カテゴリー: MIX

音圧つれづれ

 サブスクで色々な時代の曲を聴いていて思ったんだが、やっぱり時代が下るに従って明らかに曲の音圧が高くなっていくんですね。現代的なミキシングが完成したのが1970年代後半だとすれば、それを受け継いだ80年代はまだしも、90年代からだんだん音圧が上がっていき、2000年代前半には、世界で音圧戦争とでもいうべき状態になってしまっていた。
 音圧こそ正義、もうありとあらゆる手段で音圧を稼ごうという風潮でした。この時代の幾つかの楽曲を今聞くと、もう奇音とでも言うべき凄まじいク●音質で、おいおいMXRのペダルディストーションでもマスターに掛けたのかこれは、みたいな歪みだらけの、聞くに堪えないものが散見します。いっそもう、おぞましい音、と断言しても良いくらい。
(別にMXRのペダルをけなしているわけじゃないよ、適切にギターに掛ければ素晴らしい効果。でもマスターに挿しちゃダメだろうw)
 確かに見かけ上の音は大きいかもしれないが、音質が犠牲になって楽曲が死んでしまってる。音圧のために音楽が壊されたんですね。風船を限界を超えて膨らせている感じか。実際やり過ぎてクリップノイズまで出した曲もあるらしいし。

 で、流石にこれはまずかろう、ということで、2010年代頃からは、そこまで音圧は重視されない風潮になってきてはいる、一応は。まあプラグイン等の発展で、歪ませずに音圧を上げることもできるようになってきてる、ってのはある。
 ただ注意深く良いオーディオ機器で聞くと、やっぱり現代の音圧が高い曲は、かなり無理をしているのがわかる、音が不自然なんですね。(歪みも聞こえます…)

 やはり音質的なことを考えれば、70-80年代のミキシングや音圧が最高なんですけどね。おかしな音圧歪みも全くないし、ステレオコンポで大音量で鳴らしても、非常にバランスが良く気持ちいいわけです。逆に現代の高音圧曲は、とても居心地の悪い、奇ミックスに聞こえます。(なんせスマホのイヤフォンに合わせあるからな、トホホ…)

 これらの話は、無論ジャンルによっても違ってきますが(クラシックやジャズなどは、音圧など完全無視でしょう)、なんと「高音圧化」の話は、演歌にさえ当てはまります。

 そこで弊レーベルの戦略は…って話は、まあ一応置いておきますが。とりあえず、いま音圧を気にしないといけない曲をマスタリングしているので、例によってぼやっと書いてみました。

(余談。あれだね、最近の洋楽のチャート上位曲が、ほぼボーカルと簡単なリズムとコード鳴らしているだけ、みたいなパターンが散見するが、ラップの影響と言えなくもないが、実はスマホのイヤフォンでは情報量の多い曲を鳴らしづらいからじゃないか? ハードウェア的にドライブできないってこと。テクノロジーが音楽を単純にした、って言えるかもしれない?)

ProTools利用開始

 ちょうどミキシングを始める曲があったので、早速ProToolsで作業してる。
 従来もミキシングは必ずバウンスして別工程にしていたので、このタイミングでトラックごとのWAVファイルを、ABILITYからざざっとProToolsの方へ持っていけばいいわけです。

 やっぱりミキシングは万国共通の作業だからか、マニュアルを読まなくても結構使いこなせることに気付いた。判らないところはググると解説ページや公式のヘルプが出てくるし、流石にユーザが多いDAWはこういう時に便利。
 打ち込みから全部やれと言われると困るだろうが、この方式なら時間的な導入コストは少なそうです。
 多少の設計思想の違いはあれど、物理ミキサーを再現するというのがDAWの目的の一つだから……。まあトラック毎のPANのツマミが左右一個づつなのには面食らったが(合理的な理由があるんですね)。

 しかしなんか、この前も書いたが、ソフトのルック&フィールが、それこそ20年位前のやる気のない日本語化施された海外ソフト、そのままだね(w)。これならABILITYや、最近の他社DAWの方が、デザイン等は洗練されていると思う(多分機能やルーティングも)。
 音は流石に良いですね。音質が高品位だからスタジオが皆使っているんだもんね。Babyfaceを導入した時も感じた、全体の見晴らしが良くなった感じ、それを再び味わってます。音が見えやすいので、EQやコンプのツマミを弄っても、すぐにパラメータが決まるので時短になる。
 まあ、プロ用の無骨な職人DAWといったところですか。

