カテゴリー: 音楽一般

名曲「ボーイフレンド」の秘密

 ある音楽プロデューサー氏の著作を読んでいたら、とんでもない箇所に行き当たった。みんな知ってるヒット曲「ボーイフレンド/aiko」には、実は隠された意味があるというのです。
(まだ最近のように思えるけど、もう20年も前の曲なんですね)

 その意味というのが、こういうお上品なブログでは言及するのも憚られるような、もう一度言いますが、こういうお上品な(しつこいか)、まあ端的に言って性行為ですよ。実は「ボーイフレンド」は(おそらくは男女間の)セックスのことを歌った歌だというのですね。
 流石にそれは考えすぎか勘違いではないか、プロデューサー氏は大ベテランだし、それ故若い世代の感覚を捉えきれていなかったのでは……と最初は思いました。
 まさかなあ、と早速サブスクで「ボーイフレンド」を聞いてみた。ファンキーなバンジョーと、ジャジーでありながらジャズではないブラスのアレンジ…。名曲です。
 ワンコーラス終ったところで、半信半疑だった自分は既にイスからずり落ちそうになっています。フルコーラス聞き終わったら……「本当だった!」。
 そうなんです。言われてみればそうとしか思えない。細かい歌詞を書いていくと著作権に触れそうなので、実際に聞いてみてください。普通の感覚では難解な歌詞ですが……。テトラポット(ド)には性的な意味があるのかもしれない。これ以上はお上品ブログでは(もういいか)。

 P氏は、当時aikoさん所属のレコード会社に在籍しており、実際にファン層の調査結果を見られる立場だったそうですが、アーティスト・aikoにはデビュー時から女性の厚い支持があったそうです。たぶん男性にはわからない様々な隠喩や表現が、無意識に女性リスナーに刺さっていたのではないかという分析でした。その上で、「ボーイフレンド」の意味を見抜いたのですね。

 いやあびっくり、こういう歌詞は男性作家にはまず書けないなあ、と。もちろん優秀な作家はいますが、これは相当厳しいんじゃないか。
 自分なんかは、てっきり海辺でじゃれ合うカップルの心象風景を歌った歌だと、(なんとなく)思っていましたが。
 作曲家としてのaikoさんは、プリミティブなテンションノートをメロディに(たぶん感覚的に)組み込むのが上手い、やはり特異なメロディメーカーですからね。普通は「当たる音」は不快だから、コードの中では避けるんだから。それでこの歌詞だと、確かに曲全体として非常に官能的に聞こえます。

 いやはや久々に、楽曲そのものに驚いた出来事でした。今さらですが’00年代J-POPのひとつの頂点ですね。

(実際、同種の考察がググると散見されるようです。そしてMV見たら、これが面白い。流石にお金掛かってますw)

70年代と現代

 最近ボヤッと思っているのは、1970年代の雰囲気って、実は今と似てないかってこと。
 もう半世紀前なのが信じられないが(w)、当時って終末論ブームがあったんですよ。核戦争だったり、食料危機やエネルギー危機だったり、疫病・公害・オカルトetc。世界が何らかの原因で破滅するんじゃないかって盛んに言われていた。あの重苦しい不安な感じが、今とかなり似ている気がする。少なくとも70年代に子供時代を過ごした自分はそう思える。
 核戦争については米ソが実際核ミサイルを突きつけあっていたし、石油危機が本当にあったし、オカルトではノストラダムス予言本がベストセラーになったりした。幽霊や超能力を扱ったTV番組も盛んに放映されていた。

 時代としては終戦からがむしゃらに復興した60年代が終り、少し日本も生活に余裕が出てきた頃ですね。高度成長期真っ只中、バブル前の「古い日本」が残っていた時代です。そして思い出した、インフレまで今とドンピシャ同じ。
 それでもまだ、「終末」はやってくるかも……という漠然とした不安感に留まっていたのが70年代でした。現代は、上に書いた多くのことが現実になってますね。地球温暖化も、昔は科学本なんかに盛んに載ってましたよ。
 70年代の「不安」が現実になっているのが2020年代といえるでしょう。なんせ未来は今よりもっと悪くなる……こんなのがコンセンサスの時代ですから。

