最近ちょっとは耳が良くなったかな、earだけに。
 …そろそろ誰か止めてくれ。

 音楽制作で、マスタリングまでやっていると、必然的にぶち当たるのがデジタル変換ノイズの問題。パソコンを使った制作だと、内部的には音もすべてデジタル処理される訳ですが、最後にCDに焼くためのデータ化の時、内部データと仕様が違うと、変換処理しなけばならなくなります。CDと同じデータ形式(44.1kHz/16bit)ならそのままでOKだけど、今は高音質化のため大抵48kHz/24bitで行っているので、ここでどうしてもコンバートが必要になります。ところが何も考えずに変換すると、原理上耳障りなノイズが乗ってしまい、かなりマズいわけ。これを目立たなくするために、わざと最初から極小ノイズを乗っけてカモフラージュする、これがディザリングの原理です。(というか、自分はそう理解しているぞ)

 少し前、CDリリース用のデータを準備する機会があったんですね。それで、マスタリング後のデータ48/24を、44.1/16に書き出したわけです。ここで当然、ディザリングの出番です。Sonnoxのリミッターに16bitディザーが入っているので、これを最終段に通してディザーONにしたんです。
 ところがね……どうもこれが調子良くない。書き出したファイルを確認すると、なんだか全体的に透明度が失われていて、それこそディザーで汚しました感がしっかり出ちゃってる。
 ディザーをオフにしてもまだおかしいので、一度リミッターを外して、そのままで書き出してみた。そうしたら、非常にすっきりと透明度の出た、きれいな音だったわけ。おかしいなあ?ディザリングしてないハズのに、なんでこんなにいい感じに変換できるのか。ミックスの加減でこういうこともあるのかな、などと思っていた。

 しかし、流石にこのまま納品してしまうのも怖い、ディザリングは常識だし……と思い、もしや?とDAWのマニュアルを隅々までチェックしたが、それ系の設定項目はなし。我らが(株)インターネットが誇る最先端DAW「ABILITY PRO2.5」が自動でディザリングなんて気の利くことする訳ないし……と悩んだ末、とうとうサポートに質問投げてみた。

 翌日来た回答は……なんだったと思いますか? なんと、書き出しデータ形式を変えると、自動でディザリング処理してたんですよ! おい、それならそうと早く言え!(笑) あやうく二重に掛けて納品するところだったじゃないか。道理でSonnoxリミッターでノイズが乗ったような音になるわけだわ。これインタネWebの機能比較表には確かに載ってるが、マニュアルには一切記述がない。大丈夫かなあ、自分のほかにもプロで愛用者いると思うが、知らずに二重ディザーやっちまってる人がいたりしないか。ユーザー少ないから大丈夫?そうですか。

 いやもう、自分の耳は信用した方が良い、最後に頼れるのは自分の耳って話ですわ。
 これもデモ曲用に結構マスタリングをやってきたから、耳が出来てきてた、っていう流れなんだと思う、明らかに。

 まあ、ディザリングを切れない(=任意のディザーソフトを使えない)のは問題だけど、48/24のまま書き出してOZONEでやってもいいし……しかし注意書きは欲しかった。

 蛇足ながら、Sonnoxリミッターにも怖ろしいクソ仕様を発見した。こいつのディザーは、オンにすると16bitディザーとして働き、オフにすると24bitディザーになります。
 つまり、どうやっても絶対に切れないって寸法。おいちょっと(笑)、そんなのアリ? 道理でオフにしても音がおかしかったわけだ。ひゅー冷や汗。マスタリング最終段専用やん。
 というか、自動ディザリングのABILITYでは使っていけないリミッターじゃないか(笑)。えぇぇ?これヤバすぎっしょ。インタネさんOFFスイッチ付けて。

 ボカロP時代には良く使ってたが、最近は使ってなかった、ああ良かった。思えば昔はディザーなんて全く気にせずやってたなあ、どうせ128のmp3より音が悪いかも?って世界だったし。

 以上、優雅な生楽器プレイヤーの皆さまには無関係な、制作屋特有のエピソードでございました。

(追記/書き忘れてたが、SonnoxリミッターはABILITYに付属してます。ニッチな問題だけににっちもさっちもいかない、ルイ・アームストロングちゃうで)

