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ABILITY3.0導入

 自分が使っているDAWは「ABILITY Pro」ですが、こいつがこの度ver.2.5から3.0になりました。ちょうど案件の合間がきたので、インストールして試してみました。追加された機能は、興味のある人は公式HPでも見て頂くとして……(いるのか?w)。
 第一印象として、起動時間や動きが機敏になった。これはverが進むに従って速くなっているので、なかなか頑張ってる。あとオーディオエンジンが刷新されてるらしく、高域クリア・音抜けが良くなり、低域はしっかり締まった感じに。かなりの高音質化の印象。正直、もうそんなに追加するような機能もないんだけど(今回の目玉はコードパッドくらいか?)、これは地味に嬉しい。ミックスやマスタリングが捗りますわ。

 で、コードパッド関連でもあるけど、画面からワンタッチ入力できる和音の種類が増えていて、augM7も対応していた。スマホのコード入力アプリなんかだと大抵入ってますねこれ。増えたコードは、

augM7 (M7+5表記),m(b5),7(b5),M(b5)

 アプリでありがちなsus2はまだないのであった。sus2、別の言い方だとadd9 omit3ですか。これもあればあったで使えそうではあるが。
 これらの和音は理論書を見ても出てくるわけでなし、まあ変化和音というタイプのやつですね。多くは経過和音的につなぎで使ったりすることが多いかな。あるいは似た和音の代用か。
 正直、aug7は響きがキツイのでなかなか使いどころが難しいですが、augM7になるとかなり楽になりますね。今書いているデモ曲で意地で両方使ってやったけど(w)。

 こういう和音は、昔の曲では出てこないんだけど、やっぱり現代の作曲者は使っていったほうがいいですね。同じことばかりの繰り返しに陥らないために、理論からはみ出したところでちょっと何かやっておくと(曲の一箇所だけでいい)、そこがアクセントになって現代的な楽曲になるはず。
 まあ、といってもコード進行が全てを決定付けるわけでは決してないです、楽曲の設計図だよな。設計図が不良だと完成した建物(曲)もそれになりになるのは事実ではあるけど。

 ところで、DAWなのでもちろんマイクやラインからの録音にも対応しているわけで、今度試してみたいのがパーカッションの録音。となると防音が問題になってきます。
 某有名アニメレーベルは、インディーズ時代は、自社スタジオは普通の民家だったそうですね。ボーカルブースもベニヤ板の手作りで、布団を四方に敷き詰めてあったらしい(当時歌を録音しに行った人がどこかに書いていた)。宅録なら見栄えを気にする必要もないわけで、簡易防音ならこれでOKっすな。スタジオに行ってもいいんだけど時間が惜しい(w)。こんなことを書いていても結局最後は打ち込みになりがちだな……(今の音源は音いいからね)。今後の研究課題。

面白バンド、カーペンターズ?

 久々にカーペンターズのアルバムの感想、「PASSAGE」という1977年発売オリジナル作品です。ネタバレ前に(後述)、実は「Two Sides」という曲を目当てに買ったのですが、これが大当たり。参加ミュージシャンは驚くなかれ、リー・リトナーとジェイ・グレイドン。二人ともアコギを弾いているのですが、ぐっと抑えた甘いプレイ、素晴らしいとしか言いようがない。フュージョンとAORが最も新しく勢いがあった時代の、二人のキーパーソンのツインギター。カレンの歌声も後期なので最高に深みがあり、更にもう2本Eギターがアドホックに入ってくるんですが、まあシングルカットしなかったのが不思議なくらいの曲。カントリー風のAORといえるんじゃないかな、これは。

 カーペンターズは活動拠点がLAだったので、やっぱりLAのミュージシャンと交流があったのですね。これは嬉しかったなあ、カレンもドラマーとしてもかなりの腕前だったので、全盛期の彼らをバックに歌えて相当発奮したんじゃないかな?
 とりあえずこの1曲だけでお釣りがくるので、あとのことは目を瞑ろうという気になります(……そうなんです)。


