カテゴリー: 音楽一般

音楽ジャンルとミーム

 昔のムード歌謡曲をアレンジし直していた時の話。元の編曲がそれはもう見事なアレンジ(+演奏)で、本当にさりげなくお洒落なことがしてある。メロやコード拾っている最中に思わず「いいアレンジだなあ」と3回位呟いたほど(w)。むろん演奏は全て生で、スタジオストリングスやブラスを使いまくり。でもベタな使い方ではなく、力抜いてさらりと。
 で、拾ったコードをみると、ほぼトライアドだったりして、多少メロディック&ハーモニックマイナーや、ブルーノートが入るくらい。これでジャズのフレーバーがしっかり入っていて、アレンジワークの妙を見せて貰った感じ。テンションとかテトラド関係なくこんなにお洒落になるのかと。

 で、これならリハーモナイズ不用で新アレンジ作れるとふんだ。リハモすると、曲のイメージが大きく変わってしまいます。コード進行は楽曲の基礎工事部分だから。
 そのまま作り始めて、もう少しジャズっぽくしてみようと色々と、ちょっと楽器やハーモニーのヴォイシングを変えただけなのに、結果今度はドン引きするくらいジャズになった(笑)。なぜなのか。

 結局これって、音楽ジャンルのミームのなせる業という仮説を立てた。ミーム、つまり文化的遺伝子ですね。コード進行と同程度か、あるいはそれ以上の影響力があるかも。新発見。
 振り返ると新アレンジはリズムをスイング風に強調したり、譜面には出ないところでも無意識にミームに従っている。(ただしラテン色も入れたので、そんなに単色には染まってないはず)
 自分もジャズを聴いてきて、こんな時はこんなフィーリングで……(大意)ってわかるので、当然そうしますからね。

 ジャズというと、みんな音楽理論ばかり血眼になって勉強するけど、たぶん同じくらい総合的なミーム、そしてリズム・グルーブも大事なんだな、と思った次第。
(ストランヴィンスキーがジャズの譜面だけを見て書いた、トンデモジャズ曲ってありましたね。あれもミームを意識してないからそうなる。音楽マニア的にはとても面白いがw)

雑記シリーズ

 車のオイル交換を車検以来してなくて、行こう行こうと思うだけで酷暑だったり大雨で連続延期、とうとういつものガソリンスタンドでやってもらったが、所要時間にビックリ。ほぼ5分強。ちょっと前まで20分とか掛かってたはずなんだが、見てたら銀色の全自動交換ロボ的なやつに繋いですぐ終った。昔は車の下からオイル抜いて……みたいな感じでしたね。文明の利器は怖ろしい。スタンドもいつまで営業してくれるのか、EV時代には戦々恐々です。近所で廃業したところが複数ある。

 韓国のコメディ映画「MISSION POSSIBLE」を全く期待しないで観たんだが、大当たり。トムクルーズのパロじゃなくてシティハンターでした(w)。韓国は実際中国や北朝鮮のスパイが入り乱れていて、情報戦は絵空事ではないリアルな世界の話なんですね。本家MIシリーズよりよほど現実味ある。まあほぼ漫画のノリですが、随分とお笑い芸人風の主人公、実は…ってやつです。韓国も拳銃は厳しく取り締まられているそうで、そこへ大量のトカレフをバラまく犯罪組織を阻止する話です。最近のハリウッド映画は演出脚本ヒネり過ぎで疲れますが、こちらはやっぱりアジア圏、安心の出来。

 指揮者の岩城宏之さんの本を読んでいたら、ハープで面白い話があった。オーケストラで使われるグランドハープは、実はメカ内蔵で、重量はケースに入れると100キロ位ある。大人2-3人でなんとか運べる代物ですが、当然ハープ奏者は移動時に運送会社に頼まなくてはならない。東京にはT運送というハープ専門の運送会社があるそうです(少し古い本なので現況は不明)。N響が戦後初めて海外ハープ奏者を招聘したとき、その方が住んだ家の近所に偶然あった小さな運送会社が始まりだそう。最初はオート三輪でハープを運んだらしい。ずれないよう、奏者の方が荷台でケースを押えていた。東京のハープ奏者は必ずお世話になっているとか。