作曲してる時の表情問題

 先日、とあるアーティストさんのキャンペーン・ライブ中の写真を見せて貰ったのですが、なんというか、アーティストの皆さんはやっぱりライブをしている時、一番良い顔をしてらっしゃいますね。正直、格好いいのです。
 シンガーさんなら歌っている時、ピアニストならピアノを弾いている時、それは一番似合っているし、これが音楽の面白く得なところだと思うけど、自然と一挙一動がキマってしまいます。改めて思うがこの格好良さは本当に不思議。結局そこで「表現」が生まれているから、そうなるんでしょうね。
 音楽には形がない、目には見えないから、抽象度が高く、それが故に素晴らしい音を「そこ」で作り出す人は、とてもクールに見えるわけです。

 こうしてみると、作曲家はとても地味な裏方だなあと思う(まあ好きでやってるのですが)。果たして作曲している時、自分はどんな顔をしているだろうか。
 たぶん各段階で違うと思うんだけど、純粋にメロディを作っているときは、モチーフの部分は大抵別録りで関係ないとして、Aメロああでもないこうでもない……とやっている時は、首を捻ったり、詰まれば苦悶(?)。何度もプレイバックしたり、結構ノッポさんの「でっきるかな」感覚。

 コード進行を考えている時は、コードの機能や理論を横に見つつも、もっと感覚的。理論的には正しくても、メロと合わせるとトンデモなくダサい進行ってあるので。結局気持ちいいか気持ち良くないか。非機能的な進行がハマった時はよっしゃあ!って感じ。

 アレンジしているときは、一番空想というイメージを働かせているかもしれない。このパートはこの楽器でこんな動きにしようとか、パートごとの流れを見つつ、やっぱり完成形を脳内イメージしつつ作業。いいアレンジを思いつくと、結構ニコニコしている気がする。人に見せるならここだな(笑)。

 ここまでは世間一般の作曲で、結構脳内のイメージや音感を総動員している感じですが、ミックス作業となると全然頭を使う場所が違ってくる。クリエイティブというのとはちと違う。エンジニアリングといわれる通り、工学であり純粋な作業に近い(もちろん創造性を発揮できる箇所もあるが)。

 まあ、なんといっても、まず人に見せられない顔をしているのは、DAWが落ちた時(笑)。絶対マヌケな顔をしてるはず。「あっ」「ひょっ」「うわ落ちよった」「うそーん」などと、2回に1回くらいは裏返った声出てますしね。そりゃそうだよ、下手すると1時間近い作業が全部飛んでしまうんだから。それでも最近はこまめにセーブするんで、大抵最大10分位で助かっている。
 といっても、自分の使っているDAWがなかなか頑強で作曲中は滅多に落ちないのですが、ミックス中は逆に落ちやすい。重いプラグインを多数のトラックに差しまくるからね。曲をバウンス(オーディオ書き出し)して最後の最後でスッとDAWが落ちた日にゃ、そりゃ声も出るぜ。

 どうですか、作曲勢の皆さんなら覚えがあるでしょう(笑)。僕はあたしは知りません、などとは言わせませんよ。
 DAWが落ちても、いつも静かに笑っていられるような境地になって初めて(そう、まさに「雨ニモ負ケズ」のように)、一流の作曲家といえるだろう。いや本当かこれ。

「ブルーライト・ヨコハマ」の秘密

 いつか聞こうと思い買ってあった古いレコードが何枚かあり、その中に「園まり」のアルバムがありました。調べたら1969年発売のものらしいが、今でいうカバーアルバム。昔の歌手はカバー曲をよく歌っていて、オリジナルアルバムでも半分くらいカバーとか良くあった、しかもほとんどアレンジが同じとか。
 まあそれはいいとして、この中に「いしだあゆみ」の大ヒット曲「ブルーライト・ヨコハマ」が入っていて、懐かしいなあと思い聞いてました。
(今じゃすっかりブルーライトは悪者だけど、港の照明のことだからね)

 さすがに当時は自分も幼稚園に行くか行かないかの子供(w)。ほんと日本人なら誰でも知ってる、という位の流行りようで、「ものすごくきれいな大人のお姉さん」がおしゃれで都会的な歌を歌っているなあ、と、無論そんな言葉も知りませんでしたが、あとから思い返してみればそんな印象。(その後何年も歌番組で歌われていて、そっちの記憶だろうなあ)