 さて、ここからネタバレですよ。知っている方は知っているんだろうけど、このアルバム、リチャード・カーペンターが悪い意味でイタズラしまくった作品で(笑)、いやほんと、とにかくヒドイ。

 実は、自分はこれを今年の1月1日に聴いたのですが、とにかく元日からとんでもない目に遭いました。思えば去年の元旦はボズ・スキャッグスの「MIDDLE MAN」を聴いていい意味で腰を抜かしたんですが、今年は悪い方(?)で……。

 まず1曲目。聞き始めたら、なんか曲の定位がおかしいのです。ステレオじゃなくモノラル、それも完全なモノじゃなく、微妙に音の広がったモノラル。完全モノならそういう曲かと思うんですが、これじゃ、あれ?おかしいな?ヘッドフォンの不良かな?となる。それで何度もプラグを抜き差しして、曲聞いてるどころじゃないですよ。
 ヘッドフォン叩いてみたり、コードをくねくねさせてみたり、それでも直らず、そうこうしているうちに1曲目が終ってしまうわけです。で、2曲目。いきなり定位が普通のステレオに戻ります。……ん?
 あっ!やりやがったな、リチャード! なんと、ミックスでわざと擬似モノラルにしていたのです! な、なんちゅうことさらすねん。元旦からプラグ抜き差しして間抜けな心配してたこっちの気持ちは? ……ということです(笑)。ね、酷いでしょ(はぁ)。

 たぶん発売時は、世界中の音楽ファンが騙されたと思います。特に当時はアメリカを中心に大型ステレオコンポブームだったので、世界のオーディオファンがスピーカーやアンプの故障かと、ケーブルの具合を見たりスイッチを入り切りしたでしょう。それで2曲目で騙されたと気付くのです(笑)。リチャード、なんちゅう悪人や。
 これで終わりかと思っていると、これがね……。

 純然たるクラシックのような、男性声楽によるワーグナー風のオペラが始まったり(さすがに後半はカレンが出てくるけど、フルオーケスラ曲)、これなんとミュージカル「エビータ」のカバーなんですね。このオケはLAフィルだそう。(Overbudget Philharmonic=予算オーバー交響楽団という酷いクレジットになっているw)

 DJがラジオでリスナーと電話していたら、なんと、相手がワレワレハウチュウジンダ、だったりして(本当にこういう曲、ドラマ風。カバー)、映画「未知との遭遇」もこの近辺の年だったかな?まあ、しっちゃかめっちゃかな内容。よく発売できたなこれ、と心底あきれる。

 歴代のアルバムの中でもアメリカではかなり売れなかったらしいけど(笑)、それまで頑張ったからA&Mもご褒美代わりだったのかも。逆にジャぱんとエゲレスでは結構売れてしまったらしい……おい変態島国いい加減にしろ(笑)。両国とも性質の悪い音楽ファン多いな、すげえわ。

 ちょっと思ったが、これはビートルズにおける「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」にあたるアルバムじゃなかろうか。カーペンターズがこんな“ふざけた”バンドだったとは、ますます自分の中の評価が高まりました。名曲だけのグループじゃないですね、音楽マニアや作曲勢の皆さんなら、ぜひ聴いて欲しい作品です。

 自分にとっては、もうビートルズに肩を並べるような大きな存在だなあ、あきらかに。
 そのビートルズも悪ふざけという面ではかなりのものだったけど、プロデューサーが行き過ぎたやつは止めたはずです、当然。カーペンターズはリチャードがプロデューサーだから止める人がいないんだこれが(笑)。今回はプロデュースとアレンジに専念、楽曲は外注またはカバーだけ、思い切ったことにしてます。
(念のため、このアルバムはカレンも共同プロデュース)。

 フルオーケトラをバックにカレンが歌う曲もあと1曲入っているので、いわゆる名曲好きな方も楽しめます。

(いやもう、ビートルズでもここまで酷いイタズラはしてないぞ… ←しつこい)

デモ曲追加・英語アコースティックPOPS

An old tired prince met a young princess. This is just a short tale of one kingdom.