 ここまでがいわば「大きな物語」です。では楽曲を書くという「小さな物語」の中では、僕らはどのように「今」の時代に向き合っていくべきでしょうか。
 いきなり抽象的になったけど……これは正直、「わからない」としか言いようがない、実は。色々と手探りで曲を作ってリリースしてるけど、それで答えが見つかるわけじゃない。
 ただ、書き続けていると確かにわかってくることがあって、制作技術的な面は別にしても、「ああ、こうやると時代に合った曲が出来るんだな」というのは少し見えてくる。それはもう、ぶっちゃけ優秀な若い人を連れてきて歌わせる、ってのもありますが、書き手の姿勢としてもどこか「大きな物語」を意識していたほうが良いと思えます。どこがどう、とは中々言えないんだけど、時代と呼応するような部分があった方が良い曲になるんでしょう。

 例えばYOASOBIの「夜に駆ける」も「アイドル」も実は暗い内容の曲ですね。それを癖のない爽やかな女性ボーカルに歌わせたのが非常に面白いといえる。そんなところはやはり大きな物語の中にあるわけです。

 とまあ、とりとめもなく書いてみました。最後にひとつ、今の制作環境や制作体制が、あとで考えたら時代を象徴するような要素になっているかもよ? ちょうど70年代の制作環境が、今ではもう再現できないように。

(追記:コンピュータ(AI)の叛乱、国民総背番号制度、監視社会って予想もあり、全部当たっている…)

70年代アイドル

 Youtube観てたら、麻丘めぐみさんの「芽生え」のMVらしきものが出てきてびっくり。AIフェイクじゃないなら(w)、本人歌唱しょうね。MVっていうか「歌唱映像」みたいなやつで、どこかの公園で適当に(と言っては失礼だが)撮ったように見えます。1972年だからあきらかに映像の質感がフィルムです。(この時代はMVが重視されていなかった)
 面白いのは、赤いセーラー服風の衣装なんだけど、今のアイドルが着ててもおかしくない感じ。この頃から何周か回ってまた新しいのもしれない。これまだハイティーンの頃だと思うけど、今の目線で見ても大人っぽいんだよなあ。当時のアイドルはみんな歌唱力ありました。音源の通りに歌えるもんね。(歌番組もたくさんあり、すぐに生歌を聞いて確認できた) 歌が歌えない人はそもそも歌手になれなかったので。

 歌詞の中に、「神の裁き」なんて言葉が出てくるけど、これは一応当時の女子のリアルだったのか。悪い人に騙されて染まったら裁きを受けるでしょう……みたいな流れです。もちろん男性目線も入っているでしょうが、こういう歌が出てきても不自然でないくらいには、時代の雰囲気としてあったのかも。それに比べると歌に限っても現代は随分開放的で、女性が強くなりました(w)。

 当時、まだ子供だった自分も麻丘めぐみさんを番組でよく見てましたが、ものすごくキレイだけどなんだか危ない感じ(すぐ騙されそう?)なお姉さんだな……という印象でした。
 その後、すぐに一度引退してしまいましたが、アイドル歌手は20歳で引退するのが暗黙のルールだったので、そういうものかと思ってました。(結婚引退か、あるいは普通の歌手にランクアップするかの二択が多かった)
 いままた姫ちゃんカットが流行っているそうですが、確かに70年代ファッションはシックでカッコイイ。映像がすぐ見られるから、古いものがなにかの拍子に再評価されやすい、面白い時代になりました。

(と、ここまで書いて気付いたが、麻丘めぐみさんの「危うい雰囲気」に当て書きで、「神の裁き」という歌詞ができた可能性がありますね。作詞は千家和也さん、作曲は筒美京平さんの黄金コンビ)

