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「機動戦士Zガンダム」の音楽

 とうとうこいつのTVシリーズ全50話を見てしまった。Youtubeのバンダイ公式→Amazonプライムの流れです、なんと全話がプライム特典でした、困ったことに(w)。ちょうど1日1話くらいのペースだと昔の再放送みたいな感じで見られますね。
 ORIGIN→ファースト→ゼータと宇宙世紀シリーズを堪能。これ、見事に仮想宇宙戦記物になってるという。

 音楽は大ベテランの作曲家・三枝成彰さん。非常に幅広いジャンルを手掛けられている方で、フュージョンとも関係が深く、若手だった頃のカシオペアメンバーが三枝さんの劇伴スタジオワークで演奏していたこともあったと聞きました。

 ファーストの音楽が「線」(メロディ)の劇伴だったとすれば、Zの音楽は「面」(ハーモニー)の音楽でした。ファーストはスタジオストリングス&ブラスでしたが、このZは明らかにフィルハーモニー。オーケストラの劇伴です。予算がドーンと増えたのですね、ファースト映画化が大成功しましたし、当時はバブルでもありました。
(むろんシンセやリズムセクションが入ってくる曲もある)

 それにしても、ファーストの音楽群が、戦記物らしい爽快感や迫力・スピード感もあるものだったのに対して、このゼータの音楽は、環境音楽っぽいといいますか、非常に雰囲気や情緒感を重視したもの、しかもそれが不安感や不気味な感じさえ煽るものになっていて、見始めた時はなんでだろう?と思っていました。
 ただシリーズ終盤で主だった登場人物が死んでいき、(これ有名だからネタバレすると)主人公カミーユの心も壊れていって最後は「ココハドコワタシハダレ?」状態という、衝撃の最終回で。かなり視聴者の心をかき乱す、後味の悪いラストだったのです。本当に富野監督は怖ろしい人だ(w)。
 ここにおいて、この音楽群はストーリーにピッタリ合っていたなあ、と思い当たりました。たぶん最初からラストは決まっていて、そのように作曲の発注をかけたのではないでしょうか。それにしても主人公がこんなことになるロボット物って他にあるか?w そういう意味では『新世紀エヴァンゲリオン』にまで影響を与えた作品といえるかも。

 主題歌については、長くなりそうなのでまた稿を改めるとして。以下、観ようか迷っている同世代の方々に向けての余談(もう少し語らせてくれ 笑)

 ファーストは非常にすっきり爽快感のあるストーリーだったけど(ジオン公国と地球連邦軍という正規軍同士の闘い)、ゼータは地球連邦軍内の「組織」同士の私闘という、非常にややこしい構図。なので爽快感もないし、あんまり艦隊戦とかもない、いわばゲリラ同士の闘いなので。ほぼ大義名分もない。

 ファーストの続きなので、クワトロ・バジーナと名乗る(みんな大好き)シャアも出てくるが、正体は周囲にバレバレで、本人も開き直っている(笑)。
 アムロも出てくるが大体14話から、しかも割と早めに引っ込みます。あくまでカミーユとシャアが主人公。そう、この話実はシャアは1話冒頭から出ずっぱりで、最後のカットまでそれ関係。もう一人の隠れた主人公はシャアです。これは自分のようなファースト世代は嬉しいかもね。

 そして、ゼータはモラトリアムの物語です。カミーユは大人にも子供にもなれず、戦士としてもアムロのようには突き抜けられない。シャアも、正体を明かすと宇宙移民のリーダーに祭り上げられてしまうので、トボけつつ日々戦闘を楽しんでいるw そんな話です。シャアもキレたカミーユに殴られて、仕方なく後半正体を世界に公表するが。

 陰鬱で複雑で爽快感のあまりないロボット物を見たい方は、一度どうぞ(w)。
(あっ、あと、アムロがチャラいぞ。なんかショック)

意外なジャンルの意外な楽器

 作曲家、ことに打ち込みで全ての演奏まで作っている人間からすると、特定楽器の音源起用というのは一種の用兵論みたいなところもあって、まあ起用しただけではダメでアレンジしないといけないが(w)、曲全体を俯瞰して、これを使ってこんなアレンジにするか~みたいなところは、取り掛かる前に色々と考えるわけです。実際にちょっとフレーズ作ってみて、こりゃダメだな変更しよう、ってことも勿論ありますし。

 といっても、ポップミュージックである以上、あまりに奇抜なアレンジ(楽器の起用)はできないわけで、そこは前衛芸術ではないので、リスナーのことも考えないといけません(その前にクライアントさんがこんなの求めてないだろうな、ってことはわかるはず)。色々なジャンルの音楽がありますが、各ジャンルでスタンダードな楽器編成やアレンジってのもあるわけで、それがジャンルの構成要素である以上、それを尊重するのは当然ですね。
(まあちょっと冒険してもいい、って時も有難いことにありますが…)

 例えば、日本ではほぼ最近まで忘れ去られていて、その逆に欧米ではギター並みにずっと使われている楽器、それはボタンが一杯付いている(鍵盤付きもある)精密機械のような楽器――アコーディオンですが。こいつはなかなか現代日本では目立つ場所で見かけることがありません。シャンソンやラテン系音楽などで使われていることがある他は、一部のグループで使われている位、なのですが。
 実は、ずっとポップミュージックのメインストリームに近いところで、頻繁に使われているジャンルがあるんですね、これが。なんだと思いますか?