“Palace Grace”

 1年以上前にミックスまで完成してたのに、英語曲ゆえ歌ってくれる人がなかなか見つからず、それで今回ようやく公開できた、曰くつきの曲。
 シンガーは、なんとウクライナ在住のArwenさん。Vocalizrというサイトで募集かけました。それまで別のところで交渉したりしてたがうまくいかなくて、最初からこうすれば良かったですわ。プチベルベットで瑞々しい感じ、まさに曲調にドンピシャ。多少メロをフェイクしたり歌詞が違ってたりするけど(w)、まあ今回は雰囲気重視なので。

 英語詩も書きましたが、今回そこで限界見えてしまった。実はネイティブに校正依頼したが、やはり押韻しても外人には奇妙な表現が出てくるようで。もし今後海外でリリースするなら、歌詞だけは誰かにお願いするしかない。

 この曲も民族楽器を入れてますが、曲のイメージとしては東欧あたりの王国のことなので、まさに地元の方に歌って頂けた恰好になります。いやー、ネットの力には今更ながら驚くばかり。もうこんな時代なんですよ。

 理論的には11thのテンションを多用して、寂寥感を演出。

 世界は広い、音楽の力は無限です。
 みなさまの安全・健康を祈念しつつ。

Wall of Sound

「Wall of Sound」について書いてみます。

 直訳すると「音の壁」ですが、要は上から下まで帯域を埋め尽くすようなみっちりとしたサウンド、ビートルズもプロデュースしたフィル・スペクターが得意としたアレンジ手法で、語源はここと言われていますね。
 ずっとこんな音じゃリスナーも疲れるかもしれないが、例えばサビのところでやると盛り上がって効果的です。ただ、フルアレンジされた曲が洋の東西で減って、ギターやピアノなど少数の楽器の組み合わせでトラックが作られるような時代なので、あまりピンと来る人はいないかもしれない。

(ひとつには、予算がなくて楽器を増やせない、という切実な事情はありそう。ならば打ち込みでやればいいよう思えますが、それは好まれないのですね、なぜか。過度の本物志向というか……実際は映画音楽などでも超リアルな打ち込みが使われてて誰も気付かないのですが。アイドル音楽なんてバックはほぼ全て打ち込みだしなあ)

 自分もこういうアレンジを好んで制作してますね、当然’70-80年代の曲はこういうタイプが多かったし。現状、予算がなくフルアレンジが減って、結果世の曲のテイストに多彩さがなくなり、それでリスナーが音楽から離れる状態になっているとしたら、哀しいなあと。もっと(生系の)打ち込みを積極的に使った曲が増えないかなあと思っています(当然、ここに制作屋が一人いますので)(笑)。

 で、まあ、その流れからいくと、世の中不景気な話ばかりではなく、中には運よくプロジェクトに予算がつくこともあるわけで、その時にどう考えるか、です。
 意地でも従来の少数の生楽器スタイルでいくか、それとも打ち込みでもいいから楽器を増やしてゴージャスにするか。
 例えば昔の曲を大切に歌ってきたアーティストさんは、新しいトラックの作成に躊躇するかもしれない。歌のイメージを壊したくない、という想いは当然だし、最大限尊重されるべきものです。もし尊重されてなかったら……それを蹴るのも一案、でも気に入らない部分を交渉で直してもらうのも一案。
 名曲のセルフカバーという扱いであれば、たぶんトラックが昔と違う解釈で書かれても、ファンは納得するんじゃないでしょうか。むしろそれはそれで喜ぶかも……今、少しそういう流れが来ているし。やっぱりPOPSがPOPSらしかった時代の曲は、今聞いても素晴らしいので。
 オリジナルが一番いいのはまず変わらないですし、ミーム(文化的遺伝子)を増やすという意味では、セルフカバーはあってもいい選択のように思います。

