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「ラジオスターの悲劇」の悲劇?

 1980年発表の、ザ・バグルス「ラジオスターの悲劇」(Video Killed the Radio Star)という曲があります。僕ら世代あたりの諸氏は全員ご存知でしょう。日本でも世界でも大ヒット、シンセや女性コーラスを取り入れたポップなサウンドと、ラジオボイス加工のトレヴァー・ホーンのボーカルも印象的な、メロディアスな楽しい曲です。

(イギリスでは1位だったが、アメリカは40位だったそうで意外)

 この曲は、実はミュージックビデオ番組「MTV」が初めて流した曲だった……という話を、前回書いた映画「素晴らしき映画音楽たち」で知りました。皮肉というか、なんともアイコニックな出来事だったんですね。
 そしてもうひとつ、このビデオクリップに、意外な作曲家が出演していたという事実。今や世界的な……。前回を憶えている方はもうわかったと思いますが、ハンス・ジマーなんですよ。

 なぜか自分の反応は「うわーっ」だったんですね(w)。意外すぎるというかなんというか……。映画でそのシーンが流れていましたが、今と違ってスリムな青年で、言われなきゃ絶対わからない。(現状随分貫禄付いちゃったから…)
 クリップの後半で、2ndキーボードとして登場します。なんとバックにそそり立っているモジュラーシンセは、moogじゃなくてRolandのSystem700ですね。(欧州で売れたというのは本当だったんだな) その前にはコンパクトなSytem100mがあって、そのキーボードを弾いてます。まあSystem700は一本もパッチされてないから、音出ないが)

 それでも嘘かもしれないと思って、Youtubeで「ラジオスターの悲劇」のクリップを見たら、確かにそのシーンありました。コメント欄でジマー出演を書いている人がいて、やっぱり悲鳴が上がっている(w)。なんだろこれ、別に黒歴史じゃないはずだけどね、むしろ超有名曲だから栄誉…。

 映画の中でこのことをバクロしてた業界のオジサンも、あの人昔こんなことしてたんだぜーみたいな、半笑いでコメントしてたから、やっぱり海外でも意外で面白いと思われているんでしょう。いやー人に歴史あり、それにしてもよりによってラジオスターの悲劇とは、なんとも強運をお持ちですね。

 この曲からすっかり売れっ子になったトレヴァー・ホーンも現役らしく、最近のライブがYoutubeでたくさん出てきます。80年代のアーティストがまだ頑張っているのは僕らも心強い限りです。(この人はプロデューサーとしての活躍の方がデカいようです)

10月の雑記

 弊社の公式インスタはただのアルバムジャケット置き場となっていますが、フォローしている海外アーティストの投稿を時々見てます。そんな中にテイラー・スウィフトがいますが、先日流れてきたライブ映像で、ギター一本で歌っていたやつ。普段よりダーティな歌い方をしていて、カントリーなんですね。この人のルーツは伝統的なカントリー、日本でいえばド演歌みたいなものだから面白い。いずれにせよ泣く子も黙る本格派で、バックグラウンドがこうだから音楽マニアも悪口はいえないんだよなあ(w)。

 庭仕事の新兵器、ハンディチェーンソーを導入。床屋の大型ドライヤーくらいのサイズで、アマゾンでおすすめ中国製7000円。日本製を捜したが、3万以上もする。しかもメーカーのリョービが京セラに吸収合併されていた。で、このチェーンソーのいいところはバッテリで動く。直径10cmまでの木ならサクサク切れます。稼働時間長いし、予備バッテリ付属品豊富。こりゃ日本メーカーは敵わないはずだ。木を切ったあとの解体も時間かかるので、大活躍中。ただ本体が軽い分、すぐに撥ねるので危険。なんにせよ文明の利器スゲー。のこぎりに比べて効率10倍以上。

 Protoolsで信じられない挙動。バウンス(WAV化)していたら、出来上がったトラックにノイズが入りました。ただのソフトウェア処理なので、原理的にはないはずなんですけどね。レコーディングしてたならわかるが。他のDAWで同現象は聞いたことないし、自分も初めてです。いやー怖いなこれ。業界標準なのに、世界中のスタジオが騙し騙し使っている感じなのか。なんだかWindowsと似ているね。アップデートするの毎回恐々だもんね(w)。尚背後で重い処理を行っていたわけでもありません。ただ流石に類似挙動はググっても出てこないので、弊社PC特有かも。いずれにせよトラックはよくチェックしましょう。

