タグ: CITYPOP

カラフルな3枚

 サブスクでコツコツ聞いている音源シリーズ。

 グリーンのやつ聞いた。最初はアイドル路線なのかな?と思ったが、レコード時代のB面からはAORになって素晴らしかった。たぶんA面とB面で方向性を変えたのかな、上からの指示的なもので。(←前2作の振れ幅が大きかったので、安全策的な) これはキュートAORですね、ちょっと他に例を見ないかも。敢えていえば初期のTさんとかか。プロデューサー&アレンジャーの方が達人のような職業作家なので、これも間違いのない出来。

 続けて灰色のやつ。演奏やミックスは流石に海外録音盤で素晴らしいが……実はアレンジはあまり評価できない。というのは、やはり彼らは日本語の歌詞がわからないし、曲調や歌詞の世界も本当には理解できてない。なのでほぼ全部ツボを外しちゃってる感。サウンドは格好良いのに、どこかチグハグな印象を受ける。海外プロデュースあるあるな仕上がりになってしまった。

 青色のやつ。あれれレコード会社が違う、なんかありましたか(汗)。てな話はおいといて、前半はかなり雰囲気沈滞。落ち着きというより落ち込み。アレンジも単調で「?」な感じ。ところが……後半からの巻き返しが凄い。特に肖像曲。これはたぶんこのアーティスト最高レベルの、自力で曲そのもの=単体で勝負できる作品では。隠れた名曲でしょうか、シングルカットされてないし。セルフプロデュースだったそうで、この1曲だけで成功といえそうです。見事なAOR/CITYPOPのアルバムでした。

 この方はもっと評価されてしかるべきだと思っています。このシティポップ/80sブームの中で、何かのきっかけで再ブレイクも有り得るのでは。というかそうなることを祈っています。本当にリスペクトできるアーティストさんです。リスペクトですよ、それ以外にないですよ。

楽曲への思い入れ

 今は自分はプロジェクトACTiVATEでオリジナル曲をリリースしているわけですが、音楽的に面白いものを、という縛りの他は、別段テーマもありません。といってもやはりAORとか70s-80sポップスっぽい曲になるかとは思いますが。
 作詞・作曲・編曲からミックス・マスタリングまで全部やって、ボーカルだけは「曲に合う」シンガーさんを毎回見つけてきて、それでお願いしているという形。
 あくまで楽曲が先で、シンガーさんはそれに合った(歌える)人を連れてくるという方式です。(実際ベタ打ちである程度完成したところで人を探し始めることが多い)

 そのせいかどうか、一曲一曲の楽曲への思い入れって、あんまり強くないんですね。常に他の曲を書いて(作って)いるんで、同時並行していることばかりだし、もちろん質的には毎回自分で作れる最高レベルのものですが、もうこの一曲に掛けている……という感じではない。
 このあたりは、もしかしたらシンガーソングライターさんとは違う意識なのかもしれません。ある意味醒めているわけだし、客観視しているというか、レーベル代表としては曲は商材……という視点もあるわけです。(音源=商品なので)

 これが良いことなのか悪いことか……という判断は別にしても、サブスク時代である程度ショートスパンでリリースし続けることが求められるようなって、それは楽曲の海に沈んでしまわないようにするためですが、こういう視点は今はシンガーソングライターさんにも求められているかもしれません。
(というか、ある程度長くやっている人は当然そうなってるんでしょうか……)
 楽曲は楽曲、と割り切ってビシバシとリリースしていく、たぶん過剰な思い入れは必要ない、そんな姿勢が求められている時代だと思っています。
(もちろんこれはヒット狙いの場合で、自分のやりたい音楽を自分のペースで作り続ける……という選択肢はある)

 何かを全否定したりdisったり……という(強い)思いでは、自分は曲は書いてません。もっと建設的な思考かな……曲は曲、なので。(まあ音楽の場合はそれだけはないのがまた複雑なのですが)
 全てとは言いませんが、AORやCITYPOPは「物語の世界」なんですね。つまり職業作詞家が作る歌詞といえばいいか、そういった意味では演歌や歌謡曲とも同じです。少なくとも自分にとってはそう。(そういう分析をする評論家の方も実際います)
 結局のところ、思い入れよりは企画や“作戦”が込められているといえるでしょう。

(上に書いたのは自分のプロジェクトの話で、ご依頼の場合はやはり違って、そちらの方が「思い入れ」主体といえるかも。無論その場合もプロデューサー的視点は必要になりますが)

「真夜中のドア〜stay with me」の名カバー

 名曲の素晴らしいカバーを見つけたのでご紹介。

 しばらく前、松原みきさんの「真夜中のドア〜stay with me」をアマゾンミュージックで聞いていたんですね。そうすると、自動リコメンドで同タイトルのカバー曲が出てくるんです。で、インスト含めて色々聞いましたが、その中に島谷ひとみさんのがあって、これ最新アルバムかららしいけど、プレイバックしたら、これがもう筆舌に尽くしがたいほど素晴らしい歌唱。バックトラックもとびきりセンスが良くて、ワンコーラスだけ……と思っていたら止められなくなって最後まで(+何度もリピートw)。
 日本を代表する歌手のお一人だから、上手いなんて褒め言葉は却って失礼かもしれませんが(当然なので)、しかしこんなに上手く歌ったら、天国の松原みきさんが怒っちゃうんじゃないか……ってレベルの歌唱。各サブスクやYoutubeでも聞けるので、ご興味のある方は是非。

 バックのアレンジは、実は原曲を結構なぞっていたりするんですね。当時の演奏を現代でリファインしたらこうなる……という感じ。ちょっと驚いたのが、サビのところのストリングアンサンブル(シンセ)。これ明らかに実機だけど、ソリーナとかじゃなくて、この濃厚なコーラスエフェクトの感じ、ローランドのVP-330じゃないかと思うのですが……。だとしたら当時の機材を引っ張り出してのリスペクト、心憎い限りです(ジャパンドメインだしね。まだ稼働する機材があるのは奇跡)。ミックスも非常に良質。
 全てがハマったカバーでした。

 ちょっと前も別のカバー曲のことを書いたけど、もう無理やり別のアレンジをもってくることはないんじゃないかと。必要なのはリスペクトと、そのシンガー独自の素晴らしい歌唱。これがあれば、アレンジはもう透明でもいい。
 名曲は時代を超えて生き続けていくんだなあと実感。