 ちょっと脱線したけど、結局打ち込みで作るにしろ、その曲の良さを引き出すようなアレンジでなければならないわけで、そこが発注者側としては心配なのかもしれない。わかってない人間に滅茶苦茶にされる可能性は、やっぱりある。その点昔はどのレコード会社もスタジオにアレンジャーが常駐していたりして、ストリングスやブラスも専門の演奏者がいたから、すぐにトラックを録音できて、品質が高止まりしていた。安心してWall of Soundだろうがなんだろうが制作できたというわけでしょうね。
 で、そんな心配をする位なら、いつものバンドメンバーだけの編成で安心できるアレンジにしよう、ってなってしまう。もちろんそれはそれでいいのですが、結果どの曲を聞いても似たようなアレンジばかりに、というのは音楽の可能性を狭めているような気がします。

 もっと積極的に、確信犯的に生系打ち込みを使ってサウンドメイクをしていくべき時代なんじゃないでしょうか。今のサンプリング音源はほんと芸術品といっていいレベルの品質だし。(特に欧州のデベロッパーが作る音源には素晴らしいものが多い) 
 といっていたら、もう「Bedroom Pop」という概念が出てきているようで、まあこれは長くなるのでまた今度。

コルトレーン大喜利

 ちょっと必要があって、ジョン・コルトレーンの「Giant Steps」をYoutubeで捜して聞いていたら、コメント欄が完全に世界のジャズ野郎諸兄の大喜利状態でした。

 ご存知のない方に、コルトレーンとはサックス奏者でジャズの巨人の一人、Giant Stepsとはテンポが比較的速いのにほぼ一音ごとにコードが変わるという高難易度曲です。また理論的にもかなり面白いことをしているのですが、これに即興演奏を乗せるというのはプロでも至難の業でした。
 この苦行ともいえる演奏、実際何度も録りなおしたそうですね、この時は極限までビバップのルールを追求する方針だったので。(これがモダンジャズの最初の限界、この後マイルスがモードを導入する)

 で、まあそんな高難易度曲なので、ジャズプレイヤーの腕試しに今でもよく演奏されているし、ぶっちゃけスタンダードの一つなのですが、プレイヤーにもリスナーにも非常に愛されている名曲なのですね。
 そんな曲のコメント欄がなんでこんなことに……。

Flanagan: What key are we in?
Coltrane: Yes.

トミーフラナガン「おれたち今どのキーにいるっけ?」
コルトレーン「イエス」(←キリストかと思ったらなんかネタ元があるらしい)

Me: i can make a song in 2 keys!
John Coltrane: hold my beer.

自分「おれは2つのキーで曲を書けるぜ」
コルトレーン「ビールでも飲めよ」(これも訳難しい)

This is ADHD in real life!

(この曲は)リアルADHDだ!

……とまあ、こんな感じ。残念ながら英語のジョークはどこが面白いか、わからんやつは全くわからんなあ。

 世界のジャズラバーの皆さんがわいわいやっている感じがして、それだけでも楽しいですが。まさかコルトレーンも60年も経ってからこんば場所でネタにされるとは、夢にも思っていなかったはず。
 こ、こるは、これは、笑いが、トレーン。
 お茶の間大爆笑ですね、ジャア今夜はここまでにステップス。

YAMAHA CP80に別バージョンが

 何かの拍子にシャカタクの「Night Birds」の来日ライブがYoutubeで出てきて、懐かしくて見てました。イギリスのフュージョンバンドで、80年代に一世を風靡したグループですね、といっても世間的には前述の曲だけの一発屋状態ですが、インストバンドで一般の人まで知っているような大ヒットがあるんだから、まあとんでもない話。
(しかし、なぜインストが流行らなくなってしまったのか、本当に不思議)。