 常用のプラグインの大半がAAXにも対応しているので、ProToolsに移って困ることもない。(Waves/PSPも)
 ただSonnoxのリバーブやEQは、ABILITY専用なので使えなくなってしまったが、そこは結構イタい。
 ということで意外とすんなり利用開始できました。

ミックスの気付きシリーズ

 アナログモデリング系のプラグインを使い過ぎて、マスターから透明感が失われた、という話をしばらく前書いた。ロックとかフュージョンとかアップテンポで元気のある曲なら歪み系サウンドが合うことも多いが、例えば静かなアコースティック系バラードとか、いってしまえば普通のインストでも歪みはあまり歓迎される結果はもたらさない(私見ですよ、無論)。

 それで、試しに自分の曲で無色透明系のプラグインばかりでミックスしてみたのですね。シンセとかほぼない、サンプリング音源ばかりの曲で。
 それをまた無色透明系のマスタリングに掛けたらどうなったか。

 モニターヘッドフォンや、ミニコンポ、リスニングヘッドフォンあたりまでは、なかなか良かった(モニターSPも)。ただ弊社の最終確認環境、フルサイズのステレオコンポで聞いたら……これが、見事に各サンプリング音源の「色」が見えちゃって。NIならNIでまとまってていいんだが、そこにUVIやら、ギターのMusicLabやら(+IKマルチメディア)。ねえ。バラバラなんですよ。ああ、打ち込みで作ったな、というのが丸解りでかなり恥ずかしい状態。これじゃあダメだな、という結論になった。
(たぶんシンセだけの曲なら、無色透明でもイケたはず…)

 この時はどうやってまとめたか、というと、マスタリングでちょっと色を付けたんです。すると音源独自の色が消えて、ちゃんと曲としてまとまりました。あまり好きな方法ではないが、色付け系マスタリングプラグインは、こういう風にも使えるのか、という発見をした次第。

 これが、ミックスでアナログ色満載の2mixを作ると、今度はマスタリングが透明でないとかなりクドイ音になるからね。
 もちろんこういう話は、楽曲の内容やらジャンルやら、色々な要素が影響するから、一概にはこうとは言えないが、常に全体の作業を意識しながら進めないと、成果物がトンでもない代物になりかねないので、注意しないとね。
 統一感というのも、ミキシングの大切な要素です。

ドラムミックスの極意

 例によって音源の音をどうミックスするかという話です。最近つくづく思うが、ドラムのミックスでオーバーヘッドやルームの処理は極めて重要で、なぜかというとここを間違えると途端にドラム音がウソっぽく(打ち込みっぽく)なってしまうんですね。大きくいえばアンビエンスの処理だけど、単体で聞くとボヤけた、色々な音が入り混じった、いわば「環境音」なので、つい処理をおろそかにしたくなるが、ダメですね。
 キックドラムやスネアなんかははっきり聞こえる「ハイファイ」な音ですが、それだけではトラックに入れると不自然なんだから、面白いもんです。
 オーバーヘッドもシンバルやハイハットだけでなく、キック・スネア・タムの音も入ってくるんで、ここもちゃんと処理しないと、ということです(邪魔だからと低域カットしないほうが良い)。ルームもドラム全部の部屋鳴りみたいなものだから、ちゃんと全体として活かすようにすると、ドラムトラックのリアリティが段違いになる。
 EQやコンプの具体的なかけ方は、出したいドラムサウンドの傾向(音楽ジャンル)によって違ってくるので、そのあたりは音源やプラグインのプリセットを参考にすると良い。極意と自称する割にはやけにボヤっとしてるな。まあ世の中こんなもんだ。

 自分はNIのAbbey Road Seriesのドラム音源をよく使っていますが、こいつらのプリセットは良く見てます。流石にここのエンジニアが作った設定は高品質で、元の音からどうやって目的のドラムサウンドを作りだしているが学べて面白い。音源の中にもうミキサーが入ってますからね、他の現代的な音源と同様。

