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Eギターのミックスで気付いたこと

 といっても例によって打ち込みですが、エレキギターというものはアンプと組み合わさって初めて一個の「楽器」となるわけですね。正確にいうとアンプと(ペダル)エフェクターか。
 今の音楽制作だと、ご存知のない方は驚くと思いますが、ギター音源はギターのほぼ生音そのまんましか入ってない、それに本物と同じように、プラグインのエフェクターやアンプを繋げ、それをマイクで拾う、というところまでパソコン内でできてしまう。こうすると、打ち込みかリアルかの判別は非常に困難といっていい、ベタ打ちじゃない限り。特に歪ませてしまうとまあ判別不能。(それでも微妙なニュアンスや、音の揺れやノイズなどで、結局は本物が一番なのも事実)

 で、こうなると実際と同じように音作りをしなければならないわけで、リアルな分面倒といえば面倒(この分野にもプリセットはあるが)。
 今は打ち込みのことを書いたけど、別段アンプシミュレーターは本物のギターに使ってもいい。リアルタイムの音出しにも、録音にも使えます。というか、今の主流はこっちの用途の方が大きいのかな? エフェクターやアンプを持ち運ばなくてもノートパソコンがあればそれで済んでしまう(やや簡易版だがスマホ用もある)。

(ここからいきなり作曲勢にしかわからん話)
 で、最近少しづつアンプシミュをGuitar Rig5からAmplitube4にしてみてるんだけど、アンプリはリアルで確かに音がいいんだが、その分結局ミックスで苦労するんですわ。Guitar Rigは、作曲中に音を聞くとなんだか冴えない音抜け悪い感じなんだけど、ミックスするとかなりハマる。だから用途が違うのかもしれんね。アンプリはリアル用、ギタリグは打ち込み用の製品じゃないのかしらん。イタリアvsドイツで、音にもお国柄が出てる気がする。アンプリはスカっといい音だが暴れ馬、ギターリグは糞真面目なドイツ人のカチコチ感がある。
 それでも流石にギターリグは音をもう少し何とかして欲しいって思う時があるから、両者のちょうど中間くらいの製品があったら嬉しいんだが。Ver6に期待か。
(BIASもリアルな分、ミックスで苦労するのかな?)

 ちなみにWavesのアンプシミュは、なんだか無印駄アンプの音がして、それはそれで嫌いじゃない(w)。世の中ブランド製品じゃないのも欲しい時があるじゃないですか? 根無し草なのはイスラエルだからか。あとストンプは意外と出来がいいです、皆持ってると思うから一度試して下さい。(これもなんかのモデルって感じじゃないが)

 悩める秋の夜長に。

ミックスTIPS: ボーカルの位相ズレ

 たまには気紛れに実用的なTIPSシリーズ。
 この前のデモ曲で、ボーカルトラックを処理していて気付いたこと。どうも一箇所、位相が狂っているのか、フレーズの最後の部分で、フランジャーが掛かったような音になってしまう箇所がありました。
 変なコンプを強めの設定でかけるとこうなりがちだけど、その時はWaves CLA-2Aとか筋のいいやつしかプラグインチェインの中になかった。
 案の定これをオフにしても同じだし、EQはこれまたかなりインテリジェントなRenaissance EQ、試しにOFFにしても同じ。それでなんだろうと色々と試していた。

(ボーカルトラックの処理は、一番気を遣う箇所です。人間の耳が最も聞き慣れていているのは人の声なので、少しでも変なところがあるとリスナーはすぐに不自然だと気付きます。今回のは放置できない)

 この時も10本程度はプラグインがぶら下がっていました。
 最終的に、犯人は意外なヤツでした。それはDeEsser。これも特殊用途のコンプなんですね、「サ行」の音みたいな気になる音の周波数帯だけ瞬間的に圧縮して軽減します。これが効き過ぎていて、位相が乱れてしまっていたわけ。