 といっても、このライブ’00年代のものですが、昔と結構グルーブ感が違うなこれ。
 まあこれはこれでいいんですけどね。

 で、Night Birdsなんで、ビル・シャープが本来ならピアノでメロを弾くんですが(念のため、吉幾三さんは別に出てきませんよw)。アコースティックピアノではなく面白い構成になっていまして。
 ここからがようやく本題(笑)で、なんとこれ、今どき往年の名機・YAMAHAのCP80でした。’70-’80年代に使われまくっていたあの電気ピアノですね、生ピアノと同じように弦が張ってあって、ピックアップで振動を拾います。アタック感の強い腰のある音なんですぐわかります。しかしデカい、重い、運搬時は二分割という、もちろん定期的にチューニングは必要だし、今世紀に入ってからは完全に絶滅したかと思ってましたが、ビル・シャープは拘りがあったんでしょうね。普通、もう電子ピアノを使うだろうから。

 これで結構すごいわと見直したんだけど(笑)、このCP80、アップになった時によく見ると、微妙に前面パネルのツマミ配置が違う。調べたら、なんとMIDI対応になってたバージョンが後期に作られていたんですね。CP80Mという品番だけど、どうもそれを使っているらしい。おお、流石やないかい。

 そして、メロだけはこのCP80Mで弾いて、その上の電子ピアノ、RolandのたぶんRD-800かその前の機種か、こいつでコード出して、その上にアナログっぽい矩形波が出せるシンセ、これはKORGだけど機種未確認、なんと日本の電子楽器メーカー3社の製品を使いまくりでした。やっぱりフュージョンは日本メーカーの力がないと成立しないよな、ってよくわかるキーボード構成ですわ。

 そんなこんなで、文句を言いつつ色々と楽しめた映像でした。
(もうYAMAHAにもCP80は補修部品はないって聞いたことがある。メンテはさぞかし大変かと。ビルシャープ兄さん、お疲れっす)

(追記:このMIDIはMIDI OUTで、要はCP80が超大型MIDI鍵盤になるというわけです)

デモ曲追加・気怠い昼下がりPOP

 続けてデモ曲追加です。

「足りない色」

 昼下がりの情事~家政婦は見た!のような世界(笑)というか、なんというか。

 アレンジ中に木管アンサンブルを試したらいい感じだったので、ストリングス+ブラス+木管を入れ込んで色彩感を出してみました。

 左側から聞こえるのは、GM音源にもあった謎の楽器、Dulcimer(ダルシマー)。って今は演奏動画も簡単に見つかるけど、孤高の民族楽器かと思ったら、そうでもなさそうなので、今回安心して採用。

 サビまではCドリアンスケールで、サビからはCメジャーです。転調のような効果狙い、しかし転調ほど劇的に変わる感じはないのが面白い。

 今回はkayumaiさんに再び歌って頂きました。ボーカルはWaves Reel ADTでダブリングして、ちょっとエフェクト効果。

 最近の自分の集大成のようなアレンジ、生楽器からシンセやエレピまで入れた編成の楽曲です。
 皆様からの制作のご依頼を心よりお待ち申し上げております。

’80年代音楽の秘密に迫る?

 最近ちょっとしたきっかけで、「’80年代風オーケストラサウンド」というキーワードが浮かんで、自分で思いついた癖に、それってどういうものなのか、考え込んでいた。
 試行錯誤もありつつ、しばらくしてはたと思いついた。
 ――ああ、これは“戦メリ”のことじゃないか(w)。って、実にそのものでした。

 ヤングは何が「w」かわからないと思うけど、この時代に『戦場のメリークリスマス』という映画(大島渚監督)があって、ビートたけしやデヴィッド・ボウイが出てたんですよ。特に出演と同時に音楽まで担当した“教授”こと、今や日本を代表する音楽家である坂本龍一さん(もう業界インサイダーなので、恐れ多いですが“さん”付けです、もちろん)。このテーマ音楽が素晴らしくて、インストなのに大ヒットしてしまった(そもそも日本でインストがヒットするのって稀ですからね)。カンヌ映画祭出品作品、そして音楽は日本人初の英国アカデミー賞・作曲賞。