 で、園まりのブルーライト・ヨコハマも良かったのですが、やっぱりアレンジがほぼ同じ感じ、しかもボーカルのエコー処理まで同じ、それで「おっ」と思った。
 原曲を知っている方は思い出してみてください。ボーカルに独特のクリアなエコー(ディレイ=やまびこみたいな残響)が掛かっていませんでしたか? あれでかなり曲の印象がお洒落になってると思いますが、まだ1968年ですので、ハードのデジタルディレイなんて絶対ありません。テープレコーダーの技術を応用したテープディレイならありましたが、やはりこんなクリアな音は出ません。
 では、このディレイの正体は何か? なんだと思いますか?(笑)

 これが今回の本題ですが、ほら、やっぱり分析始めちゃうんですよ。
 で、まあ、答えをいうと、これがエコー・チェンバー(ルーム)だったんですが。

 床や壁をタイル張りにして音がよく反響する小部屋を用意します、その中にスピーカーとマイクを入れれば、はい!エコーチェンバーの出来上がり。あとはボーカルだけスピーカーから流してマイクで拾えば、あのクリアなディレイが得られるというワケ。昔はこんな苦労してたんですね、今からするとアナログで物凄く面白いけど。
(このあと鉄板を使ったプレートリバーブや、スプリングリバーブが開発される)

 海外の古いスタジオにはまだ現存するところもあるらしいが、国内にはもうないでしょう。(お大尽のプライベートスタジオならもしや?)

 実はこれ、なんで気付いたかというと、どこかにミキシング話が載っていたわけでもなく、音でわかったのですね。

 最近、またまたWavesのプラグイン、「Abbey Road Chambers」を買いまして。はい、もうオチが分かった人もいると思いますが、これのデフォルトの音がブルーライトヨコハマのディレイとほぼ同じ(笑)。本当に同じ質感なんで、びっくりですわ。エコーチェンバー再現を目的にしてるとはいえ、よく出来たプラグインだなあ、と。流石世界のARスタジオは期待を裏切らない。
 こんなやつです(↓)。部屋、ありますよね。柱は定常波による一種のハウリングを防ぐためのもの。

 50年からの時空を超えて、こんな形でブルーライトヨコハマの謎が解けるとは。という、ファンタスティックな話でした。まあ諸先輩方には常識だったかもしれませんが。

(この曲、Wikipediaによるといしだあゆみさんの26枚目のシングルだそうで、嘘でしょ?当時二十歳そこそこだし……と思ったら、15歳位でデビューし、「毎月」新曲を出していた時期もあったらしい。恐るべし高度成長期の音楽業界! 80年代アイドルの3カ月新曲で驚いている場合じゃない。ってこっちの方が秘密っぽいか)

(思い出したが冨田勲先生が、「新日本紀行」のテーマ曲で柏木に非常に長いリバーブが欲しくなったとき、エコーチェンバーでも足りず、NHKの施設ビルかなんかの階段室で同じことをやった、という話は有名ですね。あの驚異のロングリバーブは、当時謎だったらしいですわ)

デモ曲のミックス改良

 今回はミックスを改良した話。

 生楽器の音が非常によく録れているアルバムを聞いていて(演奏も良かった)、ふと自分のミックスが心配になって、この前書いた曲を聞きなおしてみた。
 するとまあ、こうして比べると低域スカスカのかなり不自然な音に聞こえて、ベースやバスドラがどうこうより、曲全体の空気感が変という感じ。意外とこういうのは気付かないんですね、特にミックス作業の直後は。

 思い当たるところがあって、今回は各トラックの低域をかなりバッサリとEQで削っていて、たぶんそのせいじゃないかと思えた。
 アナライザーで見ても全く信号がない音域なので、いいかと思って。このあたりの音は、目立たないのにエネルギーだけは高いので、うまく処理しないと最終的に音の透明感に影響したり、音圧が上がらなかったります。
 ところが、これが削りすぎるとやはり良くなかったようですね。

 そこでミックスに戻って、削りすぎていたところを戻して、ベースやバスドラも50Hzくらいから下はバッサリいったり、重なっているところはえぐったりしてたので、そのあたりも適宜戻した。あとストラトのエコーが深すぎ他、若干微調整。

 こうして作った新しい2mixに、前と同じ設定のマスターを通して作ったのが、以下のファイルです。
 諸般の事情でmp3ですが320kですし、良いヘッドフォンで聞けば、違いは結構わかると思います。イントロのところが一番分かりやすいと思う。