 さてどうしたもんか、スレッシュルドを上げると軽減がぬるくなるしな、と思ったのだが、そういやRenaissance DeEsserがあることを思い出し、こいつを挿したら一発で止まりました(w)。やっぱりルネッサンスシリーズは、内部でかなりインテリジェントな処理をしてるんですね、超便利。
 こいつとDeBreath(ブレス軽減プラグイン)は有用なので、もし未使用の向きは使った方が良いです。ほぼ何も考えなくても破綻せず使えますからね。
(まあブレスノイズは必ずWav編集で消してるけど、消せないやつもある)

 他にこの曲だと、特定箇所でエレピの音とボーカルが重なって波形合成現象らしきものが起こって、ブッチ音が発生した、これも2mixに落とすまでは発生しなかった現象。それでミックスにもどって、ここだけエレピの音を一瞬絞って解決した。こういう変なことが、ミックスをやっていると時々起こります。このあたりは本を見ても書いてないし、自分で原因を予想して対処していくしかない。
 ミックスがエンジニアリング(工学)の範疇だといわれるのもわかりますね。

コンプレッサー小論

 最近ミックスしてて気付いたこと。

 ミックスダウンの必需品といえばコンプレッサー。本来はトラックごとの音量感を揃えたり音圧を出したりといった用途のプラグインですが(ハードもあるけど)、最近ではもっと積極的に音質を変えたり、アタックやリリースを調整してノリを変えたりと、音作りツールとしての価値の方が重要視されてる。いわば音の色付けですね。

 そこで、スタジオにあるハードコンプをモデリングしたプラグインが多種多様作られ大人気なわけですが、これらはかなりはっきりと色の付くものが多いように感じます。もしかしたら本物より更に本物っぽい、って言い方も変だが、ちょっとマンガチックに誇張されているものもあるんじゃないだろうか。でないとユーザに文句言われそうだもんね、効果がはっきりしない、なんてね。
 で、それはそれで使う方もわかっていればいいわけで、実際自分も大好物で、打ち込みの楽器をリアルにしたい時に大変効果的だったりします。これは宅録したハードシンセに使っても同じ効果がある、宅録のシンセ類は音がやっぱりアッサリ綺麗すぎるのですね。

 ところが、以前も書いたが、これらのモデリング系コンプをソフトシンセに使うと、ソフトシンセの良さが死んでしまい、まるでハードシンセの音みたいになるんですわ。これは実機モデルのEQやチャンネルストリップでも同じ。前々から薄々感じていたが、今回色々試してみて確信した。面白いもんで、あれだけ技術の粋を集めた実機モデリングが、完全無駄で有害なものになってしまう。
 ソフトシンセって、なんのかんのいって「デジタルな美しさ」があるじゃないですか? 歪み感や汚れとは無縁の無垢で澄み切った感じ。作曲勢の皆様ならわかりますよね(w)。
 これはこのまま活かしたいわけで、となると実機モデルなんてもってのほか。コンプなんかWaves C1でいいし、EQなんかQ10でいい。なんならどっちもDAW付属のやつで充分。余計な色づけは一切ない方が望ましいのです。

 面白いですねえ、ソフトシンセってのはパソコン内のみの“生命体”だから、実機のしがらみ?なんかで汚さない方がいいんだな、こいつらは。逆にハードシンセ風にしたかったら実機モデル使えばいい。
 今風の打ち込み曲だったらこれでOK、今はプラグインも多種多様だから、適材適所で色々と使い分ける必要があるわけです。これらは全て最終的には良い音をリスナーに届けるための工夫。

 作り手としてはリスナーにkneeと微笑んで欲しいわけですね、コンプだけに。
(わかるかな~?w)