NHK 坂本龍一スペシャル

 NHKで「坂本龍一 芸術は長く、人生は短し」を観ました。子供の頃のピアノ前での写真まで出てきて、音楽家としての人生を駆け足ながら振り返ったもので、良くまとまっていたと思います。個人的にはまだ死去の実感は持てません。膨大な音源と映像等が残っているわけで、それらの永続性を考えたら、音楽家の死というのは不思議なものだと、やや不謹慎ながら感じてしまいます。もちろんもうそこに新作が加わることないのですが……(未発表音源が発掘されない限り)。

NHK MUSIC SPECIAL 坂本龍一 芸術は長く、人生は短し
https://www.nhk.or.jp/music/programs/484975.html

 番組の中で意図的にかオミットされていたと思うのは、「スネークマンショー」との関わりですね。かなり過激なコントプロジェクトだったので、コンプライアンス的に拙かったか(まあ坂本さんというかYMOだけど)。
 僕らの年代だと、中高くらいで大滝詠一・YMO・スネークマンショーの洗礼を受けています。スネーク~は放課後に教室で誰かがラジカセで掛けてたりね。それを女子を含む皆で聞いて笑ってたり。平和な昭和の光景です。
 ちょっと脱線したけど、坂本さんの中にはお笑いに接近していた時期もあったわけですね。今だと当たり前だけど、当時はかなり新しかった。
 こうしてみると、やっぱり80sの音楽やカルチャーに果たした役割が巨大だったと思います。シティポップだけじゃなく、こんな面も80sにはあった、というかこっちの方が大きいな。やっぱりバブル日本、カルチャーも音楽も強かった、その核の一人が坂本龍一さんでした。

 もしかしたら熱烈なファンには当たり前かもしれないけど、番組を観ていて思ったのは、坂本さんの音楽にはいつも「辺境」との関わりがあったかもしれない。かつてのシンセは音楽の辺境(エッジ)だったし、大島渚監督の映画や、お笑い、民族音楽、自然音、ノイズ音楽、全部メインストリームからは外れていますね。それでもいつも中心にあるのは、ポップミュージック、もっといえば広義のポピュラー音楽で、常に商業音楽としてリスナーにアピールする楽曲を作っていた、現代音楽のように象牙の塔に篭らなかった。それは映画音楽作品のようにオーケストラ曲でも同じ。この点は当然すぎてつい忘れがちですが大きな功績ではないでしょうか。
 最後の作品はピアノソロ演奏ですが、コアになるものはいつも変わってなくて、その表現手段が変わってきただけ、という見方ができるかもしれません。

 自分だけが知っている坂本龍一さんのエピソードをここで書いておきましょう、といっても皆が期待するような内容でありません(w)。ライター時代に記事を書いていたある雑誌が、坂本さんのインタビュー記事を載せることになり、表紙も坂本さんになりました。自分が書いたのは無関係の記事だけど。やらしい話でスマヌが、坂本さん表紙で売上がめっちゃ良かったそうです。編集長は大増刷したって言ってました(笑)。今から20年位前の話だなあ。

 遺されたものは大きく、業界は(昔より)小さい。音楽業界の皆さん、どうしますか。

「ハナミズキ」データ公開

 既に諸サイトでニュースが流れていたのでご存知の方も多いでしょうか、なんと「ハナミズキ/ 一青窈」のパラデータがTuneCoreで配布開始されました。詳しい内容は以下を参照して頂くとして。

Rework with「ハナミズキ」
https://www.tunecore.co.jp/cover-wanted/rework-with-hanamizuki

 あの大ヒット曲、現代のスタンダードといえそうな名曲の完全パラデータが、TuneCoreに登録(無料)するだけで入手できてしまうので、少しでもミックスに興味のある方はもちろん、プロ諸先輩方も全員ダウンした方がいいってレベルのお宝です。前代未聞の大盤振る舞い。一青窈さんを始め、関係者の皆様の大英断に拍手喝采です。
 しかも、期間限定で勝手にアレンジやコラボしてリリースして良いっていうんですから、ちょっと世界的に見ても珍しいプロジェクトではないでしょうか。