9月の雑記

 恐怖の夏太り現象。ギリギリ回避してるが、なぜか毎年酷暑の時期に限って、太る傾向っていう下手な怪談より怖い話。ググって知ったが、これって実は正常な身体の働きなんだって。医療系のWebによると、体温を超えるような気温になると、もう身体が糖分等を燃焼させて体温を維持する必要がなくなるので、食事量は同じでも栄養が余ってしまう。しかも暑いから運動しない、アイス等甘いものを食べる、体力つけようと肉や栄養高いものを食べまくる……。これで太る。むしろこの時期は食事を絞った方がいいらしい。毎日体重計と睨めっこ、500g増えたら悲鳴です(w)。

 少し前の話。Youtubeを見てたらおススメに、ABBAの曲を欧州のオーケストラが演奏した動画が出てきた。オケは小編成で、コーラスが50人くらいかな? 要所要所でコーラスが歌う感じでなかなかのアレンジでした。逆に100人コーラスとフルオケのもあったが、これはずっと歌わせていて失敗だと思った。キレ味ゼロ、ただのフルオケ伴奏曲。一番凄かったのが、本家スウェーデンのローヤルミリタリーブラスバンドの「ダンシング・クイーン」。アレンジも演奏も完璧。元々ディスコ曲だから、強力なリズム隊がいるブラスバンドに合うんですね。どうもクラオケがABBA曲を演奏する機会が欧州は多い雰囲気。愛されてますね。

 「解決」しないSus4問題。この場合の解決とはコード進行の流れのことです。サスペンデット4thコード、70年代くらいまでは洋楽も律儀に普通の3度に解決してましたが(カ-ペンターズもあったな)、80年代頃から解決しないで独立したコードとして扱われることがちょくちょく出てきた様子。メジャーでもマイナーでもない不思議な響きなんですね。構成音に4度が入ってるから、4度堆積和音のカラーが映りこんでいると思っています。自分もボカロP時代から、頑固に解決しなかったな(w)。やってみるとわかるが、解決するとなんか陳腐、手垢のついた進行感なんですね(それでも合う時はあるよ為念)。たぶんまだ可能性のある和音。

音楽ジャンルとミーム

 昔のムード歌謡曲をアレンジし直していた時の話。元の編曲がそれはもう見事なアレンジ(+演奏)で、本当にさりげなくお洒落なことがしてある。メロやコード拾っている最中に思わず「いいアレンジだなあ」と3回位呟いたほど(w)。むろん演奏は全て生で、スタジオストリングスやブラスを使いまくり。でもベタな使い方ではなく、力抜いてさらりと。
 で、拾ったコードをみると、ほぼトライアドだったりして、多少メロディック&ハーモニックマイナーや、ブルーノートが入るくらい。これでジャズのフレーバーがしっかり入っていて、アレンジワークの妙を見せて貰った感じ。テンションとかテトラド関係なくこんなにお洒落になるのかと。

 で、これならリハーモナイズ不用で新アレンジ作れるとふんだ。リハモすると、曲のイメージが大きく変わってしまいます。コード進行は楽曲の基礎工事部分だから。
 そのまま作り始めて、もう少しジャズっぽくしてみようと色々と、ちょっと楽器やハーモニーのヴォイシングを変えただけなのに、結果今度はドン引きするくらいジャズになった(笑)。なぜなのか。

 結局これって、音楽ジャンルのミームのなせる業という仮説を立てた。ミーム、つまり文化的遺伝子ですね。コード進行と同程度か、あるいはそれ以上の影響力があるかも。新発見。
 振り返ると新アレンジはリズムをスイング風に強調したり、譜面には出ないところでも無意識にミームに従っている。(ただしラテン色も入れたので、そんなに単色には染まってないはず)
 自分もジャズを聴いてきて、こんな時はこんなフィーリングで……(大意)ってわかるので、当然そうしますからね。

 ジャズというと、みんな音楽理論ばかり血眼になって勉強するけど、たぶん同じくらい総合的なミーム、そしてリズム・グルーブも大事なんだな、と思った次第。
(ストランヴィンスキーがジャズの譜面だけを見て書いた、トンデモジャズ曲ってありましたね。あれもミームを意識してないからそうなる。音楽マニア的にはとても面白いがw)