 まあ、ここは流石にちゃんとしてるけど、多くのチャンネルストリップのプリセットなんかは、非常にマンガチックに誇張した設定になっていたりするんで、そのまま使うと結構トンでもない結果になりがち。あれは解りやすくデフォルメしてると思うので、あくまで参考程度にしないと痛い目に遭いますよ。
 結局最後は自分の耳を信じろってことだなあ。そしてその耳はいいミックスの音源をたくさん聞いて、時間を掛けて作っていくしかない。ミックス道もキビシイのであった。

ミックスの極意(2)

 チャンバーオーケストラ(フルオケより小人数、バロック音楽あたりの時代はこの編成だったそう)のデモ曲をミックスしていて気付いたこと。当たり前かもしれませんが、楽器の配置が違っているんですね。
 もともとフルオケの楽器の配置も、調べてみると昔はそんなに厳密には決まってなかったらしいが、ある時今のような配置にすると音響的にとても良いとわかり、それが広まったとのこと。(弦でいえば、客席からみて左から右へ順に第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスと半分に切った扇のような形態で並ぶ)
 これをそのまんま小人数化したのがチャンバーと思っていたが、調べたら全然違っていた。

 第1バイオリンが左前列にズラッ、第2バイオリンが右前列にズラッ、そしてビオラ以下はどこに配置するかはそんなに厳密には決まってないらしい(w)。今回は写真があったオケに合わせてイメージしてたが……。金菅、木管、パーカッション等はもっとはっきりしない(資料や写真ごとに違っていたり、わからない楽器もある→多分定石なし)。
 フルオケ=100人、チャンバー=30人なので、音響的にも最適解が違ってくるのでしょうね。そしてバロック時代の配置資料はほとんどないと思われる。

 なんでオケの配置がミックスに関係してくるかというと、それはもちろん楽器の定位(パン)決めに直接影響するからです。面白いもので、打ち込みのオケでも、というかだからこそ、ちゃんと実際に即した定位にするとリアリティが段違いです。人間の耳はほんとに優秀で、不自然な配置だとすぐ違和感を覚えますので。普段そんなところは聞いてないようで聞いてるんですね(リバーブの分量もそう、奥にいくほど深くする)。

 で、まあ第1・第2バイオリンの配置を資料の通りに左右に振ったら、これが驚くべき左右泣き別れ状態(最初期のステレオ音源みたい)、どうも変だと元に戻したら自然に混ざった。そう、最初から定位を振った状態で収録された音源(パッチ)だったのです(w)。まあクラシック系のオケ音源ではよくある話なのですが、チャンバーのやつはアナライザでみるとアンビエンスもたくさん入っていて、いかにも振ってないように見えたのよ(人数少ないから相対的に反射音が大きくみえる)。

 結局、最後はアナライザーより自分の耳を信じろって話ですわ。

(話を簡単にするために定位って書いたが、むろんイメージャーで振ってますよ、モノラル音源じゃないんだから。ステレオ幅の設定も大切)

 あと、単品の楽器のパッチ(例トランペット)とかもステレオ収録なんだけど、イメージャーで幅を絞るかモノにしないと、トランペット奏者だけ「目の前」に来て吹いている状態になってしまう。そんなオーケストラはいやだ!(笑)
 いかにリアリティを“作る”かっていう話になってくるんですね、最後は。これは実は打ち込み音源だけでなく、本物のオケの収録でも同じ。多数のマイクで収録するわけで、それをミキシングの段階で整理しないとオケの音にならないので。意外ですけどね。