 で、自分もすぐDLしてみました。流石に大きなファイルでした。一青窈さんのアー写も入っています。
 パラデータは48k/24bitになっています。現在の制作での標準形式ですね。

 早速DAWに入れて軽くミックスして聞いてみましたが、このままでもかなりの迫力。全トラックに軽くEQ・コンプ処理済のようです。パンやボリュームを整えて、反響系を適切に設定すれば、「ハナミズキ」の楽曲がそのまま完成する仕掛け。(このデータを見たり、色々設定を変えてみるだけでかなりの勉強になるはず)

 特にピアノが、名演なのはもちろん、非常に美しい音で録られて(処理)います、絶品ですね。ストリングスも素晴らしい。一青窈さんのボーカル・コーラスは表現力が突き抜けていて、生トラックをソロで聞いてすら巨きな熱量が伝わってきます。
 面白いのはドラムのトラックで、たぶんドラマーの方の声が入っている箇所があること。大熱演なので拾ったのでしょうか。
 更に、いくつかのトラックで、演奏がない時に不思議な被り(音の回り込み)があるので、どうも全パート(あるいは主要部分)一発録りだった可能性がある。

 さーて弊社はどうするか、って聞いた瞬間に参戦することを決断したんだけど、まあこれだけ素晴らしいデータを公開されてアレンジ/リリースするなって方が無理。ウチみたいなインディーズレーベルのためにあるような企画ですからね、やりまっせ。

Yo- Yo- ひととよう
俺たち参加で曲変容
クロームテープは録音用
トガった企画で俺高揚 Ah

(こんなラップが入るアレンジではありませんw)

雑記シリーズ

 とにかく実家の庭木が、この季節を迎えて大爆発状態。ジャングルなのは昔からなのであきらめてるが、下手すると道路へ枝が出たり隣家を侵食する状態。日々の手入れが欠かせないが全然追いついてない。しかも家の裏に回ったら、竹が6本生えていた。3本は見えていたが2倍とは恐れ入る。先月は生えてなかったのにこの生命力。幸いまだ人の背丈くらいで、柔らかいから下の方で簡単に折れる。竹はすぐ2階の屋根の高さになるから油断できない。植物パワーはほんと無敵です。

 インボイス制度、いよいよ実施が迫ってきましたが、やよいで帳簿作業していたら、バージョンアップで機能が追加されていた。うちは課税業者ですが、それでも日々の入力業務がアプリを使っても思いのほか面倒になりそう。本当にお上は庶民を苦しめることしかしない。免税業者、つまり小規模自営業者が、いわゆる益税を得られなくなるので、世間ではインボイスを歓迎する声もありますが、あれは元々煩雑になる消費税関連業務をお願いする代わりに……というバーターだったはず。益税無関係の課税業者・大企業等もかなり業務に影響を受けます。
 複数税率もあってどんどん複雑になってる。穿った見方をすればややこしくしてお役人の利権を確保したい、また増税をわかりにくくしたいって意図も見える。どうなってんでしょうね。

 ワイドショーで見ましたが、円安で韓国からの観光客が増えているという話題で、韓国ヤングが大喜びで渋谷でJ-POPのCDを買っているらしい。インタビューで、K-POPと違いメロディアスだったり、バンドサウンドが聞けるのが良いという話。やっぱり音楽は多様性が大切ですね。日本では出羽守が欧米では~韓国では~と全部真似すればうまくいくと相変わらず叫んでますが、連中は音楽のことを1mmも愛していないでしょう。まともな音楽ライターや評論家諸氏でそんなことを言っている人は一人もいない。あれは数字だけを見てるマーケッターなんで。やっぱりグッズとしてCDは非常に優秀なんですね。配信で聞いて気に入ったらCDでアーティストに還元する。これは非常に良いエコシステムだと思います。