9月の雑記

 恐怖の夏太り現象。ギリギリ回避してるが、なぜか毎年酷暑の時期に限って、太る傾向っていう下手な怪談より怖い話。ググって知ったが、これって実は正常な身体の働きなんだって。医療系のWebによると、体温を超えるような気温になると、もう身体が糖分等を燃焼させて体温を維持する必要がなくなるので、食事量は同じでも栄養が余ってしまう。しかも暑いから運動しない、アイス等甘いものを食べる、体力つけようと肉や栄養高いものを食べまくる……。これで太る。むしろこの時期は食事を絞った方がいいらしい。毎日体重計と睨めっこ、500g増えたら悲鳴です(w)。

 少し前の話。Youtubeを見てたらおススメに、ABBAの曲を欧州のオーケストラが演奏した動画が出てきた。オケは小編成で、コーラスが50人くらいかな? 要所要所でコーラスが歌う感じでなかなかのアレンジでした。逆に100人コーラスとフルオケのもあったが、これはずっと歌わせていて失敗だと思った。キレ味ゼロ、ただのフルオケ伴奏曲。一番凄かったのが、本家スウェーデンのローヤルミリタリーブラスバンドの「ダンシング・クイーン」。アレンジも演奏も完璧。元々ディスコ曲だから、強力なリズム隊がいるブラスバンドに合うんですね。どうもクラオケがABBA曲を演奏する機会が欧州は多い雰囲気。愛されてますね。

 「解決」しないSus4問題。この場合の解決とはコード進行の流れのことです。サスペンデット4thコード、70年代くらいまでは洋楽も律儀に普通の3度に解決してましたが(カ-ペンターズもあったな)、80年代頃から解決しないで独立したコードとして扱われることがちょくちょく出てきた様子。メジャーでもマイナーでもない不思議な響きなんですね。構成音に4度が入ってるから、4度堆積和音のカラーが映りこんでいると思っています。自分もボカロP時代から、頑固に解決しなかったな(w)。やってみるとわかるが、解決するとなんか陳腐、手垢のついた進行感なんですね(それでも合う時はあるよ為念)。たぶんまだ可能性のある和音。

QUEEN – LIVE AIDの真実

 先日NHKで放映された「クイーン 21分間の奇跡 〜ライブエイドの真実〜 」を見ました。なかなか面白い話が流れていたので、記憶を頼りに書いてみる。

https://www.nhk.jp/p/anotherstories/ts/VWRZ1WWNYP/episode/te/XLJ6NXRL83/

世界中を熱狂させたライブエイドでのクイーン伝説のステージ。それはたった21分間のパフォーマンスだった!しかしクイーンはこのステージを迎える際、人気は低迷、メンバーの不仲など瀬戸際にあった。あの類いまれなパフォーマンスはいくつかの偶然とつながりの奇跡が生んだものだった。映画には描かれなかった伝説のステージのもうひとつの真実を、クイーンのメンバー、ブライアン・メイとロジャー・テイラーが初めて明かす!

 まず、紹介文にも書いてある通りバンドは非常に厳しい局面だった。人気は低迷、女装MVは大不評でアメリカで放映禁止(w)、南アフリカでライブをすれば、アパルトヘイト支持と取られ社会的批判を受けた(実際は収益の一部を寄付)。

 出演依頼が来たとき、そんな事情もありメンバーの最初の会合では断る方向だった。だがブライアン・メイの証言では、その後の会合で彼自身が、純粋に音楽史上に残るイベントだから出演しようと提案、それが受け入れられたそう。
 あのパフォーマンスのために、クイーンはシアターを貸切で、3日間もみっちりリハをした。
 それが当日の伝説の演奏につながった。ボヘミアンラプソディは、普段はライブではやらない曲で、それをわざわざ一曲目に持ってきたのは作戦だった。
 当日の映像が何度も流れてましたが、なんとダイアナ妃とチャールズ皇太子も臨席していたんですね。時に1985年。