ミックスの極意とは

 著名ミキサーの方のミックスデモ動画を見ていて思ったことがあって、とにかく手際がいいのと、一切迷いがないってこと。あとどんな道具を使ってもきちんとまとめてしまう。下手なミックスというのは道具のせいではなく、100%腕のせいなんだなあ、としみじみ。
 よく言われることだが今のDAWについているプラグインだったら、もう普通にプロユースで使える品質ですからね。それをずばり証明した動画を見てしまい、確信しました。まあぶっちゃけそのDAWはABILITYなんだけど、EQやコンプはともかく、実はこいつのオリジナルリバーブだけは酷い(笑)。スプリングでもないのに音が金属的なので自分はキンキンリバーブと呼んでいた、ってもう何年も使ってなかったが(下位エディションにも付属)、これを使って見事にボーカルトラックをまとめたので感心した。弘法筆を選ばずの境地。
 あと、凄いと思ったのは、ボーカルトラックの処理前の音が、アンビエンス(部屋鳴り)をかなり含んでいたんですよ。たぶん宅録だと思うが、これプロのはずなのにどうかと思った。どうするのかと思ったら、SonnoxのEQを使って(ABILITY付属←これは贅沢)、100Hzくらいから下をshelvingで-6dbくらいササッと絞って、これでおしまい、見事に部屋鳴り消えました。(ミキサーはこんな風に、問題あるトラックも解決しなくちゃいけないので大変です)
 パラデータもたぶん前処理されていたと思うけど、とにかく手早く終わって結果は良好、あんまりクドクドあーでもないこうでもないとやりませんね。シンプルで美しい感じ。ただ、各トラックの音量バランスはかなり慎重に微調整してたと思う、これが本来の仕事ですからね…。

(まあもっとも、これはデモのミックス作業なので、本番はもっと色々と凝ったこともやるんでしょうが…。あともちろん音楽ジャンルにもよる)

 結局こういうのって、最終的には良いミックスの音がどういうものか、ってところがミキサーがわかってないと、どうしようもなさそう。良い演奏のパラデータなら、そんなに手を加えなくてもいいわけだし(この場合はそうだった模様)。

 そういえば、大ベテランミキサーの吉野金次氏だったと思うけど、若い頃どうやって良いミックスの音を勉強したかというと、給料を全部洋楽レコードにつぎこんで聞きまくっていたそうです(1960年代後半)。食費が無くなってキャベツばかりかじっていたら、栄養失調で鼻血を出した、って笑えない逸話もあるくらい。(立花隆の『青春漂流』より。当時の吉野氏は東芝所属)
 結局、作曲と同じで、何が良い音楽なのかわかっていないと最終的には良いミックスには辿り着けないじゃないだろうか。いやまあ、一応ミックス作業はエンジニアリング(工学)なんで、決まったフォーマットと手順を踏めばある品質には到達するとは思いますが。そこから向こうはやっぱりね。吉野氏をはじめ著名ミキサーの方々は音楽活動の経験がある方も多いですね。

(最後に、実はABILITYにはSonnoxのリバーブが入っていて、これは最強なのです(笑)。だから自分は普段そっちを使っている)

シャリ・ミックス

 デモ曲のミックスをしてた時のこと。制作用モニタースピーカー&ヘッドフォンで聞いてさんざん調整したあと、マスタリングをして書き出してから、例によって一般リスニング用ヘッドフォンを色々と変えて音を確認するわけですが。
 普段用の3000円くらいのヘッドフォンでいい感じで安心していると、いつものダイソー100円ヘッドフォンで中域の被りを発見したりして、こいつは本当に役に立つやつだわいとミックスを改善して、念のために最後にDENONの6000円くらいのヘッドフォンで聞いたら。……これがドン引きするくらい酷い音で(笑)。ドンシャリってあるけど、あのドンがないやつ、つまりシャリ(=高域のみ飛び出てる)で、まあ奇妙奇天烈なミックスに聞こえた。焦って制作用のやつや他ので色々と他ソースも確認してみたけど、異常なし。リスニング用の大きなスピーカーでも問題ゼロ。
 そこで、このDENONのやつがちょっとおかしいことに気付いた(念のためこれでCD聞いてみたが、やはり音が変!)。

 なんでしょうね、買ってからまだ半年ほどで、しかもほぼ使ってなかったのだがなあ。買った直後はこんな音じゃなかった。「逆」エージング的なやつか?あまりに使わずスタンドに吊るしておいたので、部品が寒さで固着しておかしくなったか。あるいは単に故障的なもんかもしれんが。