元ファイル「キミの彼氏はアコーディオン」(若干改良済)

低域EQを修正

 面白いことに、低域をバッサリ削った元のやつのほうが、やはり音圧は上がってるんですね、セオリー通り。ただその分前述のように不自然な感じになるので、やはり(音圧上げだけが目的でないなら)低域の極端なカットは禁物のようです。
(音圧の差は、冒頭のアコーディオンの「鳴り」を聞いて頂ければ、明白ですね)

 参考までに、今回のマスタリング処理で、使用しているプラグインチェインは以下の通りです。

(1)Waves API2500 Compressor
(2)PSP E27 Equalizer
(3)PSP Xenon Limiter

(1)で2mixをまとめつつ若干レベル上げ。
(2)でコンプ処理で失われがちな高域を持ち上げる。
(3)でいよいよ音圧上げ処理。

 API2500は結構はっきりとキャラのつくタイプのコンプで、アメリカンな明るい音になります(悪くいえばチャラい音?)。
 E27も実機のモデリングだそうですが、実機にはトランスが入っているそうで、独特のヌラヌラした音になります。非常に面白い。
 Xenonはオリジナル設計だけど、これまたアナログっぽいイイ感じの歪み成分が付与される感じ、これまた個性的なリミッターです。
 こいつらを通すと、もうDAWで完結しているとは思えないような、アナログ感満載の音になります、お聞き頂いたとおり。こういうところがマスタリングの面白さだったりします。

 で、今回はシンセベース(を、ベースアンプに通してある)とブレイク系の打ち込みドラムのリズムセクションだったので、こういう感じの少し暖かい歪み成分があるマスタリングにしてみましたが(インディーズ風?)、この前買ったWavesのAbbey Road TG Mastering Chainも、せっかくなので試してみました。

 名前の通り、ロンドンのアビーロードスタジオが監修して作られたプラグインです。同シリーズは非常に高品質のプロダクト揃い。
 マスタリングをこいつだけでやってみたのが、以下のファイル。いかがでしょうか? 設定としては前述のやつと似た感じにしたのですが、これは同じ音圧が出ているのにかなり透明感がある仕上がり、しかもアナログっぽいし、ちょっと市販のCDにも近づいた音です。(高域だけは上げすぎてたので若干絞った)

TG Mastering Chainで処理

 かなり優秀だと思いますわ、なかなか使えるやつだと思います。

 ミックスは油断してるとこういうことがあるから、常に気をつけていないといかんですね。

(おっ、でも今聞いたら、コンプを1段抜かした分、2mixのまとまりがなくなってる気がする。こういうの、無限にあるんですよミックス作業はw)

アウトボードの話

 少し前の話ですが、アウトボードを導入したらミックスが良くなるんじゃないかと思い、物は試しと一度やってみることにしました。
 アウトボード、つまりスタジオなんかにあるハードのオーディオプロセッサの総称ですね。
 といっても、そんなに高額な物をポンと買えるわけでもなし、とにかく一度実験してみようと、目ぼしい製品を探していたら、ちょうどラックマウント型のステレオコンプレッサーが安く出ていました。
 具体的な値段は、恥ずかしいので書きません(笑)。そういう価格帯だと思って下さい。

 本体に多少傷はあるが完動品で、前オーナーは大事に使っていたらしい、これはいいと思って。特に80年代(の多分後期頃)の製品なので、もしかしたらこのコンプを通したら音が80年代になるのではないか?とホワンホワン(妄想)してまして、期待度マックスでオーディオI/Fに接続したわけですよ。

 DAWから出力した2mixの音を、I/Fから結線したコンプの入力に通し、アウトをまたI/Fに入れて、DAWで録音する、というルーティングです。デジタルで回っていた音がアナログ信号に変換され、コンプを通って、またデジタルに変換される流れ。アナログの歪みもいい感じに付加されるはず(きっと)。

 信号を出してみたところ、コンプのレベルインジケーターも点灯し、DAWにも信号が入ってきており、ちゃんと動いている模様。
 いよいよ、モニターヘッドフォン装着。これでミックスが終ったばかりの曲の2mixをプレイ! これ、どうなったと思いますか?