 この、一見わけのわからない「80年代風オケサウンド」って概念を、それこそ80年代に完璧に実践されていたんですね、というか明らかにこれが本家本元ですが。
 ただ、今このテーマ音楽を聞いてみると、広義のオーケストレーションはもちろんされていますが、意外というか、ほぼ全編シンセがフィーチャーされてるんですね(たぶん全て手弾きの感じ?もちろんハードシンセ)。自分の印象だともっと生楽器が入っていたように思ったんだけど、それだけアレンジと演奏が巧みであった、ということなんでしょうね。(生ピアノはメロとユニゾンしてます)
 ほのかにエスニックで懐かしく、そして(当時最新の概念であった)環境音楽的な響きもある。ブライアン・イーノですね。

 まあそれはそれとして、なんで長々と書いているかというと、今回その戦メリのフルオーケストラ演奏を見つけました、ということを書きたくて。教授ご本人がピアノを弾いています。素晴らしいですよ、3回ガン見した。

Merry Christmas Mr. Lawrence – Ryuichi Sakamoto HD (02-08-13)

 かなりふわっとした認識で書くので、非常に心配であらかじめ妄言多謝ですが、フルオケにありがちな声部がどうこうという感じではなく、もっと音響的なところを主眼にしたアレンジに、少なくとも自分は聞こえます。「線」ではなく「面」のアレンジですね。ある意味、ポピュラー音楽(ジャズ理論をベースにした)的といいますか。作曲勢の方々にはたぶんわかってもらえると思いますが。

 バイオリンでかなり高い音域でハーモニーを作って、それこそシンセのパッドのような効果を作り出しています。こんな音が出るとは、という驚き。こういう冒険的なアレンジは失敗すれば被害甚大なわけで、この結果はさすが、としか言いようがない。
 だから「いかにも」な、ありがちなオケアレンジはやっていない。非常に実験的といえると思います。
 原曲から引き継いで、プチエスニックだったり環境音楽的だったり。今さら自分なんかが言っても仕方ありませんが、やっぱり教授は凄いってことです。
 だから、80年代的なオケサウンドを出したかったら、今みたいなところは最低限クリアしないといけない。かなり高度なチャレンジになりますね。幸い、こういう素晴らしいお手本があるので、僕らみたいな人間には有難い限りです。
(いやー、今回は書いてて冷汗が出た。これはもう、同じ日本にこんな音楽家がいて幸せってレベルだなぁ)

 最近、この曲をはじめ、ちょくちょく日本の80年代音楽を聞いているのですが、あまり表だって書いている人はいないけど、80年代音楽って日本の一つの頂点だったんじゃないか。(それ以降の音楽がつまらないと言ってるのではもちろんありません)。でも、音楽で世界進出もしていたし、売上的にも(まあ時代の流れはあるが)今とは全く違って、自分のような当時の素人からみても業界全体が活気に満ちていました。
 坂本龍一さん、YMOもそうだし、カシオペア、(T)スクウェアといったフュージョン勢、渡辺貞夫さん、日野皓正さん、このあたりはメインストリームジャズとも股にかけた活躍、もちろん冨田勲さんもいた。
 80年代のアイドル音楽も、非常にユニークで、今や海外の若者にYoutubeで再発見されて、一部でカルト人気がありますからね。(ついでにいうと、当時のアニメ劇伴も高い評価を受けている。作家の名前が通じるほどです)当時の日本のAORも素晴らしかったが、やっぱり海外で再発見されてたりする。

 これはちょっと、このあたりをはっきり意識しつつ、「今」曲を書こうという人間は、戦略的に振舞ったほうがいいかも。取り入れられるものは取り入れていく、自国の音楽を模倣するのは模倣といわれませんから、海外のをやるとモノマネといわれるが。
 もちろんただの模倣でなく現在の音楽に発展的に取り入れるってことです。
 あんまり80年代賛美はしたくなかったんですね、自分の青春時代を賛美してるよくいるおじさんみたいだから(笑)。だけど、考えれば考えるほど、これはただごとではない時代だったと思えてきて、こんな文章を書いてみました。

