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KENDRIXから著作権登録

 以前ここで書いたKENDRIXで、JASRACへの著作権登録が直接できるようになったので、やってみた。ブロックチェーンに楽曲ファイル情報を登録できるサイトね。
 まず前段階として、KENDRIXにIDを持っていないといけないのですが、これは誰でも無料登録できます。というか、ブロックチェーンへの楽曲登録そのものが無料できる(大サービスですね)。

 ただ、ここからJASRACに著作権登録しようとすると、JASRACとあらかじめ信託契約していないといけません。自分のときは印鑑証明や戸籍謄本が必要だったが、今後マイナンバーカードでもできるようにする計画があるらしい。JASRACも急ピッチでDX進行中。要はちゃんとどこの誰か曲を書いたのか証明できないといけない。

 ちょっと脱線したが、ここからはKENDRIXのIDを、ベーシックからビジネス+へと変更する手続きが必要です。

 申請そのものはオンラインでできるが、やはり確認は厳重で、登録した住所に郵便が届きます。そこに記載されたパスワードをサイトで入力すると、ようやくビジネス+に昇格。自分のときは届くまでに1~2週間掛かったと思った。

 ここから簡単で、KENDRIXに楽曲ファイルをmp3かWAVで登録して、そこから著作権登録申請に進むだけ。入力項目は、通常のJASRAC本体からする時と同じです。
 ただ、こちらは楽譜や歌詞は登録しなくて済む、っていうか登録する項目はありません。楽曲ファイルそのもので代用してるんですね。
 現代の曲は譜面に書くのも難しいことが多々あるから、この方が便利でしょう、って利便性を提供しているんだと思います。

 登録ファイルですが、一応リリース用の完成音源が推奨されているが、ミックスが終ってない等の場合は、デモ音源でも良いようです。ただ、流石にアレンジ等全て完成したものでないとマズいと思う。
 デモ音源で著作権登録して、あとから完成音源をそこにぶら下げることも可能なので心配はいりません。

 登録したら自動で著作権登録されるのではなく、JASRAC側で通常の場合と同様、人力のチェックがあります。その後、めでたく著作権登録が完了したらJ-WIDに載ります。

 KENDRIXから著作権登録できるのは、作詞・作曲のみで編曲は対応していません。実は編曲で著作権登録するのは元から難しい。編曲審査委員会というところで審査があるんですね。高度な編曲作品でないと無理ってことです。例えば冨田勲「惑星」は編曲で登録されています。

 まだ機能が実装されていくようなので、面白いサービスが追加されたら報告します。

JASRAC誕生秘話

 JASRACサイトの会員エリアに、先頃面白いPDF資料が載っていて、ダウンロードして読んでました。「JASRAC80年史」という資料で、優に書籍1冊分の分量がある。元々はセミナーかなにかでの配布資料だったらしいけど、非常に出来がよく、それで公開されたらしい。(2019年版)

 ここに面白い話が載っていて、名前通りJASRACの歴史を紹介した資料なんですが、なぜJASRACが作られたか、その経緯が最初に書いてある。
 それによると、JASの前身となる団体が作られたのは戦前の1939年(昭和14年)。その理由というのが実に意外というか、なんというか…。なんと、外圧です。

 在日ドイツ人の某が、昭和6年に外国著作権管理代行団体を日本で設立した。NHKのラジオ放送や、クラシックの演奏会などで、かなり厳しい取り立てを行い、場合によっては楽譜の差し押さえまでやった。まだあまり著作権は気にされてなかった時代で、かなりの騒ぎになったようです。
 そのうち国内でも勝手に著作権団体を組織して日本の著作権業務を牛耳ろうとし始めたのですね。
 それで大問題になり、国会で急ぎ関連法案などが整備され、JASRACの前身の団体が作られた、とのこと(社団法人大日本音楽著作権協会)。

 だから、JASは誕生の段階から、日本の音楽著作権行政と深く関わっていたといえそうです。
 この資料、奥付をみると編集は日経BPになっていて、かなり信頼性の高いものといえそうです。2018年までの出来事がずらっと編年体で載っている。

 設立時の名簿を見ると、作曲家では服部正、古賀政男、古関裕而、平尾貴四男、本居長世といった名前が見えます。作詞家では西条八十、時雨音羽など。(敬称略)
 この団体が戦後の1948年(昭和23年)に社団法人日本音楽著作権協会と改名され、現在のJASRACとなります。

 余談ながら、こんな背景の組織が、一部で言われているような著作権マフィアみたいなものであるはずがない。先頃音楽教室問題で潜入調査して炎上したが、その前はロクロク調べない、と随分批判されてました。まず世間は調査して欲しいのかどうか、決めないとね。