 以前もこの価格帯のMaranzのヘッドフォンを使っていたんだけど、1年で音がビビるようになって捨てました。実はこの高くも安くもない(高いといっても1万だが)価格帯の製品って、意外と各社出してないようです。それこそ2-3000円前後のエントリークラスか、1万近く~の高級機が多い。用途としても中途半端で売れないんですかね。リスナーの音楽環境を再現するために、その中途半端なのも欲しいんだけど(笑)。
 あんまり売れるラインでないから、作りがいい加減ということもないだろうが、どうもメーカーも熱心でない気がする。今度は1万のリスニング用ヘッドフォンにしますわ。
 DENONは一応日本のオーディオメーカーだから信用していたんだけど、そういえば今世紀に入って会社ごと売られてしまっているからな。「デノン」じゃなくて「デンオン」と読ませていた時代は良かったですね。レコードカートリッジも鉄壁の品質だったなあ。
 オーディオ業界もまた復活して欲しいですね。

(と言っていたら、しばらく鳴らしていたら次の日に音が正常に戻ったよ。やはり使ってなかったから部品がおかしくなってたか、機械って不思議なところがあるね。常用してると壊れないんだよな何故か)

(おまけ。なんと、制作用モニタースピーカーもひと月ばかり使ってなかったら音が篭る感じになってて焦りました。丁寧に掃除してしばらく鳴らしたら戻った、まだ3年だから寿命には早すぎる。使ってないときはカバーでも被せておくべきですね。意外と埃が溜まって音に影響する気がする)

リバーブにコンプを掛けてみた

 今回はミキシングの話。これまでやったことがない方法だったが、SENDでリバーブトラックへ送ったボーカルに、リバーブ処理後、コンプを掛けて持ち上げてみた。つまり、リバーブ成分だけにコンプを掛けるわけですね。
 こうすると、SENDから戻ってきたRETURNの音量を上げなくても、リバーブだけ持ち上げられて「大きく」なるわけ。音圧稼ぎの要領です。
 実施後、確かにRETURNを上げなくてもリバーブがはっきり聞こえるようになったし、ちょっと雰囲気の違う感じでこれはこれでいいかなぁと思っていたのですが。ヘッドフォンで聞いている段階ではw

 モニタースピーカーで聞いてみたら、ギョッとするほどリバーブの感じが不自然で、とにかく1秒聞いてわかる違和感、即座にコンプ切りました(笑)。なんなんだ。
 それは、歌物のボーカル用のリバーブなんて、一番気を付けて自然に処理しなくてはいけない部分で、残響をコンプで持ち上げるなんて「不自然」なことをしては、ひと目(ひと聞き?)でわかるはずですわ、考えてみれば。一番しっかり作る部分だし、実際リスナーも一番厳しく聞くからね、ボーカルは。

 こりゃ普通の歌物のボーカルには使えない方法、という印象。たぶん自然なエコーより、エフェクティブなトラックなんかにはいいかもしれない。わざと不自然さを強調したい場合とかね。(例えばボーカルだったら台詞っぽいところとか……)

 なかなか残響系の処理は奥が深いです。単にリバーブやディレイの組み合わせだけでなく、ルーティングによっても自然だけど面白い効果が出せることもあるし。(WAVESのアビーロードシリーズのプレートやチェンバーのような、シミュレーション系のやつも適度に使えば良い働きをしてくれる)
 使いこなしみたいなところは、それこそ様々な曲の中で実際試して効果を確かめていくしかないです。自分もまだまだ試行錯誤することが多い(定番の処理は決まってきたが)。

(●追記 ここに書いたのはボーカルのことで、シンセや楽器類に掛けたらまた別の印象かもしれない。またこのテクニック自体は、よく知られた一般的なものです。ってあんまり実際やっている事例紹介はないような…)

理想のマスタリング

 ミックス後のファイル(2mix)を最終処理する工程、マスタリング。一応、正確な用語では「プリ・マスタリング」ですが。本来のマスタリングはアルバム収録曲すべてのレベルや音質を、リスナーが続けて聞いても違和感ないよう揃えるものなので。
 ただ今は配信ならバラ売りだし、だんだん区別も付ける必然性が減ってきているのは事実。(こうしてみると、コンピ盤やベスト盤は、曲ごとに色々バラバラだから、マスター作りは難しいんだろうな)