「ブルーライト・ヨコハマ」の秘密

 いつか聞こうと思い買ってあった古いレコードが何枚かあり、その中に「園まり」のアルバムがありました。調べたら1969年発売のものらしいが、今でいうカバーアルバム。昔の歌手はカバー曲をよく歌っていて、オリジナルアルバムでも半分くらいカバーとか良くあった、しかもほとんどアレンジが同じとか。
 まあそれはいいとして、この中に「いしだあゆみ」の大ヒット曲「ブルーライト・ヨコハマ」が入っていて、懐かしいなあと思い聞いてました。
(今じゃすっかりブルーライトは悪者だけど、港の照明のことだからね)

 さすがに当時は自分も幼稚園に行くか行かないかの子供(w)。ほんと日本人なら誰でも知ってる、という位の流行りようで、「ものすごくきれいな大人のお姉さん」がおしゃれで都会的な歌を歌っているなあ、と、無論そんな言葉も知りませんでしたが、あとから思い返してみればそんな印象。(その後何年も歌番組で歌われていて、そっちの記憶だろうなあ)

 で、園まりのブルーライト・ヨコハマも良かったのですが、やっぱりアレンジがほぼ同じ感じ、しかもボーカルのエコー処理まで同じ、それで「おっ」と思った。
 原曲を知っている方は思い出してみてください。ボーカルに独特のクリアなエコー(ディレイ=やまびこみたいな残響)が掛かっていませんでしたか? あれでかなり曲の印象がお洒落になってると思いますが、まだ1968年ですので、ハードのデジタルディレイなんて絶対ありません。テープレコーダーの技術を応用したテープディレイならありましたが、やはりこんなクリアな音は出ません。
 では、このディレイの正体は何か? なんだと思いますか?(笑)

 これが今回の本題ですが、ほら、やっぱり分析始めちゃうんですよ。
 で、まあ、答えをいうと、これがエコー・チェンバー(ルーム)だったんですが。

 床や壁をタイル張りにして音がよく反響する小部屋を用意します、その中にスピーカーとマイクを入れれば、はい!エコーチェンバーの出来上がり。あとはボーカルだけスピーカーから流してマイクで拾えば、あのクリアなディレイが得られるというワケ。昔はこんな苦労してたんですね、今からするとアナログで物凄く面白いけど。
(このあと鉄板を使ったプレートリバーブや、スプリングリバーブが開発される)

 海外の古いスタジオにはまだ現存するところもあるらしいが、国内にはもうないでしょう。(お大尽のプライベートスタジオならもしや?)

 実はこれ、なんで気付いたかというと、どこかにミキシング話が載っていたわけでもなく、音でわかったのですね。

 最近、またまたWavesのプラグイン、「Abbey Road Chambers」を買いまして。はい、もうオチが分かった人もいると思いますが、これのデフォルトの音がブルーライトヨコハマのディレイとほぼ同じ(笑)。本当に同じ質感なんで、びっくりですわ。エコーチェンバー再現を目的にしてるとはいえ、よく出来たプラグインだなあ、と。流石世界のARスタジオは期待を裏切らない。
 こんなやつです(↓)。部屋、ありますよね。柱は定常波による一種のハウリングを防ぐためのもの。

 50年からの時空を超えて、こんな形でブルーライトヨコハマの謎が解けるとは。という、ファンタスティックな話でした。まあ諸先輩方には常識だったかもしれませんが。

(この曲、Wikipediaによるといしだあゆみさんの26枚目のシングルだそうで、嘘でしょ?当時二十歳そこそこだし……と思ったら、15歳位でデビューし、「毎月」新曲を出していた時期もあったらしい。恐るべし高度成長期の音楽業界! 80年代アイドルの3カ月新曲で驚いている場合じゃない。ってこっちの方が秘密っぽいか)

(思い出したが冨田勲先生が、「新日本紀行」のテーマ曲で柏木に非常に長いリバーブが欲しくなったとき、エコーチェンバーでも足りず、NHKの施設ビルかなんかの階段室で同じことをやった、という話は有名ですね。あの驚異のロングリバーブは、当時謎だったらしいですわ)