 「キャッ」ですよ「キャッ」。
 あまりの音の酷さにリアルに身をよじったね。
 いい歳したおっさんにこんな声出させるなよ(w)。

 いやー、この時の音の薄っぺらさ、ペタンコな感じといったら。驚くべきものでした。2mixの音って、もうあらゆる楽器の音やらボーカルやらすべて信号処理が終わって、膨大な情報量があるわけです、考えてみたら。この時点でかなり音が立体的になってますのでね。音の定位や奥行き感まで考えてミックダウンしてるので。
 それらの潤沢な情報が全部飛んで、ほんとペタンコ。3次元が2次元になってしまった感じ。ある意味凄い。

 それで思い出した、こんな感じの音、確かに80年代にあったっけ……CDが出た当初、SHARPあたりが低価格のCDラジカセを作ってたけど、あれと同じ音だわ、とw
 80年代っていっても、そっちじゃ困るなあ……。

 ということで、ショボーンとなりつつこのコンプは押入れ行きになったのでした。
 そもそも、この製品は元の価格からいっても、2mixの音圧上げとかではなく、ギターやキーボードのエフェクトボードに入れたりするやつだからなあ。こんな使い方をしちゃいかんでしょう(今更)。

 そして悟ったよ。こりゃ10万以下のアウトボードは問題外だ、ってね。
(もちろん、前述のエフェクトチェーン入れるやつでは、安くてもいい製品はあるが、あくまでミックス用製品の話)
 しかも高額なアウトボードはそれこそ精密機械なので、年中温湿度管理が必要でしょう。故障も心配だし(ほぼ修理不能と思われる)、経年劣化もする。こりゃ個人が手を出すのは得策じゃないってね。
 ある程度まではソフトのプラグインでやって、それ以上のクオリティを望むなら、スタジオに依頼した方が早いし確実っすわ(それなりにギャラは発生しますが)。

 インディーズで本格的にやっておられるアーティストさんも、やっぱり信頼できるミキサーとスタジオを幾つか知っていて、そこへ頼んでいる感じのようですね。宅録である程度やって、今はネットで送れる時代なので。

 よほど儲かって仕方がない作家さんならともかく(税金対策にもなるし)、流石に自分のような立場の人間が、アウトボードに手を出すのは無茶のようです。
(怖ろしいことに、本当にスタジオ級の機材を揃えている作家さんは、これまた結構いますが…w)

 また、今のプラグインは本当に優秀で、安いハードなんて全く不要なんですね。アナログ風味を出せるやつもたくさんあるので。
 色々わかって面白かった実験でした。

(あと、このレベルで機材を使いたいなら、もうケーブルも確実に音に影響しますわ。アナログルートを通るので)

洋楽コンピで発見した面白い曲

 「Sunday Morning」という洋楽コンピCDで発見した面白い曲。
「Cartoon Heroes/AQUA」

 早速Youtubeの公式クリップを貼ってみます。売れに売れた曲だそうで、知っている人は今更なんでしょうが、この頃(2000年代初頭)って自分はもうインスト曲ばかり聞いていて、完全ノーマークでした。

 まずタイトルが「Cartoon Heroes」ですよ。「うん?」ってなる。ボーカルの女性の声に「はぁ?」、真面目に展開するので「えぇ?」、サビが非常な美メロなんで「うわぉ」ってなるという、久々に音楽そのものの斬新さと楽しさにぶちのめされたというか(w)。

 すごい声だよなあ、これ最初「子供が歌っているのか?」、次に「いやボイスチェンジャー?」「女性の裏声?」となりましたが、ボーカルの人の地声らしい。アニメ声・声優声を超えて、ほとんど安田大サーカスの黒ちゃんだから。

 Wikipediaによると、デンマークの男性3人でデビュー前にボーカルを探していたところ、見つかったのがこの女性リーナだったという。こんな声の人と組もうと思ったのが凄い(w)。もちろんもしハマれば唯一無二の個性になるわけで、事実そうなって、出したアルバム2枚が全世界で3300万枚というデタラメな数が売れたらしい。配信主体になってしまう前の、最後の滑り込みみたいな感じですか。

