タグ: 80s

NHK 坂本龍一スペシャル

 NHKで「坂本龍一 芸術は長く、人生は短し」を観ました。子供の頃のピアノ前での写真まで出てきて、音楽家としての人生を駆け足ながら振り返ったもので、良くまとまっていたと思います。個人的にはまだ死去の実感は持てません。膨大な音源と映像等が残っているわけで、それらの永続性を考えたら、音楽家の死というのは不思議なものだと、やや不謹慎ながら感じてしまいます。もちろんもうそこに新作が加わることないのですが……(未発表音源が発掘されない限り)。

NHK MUSIC SPECIAL 坂本龍一 芸術は長く、人生は短し
https://www.nhk.or.jp/music/programs/484975.html

 番組の中で意図的にかオミットされていたと思うのは、「スネークマンショー」との関わりですね。かなり過激なコントプロジェクトだったので、コンプライアンス的に拙かったか(まあ坂本さんというかYMOだけど)。
 僕らの年代だと、中高くらいで大滝詠一・YMO・スネークマンショーの洗礼を受けています。スネーク~は放課後に教室で誰かがラジカセで掛けてたりね。それを女子を含む皆で聞いて笑ってたり。平和な昭和の光景です。
 ちょっと脱線したけど、坂本さんの中にはお笑いに接近していた時期もあったわけですね。今だと当たり前だけど、当時はかなり新しかった。
 こうしてみると、やっぱり80sの音楽やカルチャーに果たした役割が巨大だったと思います。シティポップだけじゃなく、こんな面も80sにはあった、というかこっちの方が大きいな。やっぱりバブル日本、カルチャーも音楽も強かった、その核の一人が坂本龍一さんでした。

 もしかしたら熱烈なファンには当たり前かもしれないけど、番組を観ていて思ったのは、坂本さんの音楽にはいつも「辺境」との関わりがあったかもしれない。かつてのシンセは音楽の辺境(エッジ)だったし、大島渚監督の映画や、お笑い、民族音楽、自然音、ノイズ音楽、全部メインストリームからは外れていますね。それでもいつも中心にあるのは、ポップミュージック、もっといえば広義のポピュラー音楽で、常に商業音楽としてリスナーにアピールする楽曲を作っていた、現代音楽のように象牙の塔に篭らなかった。それは映画音楽作品のようにオーケストラ曲でも同じ。この点は当然すぎてつい忘れがちですが大きな功績ではないでしょうか。
 最後の作品はピアノソロ演奏ですが、コアになるものはいつも変わってなくて、その表現手段が変わってきただけ、という見方ができるかもしれません。

 自分だけが知っている坂本龍一さんのエピソードをここで書いておきましょう、といっても皆が期待するような内容でありません(w)。ライター時代に記事を書いていたある雑誌が、坂本さんのインタビュー記事を載せることになり、表紙も坂本さんになりました。自分が書いたのは無関係の記事だけど。やらしい話でスマヌが、坂本さん表紙で売上がめっちゃ良かったそうです。編集長は大増刷したって言ってました(笑)。今から20年位前の話だなあ。

 遺されたものは大きく、業界は(昔より)小さい。音楽業界の皆さん、どうしますか。

映画「キャノンボール」観た

 アマプラで出てきた懐かしいコメディ映画。てっきり70年代かと思ってたが1981年だった、アメリカ大陸を縦断する違法公道レースの話。レース自体の駆け引きというより、参加者のキャラの濃さが売りになっている。
 主演バート・レイノルズ。この頃の違法レース物といえばこの人(w)。先頃の「ラスト・ムービースター」では老いたスター役で主演して、当時のドタバタもネタにしてました。あとジャッキー・チェン、マイケル・ホイ、サミーデービスJr、ロジャー・ムーア、ファラ・フォーセットも出てくる。
 まあ、今でいえばコンプライアンスなり、差別表現なりで完全にアウトな表現やギャグもあり、当時は牧歌的だったんだなあ、という変な笑いも楽しめます。

 まあなんといってもロジャー・ムーアの役がヒドイ。ロジャームーア似が自慢の大金持ち役を本人がやっている。ショーン・コネリーから2代目ジェームズボンドを引き継いだ人で、比較して色々言われていた時期。劇中オレは有名な俳優で……と自慢するものの、「誰?」と言われたり「知らん」で殴られたりする(弱い)。美女をエスコートしてボンドカーで参加してるんだけど、最後に他の役者と間違われていたと知り、なんともやるせない虚無な表情になります。洒落にならん、仕事選びなよ。(でもこの人のボンド映画は面白かったですね)
 ラストで自分がボンドカーの排出ガジェットで吹っ飛びます。よく引き受けたな。

 で、このボンドカーのシーンで、「007のテーマ」……とそっくりだがギリでアウトの音楽が流れるのですが、これが一番面白かった。普通はギリセーフで作るだろ、っていう。当時は映画音楽のほうもユルかったのか。これ今だったら絶対無理だろうと思う。今観ると80年代初頭の楽天的なアメリカの雰囲気が、濃厚に感じられる映画でした。