 更にショッキングな事実なんですが、実はライブエイドには当初クイーンは呼ばれない予定だったそう。それはこの運動の呼びかけ人、ボブ・ゲルドフが、クイーンを嫌いだったから(笑)。この人、ブームタウン・ラッツのボーカルだったんですね。世代としてはニューウェイブなので、クイーンのような旧世代バンドを敵視していた。ところが、プロモーターが呼ぼうと提案し、それを渋々入れたらしい。
 当日、会場で演奏を聞いて驚嘆したと、ゲルドフ本人の弁。

 最後にボヘミアンラプソディについて。歌詞の意味が色々考察されているが、フレディとデビュー時から親交のある音楽ライター氏の話では、皆考え過ぎとのこと。単に新聞で殺人事件の記事を見てそれで着想を得たんじゃないか、という。
 同じ質問をロジャーにすると、「ファ(ピー)」というお答えで、インタビュー会場は大爆笑(NHKもノリノリでピー音入れるなよw)。もう数え切れないくらい聞かれて答えたくないらしいです。
 ブライアンは、色々な解釈ができると思うが、バンドとしてはこうという決め付けはしない、という優等生的回答。

 いやー、面白い番組でした。ブライアン・メイは、当時のインタビューも流れていましたが、語り口が今と全く同じ。とても論理的で立て板に水と喋る人で、ザ・理系ですね。博士号を取る予兆は当時からあったわけだ。(今はれっきとした天文学者でもあるので)
 逆にロジャーは、考えながら短く本質的な言葉を毎回捜している感じ、正にザ・ミュージシャン。

 ブライアンの言葉で、僕らは何も名曲を作ろうとしていたわけじゃない、その時どきで(悩みながら)ベストを尽くしてきただけだ、というのが重かった。ハッとさせられましたよ。

ユーミンさんの50年

 NHKで放映された「松任谷由実 ~私と荒井由実の50年~」を偶然見ることができました。
 なんと、ユーミンさんはデビュー50周年なんですね。18歳でデビューだったそう。
 タイトルに荒井由美が入っているのは、意外ですが、ご本人のお言葉では、自分は荒井由美を未だに超えられていない、ということのようです。「エッセンシャルなもの」があって、そこがポイントらしい。

 貴重な映像・写真が流れていましたが、荒井由美時代でいうと、やはりバックに気鋭のロックバンド・キャラメルママが付いたことが大きく取り上げられていました。
 また、アルバム「14番目の月」に入っている「中央フリーウェイ」、この曲はとても重要だったそうで、「この曲があったからここまでこれた」という程のもの。
 コードを探りながらピアノを弾いていて、「この曲はどこに行っちゃうんだろう」(弦央註:調性のことだと思われます)と思っていたが、強引に戻してみたらそれで合ってしまった(註:元の調に)。だから、理論的に計算したのではなく、感覚的に決めたコード進行らしいです。凄いなぁ。(1976年発表、シティポップの嚆矢にして完成形)

 で、このアルバムで”荒井由美時代”が終り、松任谷正隆さんとご結婚されるわけですが……。式の写真を見ながら、「互いの才能を独占したいから結婚した」って当時言っていた、というお話。口はばったたいが、本当に凄いご夫婦です。
 あと、「中央~」でベースを弾いたLeland Sklarのインタビューも流れていました。現役でセッションマンを続けているようで、仙人みたいな風貌になっています。
 曲もアレンジも素晴らしい、ファンタスティックだ、という話のあと、「目をつぶると、オーシャンパシフィックウェイをコンティネンタルで走っているような気分になる」とのこと。言い得て妙。

 また、ユーミンさんは時々夫以外のプロデューサーと組まないのかと質問されるが、として、1曲だけならまだしも、アルバムとなるとお互いのエネルギーを合わせてぶつけていかないと完成しない、その場合夫以外考えられない、ということだそうです。
 番組の最後では、ヤマハのAI・ボカロ技術で再現した荒井由美の歌声とユーミンさんが共演した新曲「Call me back」も流れていました。ちょっとボカロっぽさを残した感じで、それが却って良い結果になっているように思えました。