 まあ見てわかる通り、ビデオクリップが爆笑ものなんで、こういうバカバカしい映像に金をつぎ込む奴らは大好きだぜ(笑)。
 ただ音楽としてのセンスはかなりいいですよ、これは。打ち込みのオーケストラとクラブサウンドの融合も面白い。さっき書いた通りサビの美メロはほんとに癖になる。
 ただミックスはもうヘッドフォンに特化してあって、コンポで聞くと重低音ブーストがきつい。あと、このビデオクリップ、公式なのになんとLとRの定位が逆です。CDで聞くとハープが左から聞こえるけど、こいつは右からだから。すさまじいチョンボですが、まあご愛敬か(結構Youtubeはあるんだよなあ)。

 久々にアルバムも聞いてみたいアーティストだったので、2枚注文した。

ミックスTIPS: シンセパッドの位相乱れを防ぐ

 この前上げたの曲のミックスやってて気づいたこと。これまでいまいちミックスにおける「位相の乱れ」はピンときてなかったんだけど、初めて「これがそうか」ってなりましたわ。
 倍音をたっぷり含んだシンセのパッド、これにがっつりコンプ掛けたら、音質と音量がふわっふわっに揺らめいて、かなり妙な質感になってしまった。変な例えだけど、エビフライ(名古屋だけに)のコロモだけがぶわぶわになって、中身がつかめない感じ(なんちゅう比喩や)。これ何だろ?(これまでも時々起こってた、ここまで派手でないが)、と思ったら、これが位相をぐちゃぐちゃにしちゃった状態。コンプの掛けすぎで。

 実は、同じようなコンプをストリングス等の生楽器にかけても、こうはなりません。やはり元が生のやつはいい意味で波形が揃ってない、ランダムネスがあるから、いい感じに自然にコンプレッションするんですね。ただシンセみたいな人工波形だと、ほぼきっかり波形が揃っているので、位相の乱れがガチで目立ってしまう、ということのようです。
 これは、VOX系のシンセパッドと生クワイヤでも同じような関係になる。

 もともとシンセパッドやシンセストリングスなんて、ダイナミクスも揃ってるんでコンプなんてそう必要ないんだけど。つい癖で掛けてしまっていたんですが、生楽器と同じようにやると、かなり位相の乱れが目立つ拙い状態になると今回判明。
 あと、生楽器用の、アナログモデリング系のコンプ掛けたりすると、シーケンスのシンセパッドでなく、キーボードシンセの手弾きみたいな質感になる(w)。これも曲調によっては変なことになるんで、まあ適材適所ってこと。

 今回は、リニアフェイズの無色系マルチバンドコンプで中~高域あたりをうっすらとコンプレッションしてみました。これでほぼ質感は変わらず、位相も崩れず穏やかな音圧UPになりました。

謎は全て解けた? アビーロードスタジオ

 実は、前回のアビロ(なんちゅう略語や)のミキシングの謎、書いて次の日に原因がわかりました。使用前・使用後にあまり差がないというアレですね。

 わかってみれば簡単で、要は「使用前」音源もアビロで録ったから、ということです(w)。そりゃそうか、と思うわけですよ。設備の整ったスタジオで激高いマイク・マイクプリ・ケーブル、コンソール、他プロセッサーで録っているんですわ。エンジニアのマイキングも普段通りでしょこれ。しかもちゃんとマルチトラックで録っている(でないとそのあとミキシングできないし)。
 というか、最低限のプリミックスやトリートはしているはずです。でないと音源にならないので。そこからしてレベルが高い(オソロシイ話です)。

 ハイレベルの「使用前」音源にハイレベルの正規ミックスしても、その差はあまり感じられないのは当然といえば当然。いやはや、恵まれているところはそれなりの悩み(?)があるもんですわ。
 たぶんユーザーの音源をどれか借りて載せれば良かったんだろうけど、権利関係で煩わしいことを避けるためでしょうね(演奏してるミュージシャンも無論プロと思われます)。もっと下手ミックスの使用前音源を用意すればいいんだけど、ここの大看板しょってるとそういう訳にもいかないのかもしれない。
(熟達したセッションピアニストは、もう身体に運指やコード進行が染み付いているから、めちゃくちゃ弾こうしてもできないそうですね。それと同じことがここのエンジニアにも起こっているに違いないw)

 今は日本も昔の有名スタジオなんかとっくに潰れてしまっているそうですが、現在残っているところは、それこそアビーロードスタジオとも戦えるクオリティのスタジオでしょう。この世界もグローバリズムといえそうですが、苛烈な時代です。
 経営が成り立っているところは、よほどオーナーやエンジニアが優秀でビジネスのセンスもある場所ばかりと思われます。