(ちなみ、なぜ著作権使用料の請求が作曲家からでなくJASRACから来るかは、作曲家が著作権管理をJASに委託しているから。そのあたりは全部わかりやすく公式サイトに書いてありますね)

KENDRIXに登録してみた

 ブロックチェーンに楽曲情報を登録して「存在証明」ページを作れる&公開できるシステム、KENDRIXが10/31から稼動しています。運営しているのはJASRACで、春くらいから試験運用していた。
 簡単にいうと楽曲の著作者情報をネット上に登録でき、楽曲の不正使用や強奪などに対抗できる仕組み。(登録したからといって必ず防止できるわけではない。ただ不正使用された場合に今後は強力な対抗手段となりえます)

ブロックチェーン技術を活用した存在証明機能とeKYC機能を備える楽曲情報管理システム「KENDRIX」の正式サービスを開始
https://www.jasrac.or.jp/release/22/10_5.html

 これなんと、全部無料なんですね。サイトでIDを作って、楽曲をアップして、タイトルとバージョンを登録していくだけ。楽曲登録の作業もサクサク進みますが、ブロックチェーン登録のステップだけは平均30秒程度待たされる。(このあたりは中央集権システムじゃないので…) 技術周りはソニーグループと連携しているとのこと。

 存在証明ページはこんな感じになる。

ファイン・チューニング
https://kendrix.jp/versions/musical_creative_work_version_id:5159d927-af93-4048-8a03-6fb994b37e9e

 登録できるのは、作詞か作曲、あるいは両方の著作権を持つ人だけです。(編曲の項目はなし)
 もちろんJASRACに入っていない音楽クリエイターでも全く同じように登録できます。(というか、JASRACとしてはそういう方々に使って欲しいらしい)

 Youtubeなどでも、楽曲を不正使用された、乗っ取られた、なんて話を時々聞きます。ネット上に楽曲を公開する方は、あらかじめKENDRIXに登録しておくと安心かもしれません。インディーズでやっている方には特におススメです。
(ウチのようなレーベルには非常に有り難い仕組み、もちろん全曲登録した)

 まだサイトの機能的にもVer1.0という感じですが、その分軽くて快適です。JASRACもDXやWeb3を睨んで、ガンガン動いているわけですよ。実はJASRAC本体の楽曲登録も、昔は郵送やFAXだったが、今ではネット上からも登録できるようになっています。

 蛇足ながら、JASRACは音楽家の寄り合い所帯であり、音楽の作り手の味方です。世間では随分悪者にされているが、かなりマスコミのマインドコントロールが蔓延っている印象。マスコミはお金を「払わされる」側だから、面白くないのでしょうね。
(トラブっているのは膨大な管理楽曲中の数曲、あとはしっかり分配してますよ)

 マスコミはこういうニュースはなぜか報道しないんだよね。
(KENDRIX mediaというサイトも立ち上がっているが、これは連動している音楽メディア)

お仕事とJASRAC関連のメモ

 現状で、クライアントさんから楽曲制作を依頼された場合、どうなるか、調べた分をまとめてメモ書き。
 以下クライアントさんが出来ることです。

●JASRACへの申請なしにできること

・Youtube、ニコニコ動画、nana等への楽曲使用動画の投稿
 (国内主要サイトはほとんどがJASRACと包括契約済)

・ライブハウスでのライブの楽曲利用
 (ライブハウスがJASRACと包括契約をしているか、主催者・イベンター・レーベル等が手続きしている場合)

・ブログへの歌詞のポスト
 (国内主要ブログサイトでJASRACと包括契約済の場合)

・SpotifyやiTunesなどへの配信
 (配信サイト側で利用料をJASRACへ支払うため)

・Youtubeやニコ生などでの生配信での楽曲利用

 ネット中心の活動なら意外と色々自由に出来ると思います。一方で……

●JASRACへの申請が必要になる場合

・ホール等大規模会場でのライブ
 (主催者・イベンター・事務所等が手続きしている場合を除く)

・CDやレコードの発売

 さすがにここまでくると、許諾が必要になります。ほぼインディーズからはみ出している(CDは今は簡単に作れるが)。以下おまけで権利関係。

●権利関係

・著作権は移譲不能なのでこちら

・原盤権はクライアント保有
 (でないと、動画投稿などでいちいち許諾がいる状態になる)

・JASRAC登録後は、一般公開作品データベースJ-WIDに楽曲名が載る
 (条件付きだがアーティスト名も載せることが可能)

 J-WIDの件はなかなかのアドバンテージに思えますが、いかがでしょうか。
 今のところはこんな感じです。