 やっぱり60~70年代洋楽(AORやフュージョン含む)の盛り上がりを受けての、80年代ジャパン音楽の活況と頂点、これは歴史的にみて正しい認識なのでは。
 この時代の音楽を指す良い言葉はないか考えたが、Japanese ’80(Eighties) として、Jeighties(ジェイティーズ)って造語はいかがでしょう。

 ここから、今の音楽制作者は何ができるか。できることはたぶんたくさんありますね、自分はそう思います。

近況とか二大アレンジャーの話

 花粉、流石に少なくなってきたが、もう大丈夫かと思ったら、まだ身体にキているという信じられない事実。特に4月終わりのラストスパートは酷かった。今年はあきらかに胃腸にも影響出たし、年々酷くなってる。花粉症で衰弱したところへ何か病気したらコロっといくんじゃなかろうか(O157とかさ)、自分の死に様はそんな感じもしれん。
 こりゃあ、下手に出歩くこともできません、もう部屋に引き篭もったまま一生を終えることにします(違うか)。
(今の季節は、黄砂とかPM2.5とか、ただでさえ色々飛んでいる)
 正統派(?)病弱系男子です、生きていくのがやっとです(笑)。諸先輩方、どうかお手柔らかにお願いします。

 ところで、インスト曲のデモページにも、また何曲か追加しました。以前書いたやつですけどね。もっとインストも書きたいなあと思ってて、時間があればまた。

 
 最近ヴァン・マッコイやハーブ・アルパートのベスト盤を聞いているんですが(ベスト盤は必要悪、キャリア長い人だと音の変遷が面白い)、流石にこの二人はアレンジの達人っすわ。聞いて愉しく、分析して為になり、やっぱりオリジナルアルバムも聞きたくなる。
 特に、ブラスからストリングスから、エレピにエレキにアコギにパーカッション、シンセサイザーまで、ありとあらゆる楽器を縦横無尽に使って、スケールの大きいアンサンブルを作っていく、こういうのやらせたらピカイチっすね。
 それでいて、前者はソウル、後者はメキシカンという軸はゆるがない。破綻しないんですね。このセンスを自分も取り入れようと日々試行錯誤。

 面白いことに、ヴァン・マッコイは元々歌手(シンガーソングライター)でデビューだし、ハーブ・アルパートもボーカル張った曲でチャート1位取ったり、二人とも歌に関しても超一流なんですよ。全く隙というものがない。
 音楽制作をやっている人間には、二人の作品群はまあ宝の山でしょうね。

 ついおととい、ヴァン・マッコイの「続・ハッスル(Keep on hustlin’)」を聞いていたら、向かって右にやけに聞いたことあるギターがいるなあと思った瞬間、聞き間違えようのない泣きのフレーズが聞こえて、ああエリック・ゲイルだと(笑)、若いガッドっぽいドラムとか、この重いベースはゴードン・エドワーズだろうとか、このハモンドはリチャード・ティーちゃうかとか、そういうところでも楽しめる楽曲群です。

 ハーブアルパート曲に、アコーディオンが使われているのも発見。こいつは新時代早々縁起がいい(笑)。
 そして、白黒テレビの時代から’00年代までの音の変遷で、最後期のあきらかに配信に合わせたようなミックス+打ち込みドラム丸出し曲は、はっきり「ダメ」と分かります。音楽性が合わないのと、曲としても破綻してる、絶対。
 配信でアップル「だけ」は潤ったかもしれませんが、音楽業界はどうなりました? 低いところに合わせた結果、リスナーが音楽に絶望して離れてしまった。そろそろアップル=mp3配信最高的な価値観から離れましょう。ジョブスは死にました(「神は死んだ」と同じ意味で)。低品質な配信と低品質なイヤホンに合わせるような音楽制作は、今すぐやめるべきですね。このベスト盤のお蔭ではっきりそれがわかりました。
(そもそもスティーブ・ジョブスは、音楽がわかる人間だったのか? 酷いmp3コーディングでも満足できる「耳」しかなかったのでは?)