 話は少しずれるけど、スタジオも優秀、ミュージシャンも優秀、制作環境は整っている(ハードさえあきらめれば低廉)、良い音楽聞きたいリスナーもたくさんいる、なのに音楽ビジネスが全くダメなのはどういうわけか。これは世界中でそうですが。
 日本だけとっても、非常に才能あるミュージシャンは一杯いるのに、その曲が本当に音楽を聴きたい人のところまで届いていない(あ、自分のこと言ってるんじゃないよ。凄い方が多すぎです、あっしは修行中のおっさん)。どこかで目詰まりを起こしているんですね、きっと。

 これについては、いつか改めてまた。(といっても音楽業界を語れるほど内情知っているわけじゃないがw)

アビーロードスタジオの秘密?

(二つ前の記事からの続き)

良かったぁ、「AR Modern Drummer」の深刻なバグなんて無かったんや!

 今回は曲書いてる人間以外チンプンカンプンだと思うけど、敢えて……説明しよう。
 あ、ARというのは、Abbey Roadの略で、もちろんこれは世界で一番有名な音楽スタジオの名前です。ビートルズやピンクフロイドなどがここで数々の名盤を作ってきました。
 ロンドンにあるこのスタジオが録音・監修して作られているサンプリングの「ドラム音源」のひとつ、それが冒頭に書いた製品。すごい時代でしょ?

 ざっくり言って、この音源はミキサーやエフェクト(EQやらサチュレータやらリバーブやらディレイやらコンプやら)、それもかなり高品質なやつを内蔵していて、更に超高品質な録りの各サンプルと相まって、まあ何種類かあるプリセットのまんまで、非常にいい感じの音で鳴ってくれるわけですよ。やっぱ世界の一流スタジオだから、そこは。
 スタジオのミキシングコンソールが画面の中にあると思ってくれ。

 で、今回はその中からSparkle KitのR’nBというプリセットを使ったんですわ(ドラムキットも2種類ある)。
 そしたらね、アレンジが完成して、ミックスの準備でパラアウトした途端、大半の音が消えてしまって、非常に焦った。(もう専門用語の解説はしない)(笑)
 ルームとオーバーヘッドあたりは大丈夫だった。

 どうしてパラアウトすると音が消えるのか? これはバグだ!と思っていたわけよ。
(パラアウト=キックドラム、スネア、ハイハット…といった具合に、個別出力してファイルに落とす行為。あ、解説しちゃった)

 ところが、色々と試していると、どうも非常に小さな音でキックやスネア他が鳴っているのがわかった。消えたわけではないがやはりバグなのか? と思い、音源のミキサーセクションをあちこちチェックしていると、マスターでコンプを通しているのがわかった。犯人これでしたわ(笑)。ここでがっつりコンプ掛けて音を大きくしていた!

 パラアウトとするとマスターバス通らなくなるから、音が小さくなってた。
 だからDAWのミキサーでドラムバス作って、似た設定でバスコンプ掛けたら、アーラ不思議、ってわけでもないが元通り。

 それはいいが、問題はなんでこんなことをアビーロードのエンジニアがしていたか、ってこと。

 他のプリセットだと、パラアウトした段階で全部はっきり大きな音で出力されるんですね。(もちろん、どのプリセットもキックならキックごとにEQやらコンプやらできっちり音が作ってある)。ところがこのR’nBだけはこの段階では非常に音が小さい。

 つまりこれは、アビーロードスタジオの現在のドラムミックスのやり方なんだろう、と気付いて鼻血が出るほど興奮したぜ!(笑)

 パラの段階ではかなり小さめの音にしておいて、バスコンプでガーンと持ち上げると、確かにドラム各パートの間でいい感じの一体感が出て、R&Bで使われるあの感じのドラムサウンドになる。

 お家でドラム音源使っているだけでアビーロードのミックスの秘密が覗けてしまう。なんという良い時代だ。
 いきなり渡英して実際のアビーロードスタジオ行っても、ミキシングなんかまず見せてくれないだろうしね。(もっとも、今はここも多角経営で、ハイテクベンチャーと組んでエンジニア養成スクールをやってるらしい。伝承していかないと、この時代だから技術が消えちゃうんだって)
 あと、グーグルアースだかで確か内部をぐるっと回れたはず。こうなると一種の観光名所か?