 まだギリでNHK+で無料配信されているので、皆様もぜひ。(22日夜まで)

https://www.nhk.jp/p/ts/R6R5RGQNJZ/episode/te/J5QXQ92XX1/

ピアノスタイル考

 ジャズピアノ、ロックのピアノ、王道クラシックと、ピアノもジャンルによってプレイスタイルは千差万別ですが、歌伴ピアノ(主にポップス)のジャンルも、歴然としてありますね。
 洋楽ならすぐ思い浮かぶのは、カーペンターズのリチャード・カーペンター。元々は器楽系のピアノスタイルだったのでしょうが、カレンのバッキングでエレピの方も含めて、非常に素晴らしいプレイを聞かせてくれました。兄妹で自作曲なので当たり前ではあるんでしょうが、出しゃばり過ぎず、かといって埋もれてしまうこともなく、ボーカルをプッシュし楽曲を締めています。
 そういえば、エレピはメジャーなフェンダーローズを使わず、ドイツ製ウーリッツァーを、カレンの声質に合わせてわざわざ使っていました。裏方、バッキングに徹する歌伴ピアノの鏡といえる行き方でしょう。
 で、歌伴ピアノの人が器楽曲を弾くと、これがまた非常に面白い響きになって、インスト専業の人とも違うし、なんというか正に歌心のあるプレイで、ハマると非常に素晴らしかったりします。

 しかし先頃Youtubeの演奏動画で拝見した、歌伴ピアノが主な領域の方の、クラシックの名曲。これはちょっとタッチの印象が硬かったかな? あ、でも練習って書いてありましたか。この曲、譜割りは簡単なのに、意外と演奏として成立させようとする難しいようですね。皆が知っているし、録音もたくさんある。ピアニスト独自の物を出すには却って苦労するはずです。
(でも先頃のアルバムでのピアノは良かったと思いました。正しく、歌伴スタイルのスイートでポップな完成度)

 そういえば、ピアノを弾きながら歌を歌う……ってスタイルのシンガーソングライターも居なくなりましたね。(まあサブスク用にコンプでペチャンコになったその種の曲は聞きたくないが。まさかそんなところでもサブスクの悪影響があるかも?)

ディスコの名曲2

 アース・ウィンド&ファイアーの「ブギー・ワンダーランド」のCDをとうとう棚から発掘して(w)、ステレオコンポで聞いてみたが、やっぱりええわ~。演奏もむろん最高だが、ミックスが良い楽曲なので、音量を上げても全然うるさくならない。
 逆にミックスが悪い曲は、小さい音でもうるさく感じるし、大きくしたら聞いていられません(騒音)。実は音圧を上げすぎると、もれなくそういう状態になる。(現代の多くのポップス曲は、だからコンポで聞くことを想定していない、ということでもある…)

 それにしても、ちょっと前も書いたが、共通クレジットされているジ・エモーションズのコーラスワーク、もう信じられないくらいの冴え。局面によっては、モーリス・ホワイトのボーカルを喰ってしまっているような…。決して添え物コーラスではありません。
 そしてコーラスに煽られるように、リズムセクションも後半にかけて熱狂してゆく。

 エモーションズ単独名義の曲も聞いてみたが、普段はもっと力を抜いたムーディなコーラスをしているので、ブギー…の時が特別だったみたい。心技体じゃないが、何かの周期で全ての頂点がこの日に来てしまったか。それを見事にテープが記録した、正に録音芸術が完成した瞬間ですね。

 その意味で、曲のクレジットでfeatでもwithでもなく同格の「&」でEWFとエモーションズが結ばれているのに、心底納得です。

 この曲、1979年だから無論普通にレコードで発売されたんだが、EPだけじゃなく、LPサイズのロングバージョンも出たって当時聞いて、仰天したなあ。今だと珍しくないが、そういう文化がアメリカのダンス音楽にはあるのか、という驚きでした。カッコ良すぎでしょ。
 実はそっちもCDで持ってるが、長い分それだけ展開も多彩で、踊れるようになっています。全体的な印象だけど、ちょっとEP版よりクールかもしんない。
 「Let’s Groove」にも12インチ版はありますね。