 やっぱりCDがリファレンスで、配信ならWAVとかにしなけりゃ、たぶん音楽業界はずっと「死んだ」ままでしょう。ジョブスの道連れにされることはないのです。
(日本はCDガラパゴスという記事を時々みるが、それって最高じゃないか?)
 アップルを肥え太らせるのはもう止めましょう、Way of Lifeでもカリスマ宗教でもない、ただの一私企業なので。
 手軽に音楽を聞ける必要はないのです、CDを入れてプレイボタンを押す、それくらいの手間はかけてもいいはず。

 そんなことを想う毎日です。
(といっても、iTunesも現時点では必要悪なんだよな…と早めに言っておく 汗)

記事公開停止のお知らせ

 実は、まだ残っている昔のseesaaにあったブログの記事を、3から4本だったか、公開停止にしました(削除はしていない)。音楽系の記事で、しばらく前から気になっていたものだけです。5年以上前のものだったと思います。

 というのは、この何年かで、自分の立場が大きく変わってしまってですね、昔は純然たる音楽ファンでありリスナーだったわけです。音楽界とは無関係ですよね(=素人)。ボカロ曲書いてるようなうちはまだ良かったのですが、こうして曲がりなりにも作曲家という立場になって、業界の片隅に足を踏み入れさせてもらってですね、そうするとインサイダーですから、アーティストやミュージシャンをはじめ業界の皆様方について、気軽にあれこれ言うのはどうか……という感じになってしまった。全員雲の上の大先輩ばかりですから。もう立場が180度違ってしまったのですね。それで、素人時代に書いていたことで、今インサイダーとしては拙いなこの書き方は……という記事があって。それをサスペンドしたってことです。
(呼称ひとつにしても、リスナーとしてはあまり気軽に**さんなんて言うのも馴れ馴れしくて変だが、インサイダーとしては絶対「さん」付けですからね)

 そんなこんなで、昔からこのブログを読んでいるような方(そんな暇な人いるのかなあ?w)ならその辺り分かって貰えるだろうけど、最近ここを知って、万一過去の方に遡った方は、「こいつ駆け出しの癖になんで大先輩をこんな風に書いてるんだ」なんて思われるかもしれませんし、誤解や失礼があってはいけないと思い、遅まきながらこうした処置にしたってことです。また悪いことに(?)、元ライターだったので面白おかしく書いている箇所があるのですわ。特にそれが酷いと思われる記事、3~4本です。
 くどい説明ですが、これが理由です。修正で済まそうとかとも思いましたが、それも色々差しさわりがありそうなので、思い切って。ライター専業だったら、まずこんなことはしないけど、今は音楽制作をしているので、気を遣っています。

(その割には最近も色々書いてるじゃないかって?……これでも最大限配慮しているのです、まあ苦情は受け付けますが)(汗)

 それで、その苦情の件。公開停止にしてけしからんじゃないか、というクレームは受け付けますが、関係者の方からのみとさせて頂きます(汗)。……まさか読んでないと思いますが……万一、消すなという方が見えましたら、お詫び&事情説明とともに復活させますので。

 どうも最近、このブログは結構読まれている感触があり、特に業界のごく一部で話題になっているという風の噂(毒電波ともいう)がチラホラ……。
 こりゃ昔の書き込みで拙いのがあったなと思ってて、ようやく対策しましたということです。

 噂は事実じゃないと思いますが、もし、もしですよ?読んでいるアーティストやミュージシャンの方が見えましたら、こんなブログ見て暇つぶししてちゃダメっすよ。日本の、いや世界の音楽シーンを前進させる活動にぜひ戻って下さいね。

 ふいーぃ、これでようやく肩の荷がひとつ降りた。今後も堅実に、着実に、1曲1曲心に響く曲を書いてまいります。業界の皆様、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

(追記:更に10件ほど公開停止。これホント冷や汗ものですわ…)