 さて。今回の本題はこれからです(今までのは前置き)。
 そういえばアビーロードスタジオ(英語表記だとStudiosと複数形なんですね)のサイトまだ見てなかったなあ、と思って、実は今回見てみました。
 ビートルズのアルバムジャケットで写っていたあの横断歩道が見えるライブカメラとか、非常にくだらないコンテンツもありつつも、驚いたのが。
 ネット経由でミキシングやマスタリングを受け付けているんですわ!

 えええええ!?と思った人はよく訓練された情弱クリエイターだ! ちなみに自分もだ。いやー驚いた。昔ならアビーロードスタジオでミキシングなんて、メジャーでよっぽど売れていないと絶対無理ですからね。ほんとひと握りのアーティストの特権。それが今やお金さえ払えば誰でも受け付けて貰えるとは。文明はどんどん進歩しているな。

 気になるお値段は、現在のGBPレートだと日本円でミックス1曲が45000円位。マスタリングが1.5万弱だったかな?結構お手頃じゃないだろうか。
 ただ心配なのが、さすがにネット経由だから本物のエンジニアがやってくれるか確認できないこと。もしかしたら学生バイト君がテキトーにやっつけてるんではという疑惑が。一応、エンジニアの顔写真とプロフィールが出てきて、誰に頼むか指定できる体裁にはなってるんですが。

 で、ググってみたら、なんと数年前にここでマスタリングをした方のブログ記事が見つかった(そんな前からやっていたらしい)。スタジオ関係者の方らしいのでかなり信頼度は高そうですが、やはりバイト疑惑を持ちつつもエイヤ!っと依頼したら、ちゃんと曲ごとにマスタリングの方法論を変えてきてて、どうやら本職エンジニアが仕事してくれているらしいとのこと。
 いやー、これはいいんじゃないか?…と普通思うじゃないですか。
 あっしも一瞬思ったよ。
 ところがですね。

 ミキシング依頼ページの「ミキシング前」「ミキシング後」の音源があったので、試聴してみたんですよ。確かに、音は整理されてそりゃ良くなってる。EQやコンプでトリートして上質の音源に仕上がってますよ。
 しかし……それほど驚くような「変化」でもないかも、と。正直、これ位なら今の日本のスタジオでもクオリティは変わらないし、なんならもっと良くできるところは結構あるんじゃないか?と思ってしまった。
(まさか、そんな訳あるか!という人は実際のサイトへ行って試聴してみて下さい)

 ここで思い出したのが、90年代にインターネットが一般化した時に海外のネットニュースなんかで聞きかじった話。意外と海外には日本製CDのファンが多くて、それは品質がとても良いから。アメリカだけでなくヨーロッパからも、日本のアーティストはCDの音が良いから羨ましい、などど聞こえてきた。
 今にしても思えば、これはCD盤そのもののプロダクト品質だけでなく、録音やミキシング含めた(マスタリングも)クオリティが高かったからかもしれません。
 こういう話は音楽メディアでも見かけたしなあ。

 僕らが意識してないだけで、30年も前から録音・ミックスなどのスタジオワークは、日本も世界レベルになっていたんじゃないかと。もう今となっては機材も方法論も海外と国内で差はないだろうし。
 アビーロードのブランド信仰みたいなのが崩れてちょっとガッカリ(?)な話ではありますが。

 いや、でも、ネット経由のストリーミング再生だから、実際は帯域がかなり絞ってあるはずで、実はWAVで聞いたら凄かったりとか……やっぱりバイト君がやってたりとか?(笑)。ミックスは音源のブラッシュアップだけでなく、どういう方向でやるか、ってのもエンジニアが考えることだから、そこはアビーロードは優れていたりするんだろうか。
 情弱を騙す名前としては、ブランド力は最高ですが(怒られるわ)。
 だって人に「この曲、アビーロードでミックスしたんです」と言ったらどうなるか、考えてみたらわかるよね。主に団塊の世代の人は間違いなく飛び上がる(笑)。

 あ、なんだかんだ言ってもやっぱり音源やプラグインは最高にイイっすよ。(元々オリジナルハードの開発は、ここの伝統でもある。コンソールや有名なダブリングマシン等)。
 アビーロードスタジオ、意外とユーザフレンドリーなんだね、って話でした。