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ミックスTIPS: ボーカルの位相ズレ

 たまには気紛れに実用的なTIPSシリーズ。
 この前のデモ曲で、ボーカルトラックを処理していて気付いたこと。どうも一箇所、位相が狂っているのか、フレーズの最後の部分で、フランジャーが掛かったような音になってしまう箇所がありました。
 変なコンプを強めの設定でかけるとこうなりがちだけど、その時はWaves CLA-2Aとか筋のいいやつしかプラグインチェインの中になかった。
 案の定これをオフにしても同じだし、EQはこれまたかなりインテリジェントなRenaissance EQ、試しにOFFにしても同じ。それでなんだろうと色々と試していた。

(ボーカルトラックの処理は、一番気を遣う箇所です。人間の耳が最も聞き慣れていているのは人の声なので、少しでも変なところがあるとリスナーはすぐに不自然だと気付きます。今回のは放置できない)

 この時も10本程度はプラグインがぶら下がっていました。
 最終的に、犯人は意外なヤツでした。それはDeEsser。これも特殊用途のコンプなんですね、「サ行」の音みたいな気になる音の周波数帯だけ瞬間的に圧縮して軽減します。これが効き過ぎていて、位相が乱れてしまっていたわけ。

 さてどうしたもんか、スレッシュルドを上げると軽減がぬるくなるしな、と思ったのだが、そういやRenaissance DeEsserがあることを思い出し、こいつを挿したら一発で止まりました(w)。やっぱりルネッサンスシリーズは、内部でかなりインテリジェントな処理をしてるんですね、超便利。
 こいつとDeBreath(ブレス軽減プラグイン)は有用なので、もし未使用の向きは使った方が良いです。ほぼ何も考えなくても破綻せず使えますからね。
(まあブレスノイズは必ずWav編集で消してるけど、消せないやつもある)

 他にこの曲だと、特定箇所でエレピの音とボーカルが重なって波形合成現象らしきものが起こって、ブッチ音が発生した、これも2mixに落とすまでは発生しなかった現象。それでミックスにもどって、ここだけエレピの音を一瞬絞って解決した。こういう変なことが、ミックスをやっていると時々起こります。このあたりは本を見ても書いてないし、自分で原因を予想して対処していくしかない。
 ミックスがエンジニアリング(工学)の範疇だといわれるのもわかりますね。

ミックスTIPS: シンセパッドの位相乱れを防ぐ

 この前上げたの曲のミックスやってて気づいたこと。これまでいまいちミックスにおける「位相の乱れ」はピンときてなかったんだけど、初めて「これがそうか」ってなりましたわ。
 倍音をたっぷり含んだシンセのパッド、これにがっつりコンプ掛けたら、音質と音量がふわっふわっに揺らめいて、かなり妙な質感になってしまった。変な例えだけど、エビフライ(名古屋だけに)のコロモだけがぶわぶわになって、中身がつかめない感じ(なんちゅう比喩や)。これ何だろ?(これまでも時々起こってた、ここまで派手でないが)、と思ったら、これが位相をぐちゃぐちゃにしちゃった状態。コンプの掛けすぎで。

 実は、同じようなコンプをストリングス等の生楽器にかけても、こうはなりません。やはり元が生のやつはいい意味で波形が揃ってない、ランダムネスがあるから、いい感じに自然にコンプレッションするんですね。ただシンセみたいな人工波形だと、ほぼきっかり波形が揃っているので、位相の乱れがガチで目立ってしまう、ということのようです。
 これは、VOX系のシンセパッドと生クワイヤでも同じような関係になる。

 もともとシンセパッドやシンセストリングスなんて、ダイナミクスも揃ってるんでコンプなんてそう必要ないんだけど。つい癖で掛けてしまっていたんですが、生楽器と同じようにやると、かなり位相の乱れが目立つ拙い状態になると今回判明。
 あと、生楽器用の、アナログモデリング系のコンプ掛けたりすると、シーケンスのシンセパッドでなく、キーボードシンセの手弾きみたいな質感になる(w)。これも曲調によっては変なことになるんで、まあ適材適所ってこと。

 今回は、リニアフェイズの無色系マルチバンドコンプで中~高域あたりをうっすらとコンプレッションしてみました。これでほぼ質感は変わらず、位相も崩れず穏やかな音圧UPになりました。