 で、プリ省略して書きますが、理想のマスタリングとは、ズバリ限りなく透明であること、でしょう。音圧を上げるにしても、できるだけ2mixのイメージやダイナミクス感を変えない。色をつけないってことです。もちろんステレオイメージも変えない。
 そんな処理で済む2mixを用意しておく、という前提がありますが。つまり、何か曲のイメージを付けたいなら、ミックスの時にやっておく。もっといえばアレンジの時に予めその辺りも考慮して作るってことですね。幸い弊社(者?)の場合は上流から下流まですべてワンストップでやってるので、こういうことが出来るのですが。これが分業だったりすると、そうはいかないけど。

 最近ますますこれは確信に変ってきてます。マスタリングの時、つい色々試してみたくなるけど、結局いつも余計なことをせず一番素直なマスター用のEQとマキシマイザーを差してそれで終り。これが一番良い結果が出る。ミックスで全てやっておけば、あとは弄るべきじゃないわけです。幸い音圧戦争もとうに終り、あまりに音圧上げた曲は歪んで聞きにくいよね、ってコンセンサンスが出来てると思います。そうするとマスタリングで2段コンプとかも、余程のことがない限り要らないんだよなあ。

 まあ、マキシマイザーの類も、色がつくようなヤツは、他のミキサーさんがやった曲で、音質を揃えたい時には要る。ただ、アナログ感を予め出した2mixに、アナログ感のあるマキシを掛けたりすると、今度は歪んで聞きづらくなるもんね。(だから手持ちの「PSP Xenon」なんか、いいプロダクトだと思うけど結局いつも出番がない)

 逆に「テラMIDI」感のある2mixやパラデータだったら、徹底的に色をつけた方が良い結果が出るんだけど。(アビーロード系のはっきり色がつくコンプやEQが良い仕事をしてくれる、そんな時は)

 ここ数日はコロナのこともあり、ますますヒキこもって音楽制作と年貢計算に精を出しています(w)。

TIPS: 日本が誇るDAW”ABILITY”高音質化

 たぶん日本全国で10人くらいしかユーザーがいないDAW、(株)インターネットのABILITY(Pro)――のチョイTIPS。……いや、いくらなんでもそんなことはないと思うが、毎日毎日起動して使い倒している人は本当にそれ位かもしれない(?)。そりゃCubaseなら100人単位でいるでしょうがね……。

 といっても一口メモみたいなもん、これがね、ミックス前に自分は必ずバウンス(オーディオ書き出し)して、そこからミックス作業に入ることにしているんですが、この書き出しファイル形式を48kHz/24Bitから48kHz/32bit(浮動小数点)にしたら、かなりはっきりとわかる位、音がクリアになって驚いたって話なのですわ。ここを読んでる方で何人ユーザーがいるか知りませんが、もしやってない方がいたら、ぜひ。というか、しばらく前のアップデートで32bit書き出しがデフォ値になったようなんだけど。
 32bitにすると音割れも原理的になくなりますが、それ以上に音質改善効果がありました。やはり24bitだと、まだ音質変化があるようで。最終的にCDフォーマットにする場合は44kHz/16bitで書き出しになるのですが。欠点としてはファイルサイズが増大するくらい。
 自分は2mixも勿論48/32で、マスタリング終わりでようやくCDフォーマットやmp3に書き出しです。

(この2mixも、48/24だと音が変ってしまう時は顕著だったが、48/32にした途端、DAWネイティブで鳴らしたそのまんまの状態の書き出しになった。驚きの白さTOP。いや洗剤か)

 ABILITYも3.0になってたぶんソフトをゼロから書き直しって位根本的改良を行ったようですが、オーディオエンジンも刷新されて元々高音質化しています。そこへ持ってきてこれは鬼に金棒(?)。
 そうそう、3.0の人柱期間も無事終って、また元のように安定した動きになってきました。たまに突然落ちることもあるが、まあ実用上は差し支えない安定度。なので2.0から上げてなかった方も安心してどうぞ。

 こいつは自分のような楽譜主義者にはうってつけのDAWなので、今後も頑張って欲しい。逆にDJさんには使いにくいかもしれない。
 まあ、ABILITYはガチ作編曲勢向けのDAWですわ、昔から。
(こいつの遠い先祖は、Rolandの「ミュージ郎」とかに付属していたソフトらしい)末永く、地道に活動しつつ使っていきますよ、この歳になると自分の分ってわかりますからね(w)。違うか。