 ほとんどの方が意外と思われるでしょうが、それは「演歌」です。そうなんですよ、ガットギターやストリングス使用はよく知られているでしょうが、その次くらいの頻度でアレンジに入ってくるのがアコーディオンだったりします。面白いですね。多くの人が、実際耳にして音は知っていてもそれと気付いてない可能性が高いと思います。非常にきれいなオルガンのような音です。演歌の生演奏ライブも少なくなったので、実際演奏を見る機会もそんなにありませんしね。

 で、まあジャンルの定番楽器だけに、演歌のアレンジでアコーディオンを入れても全然違和感ない、というか大歓迎みたいな雰囲気が、リスナーさんにもクライアントさんにもある。他のジャンルだったら大冒険になってしまうんでしょうが、演歌は違うんですね。結構他の生楽器もアレンジにガンガン入ってきます、それが演歌のフォーマットなので。自分なんかはこういうのも高品質な打ち込み音源で再現していますが。

 ここで有言実行、実例を紹介しますね。
 アレンジにアコーディオンを入れた曲が、昨年発売のヒカリ真王子(まおじ)さんのCD「女ごころ」という曲になります。


 作詞作曲は「あいたかし」さん、この曲はカバーで、弦央昭良が編曲・ミックス・マスタリングを担当させて頂きました。もし機会がありましたら一度どこかで是非。どの音がアコーディオンか当ててみてください。

(アコーディオンという楽器は面白くて、昔は日本でも大流行したり、本当によく使われていたんですね。RolandのV-Accordionを待たずとも、電子化もされていて、’70年代にはトンボ楽器が電子アコーディオンを作っていたようです。同じ頃KORGも電子アコーディオンを出しているはず。面白い展開でした)

ストリングス問題

 本物のストリングスなのに、なぜか打ち込みに聞こえてしまうという問題。自分には結構前からあるんですね。TVやYoutubeなどでオーケストラの弦やスタジオ弦が映っているのに、なぜか打ち込み(サンプリング音源)に聞こえてしまうというアレです。
 最近耳が良くなったからなのか? はたまた? とりあえず昔、音楽マニアだった時代にはそんな現象はなかったのですが。
 なんでこんなことが起こるのか、ちょっと考えてみました。

 まず前提として、打ち込みのストリングスの音を知っていないと、こんなことは感じない、というのがあります。なので音楽制作をしている人間特有の問題なのかもしれません。

 「ストリングス音源」の音というのは、もちろん音源作製の段階で音質的にも音程的にもかなり処理されているので、かなり整った音ということになります。ここが乱れていたら音源として売り物にならないので。(逆に、フリー音源や超安価なスケッチ音源などでは、かなりおろそかにされている。最も手間もお金もかかる部分)
 またレガート等各種奏法も網羅しているので、これらを自然に組み入れるソフトウェア・エンジンも完備し、それで全体として非常に美しいストリングス・サウンドを実現しているわけです。今の主要音源は全部そう。
(とはいえ、いわゆるシンセストリングスではないので、生サンプリング特有の微細な「乱れ」はある。そこがリアルさに繋がる)

 問題は、本物のストリングスがなぜ音源のように聞こえてしまうのか。今回考えてみて思い至ったのですが、それはつまり生ストリングスがずばり音源並の精度の演奏に近づいている、もうそのものになっている、ということではないかと。つまり、奏者の方々が非常に正確な演奏をするようになった、ということ。これしか考えられないですからね。もちろんトップレベルのプロ限定ですが。

 思い起こしてみれば昔の弦は、大抵は今のように正確無比な演奏ではなかったのです。ピッチが悪かったり、リズムが乱れていたり、それが普通にプロのスタジオ演奏でもあった。また音質的なところでも、いまのような超ハイファイ録音というわけでもないから、それが生々しいリアリティに繋がっていた。
 今は演奏正確だわ録音は完璧だわで、皮肉なもので(?)音源に近づいてしまっている、ということではないでしょうか。それで生なのに音源に聞こえてしまうわけです。

(商用音楽でサンプリング音源が全盛になった時点で、大半のスタジオ弦奏者は職を失いました。今残っている弦の皆さんは、音源以上のクオリティで演奏できる人ばかり、ということに当然なります)

 こう考えるとかなり面白いところです。ここで制作屋としては、逆に音源を生々しく聞かせるにはどうしたらいいか、という難題にもぶち当たるんだけど、このあたりの話はまた今度(w)。

恐縮です。Amazon 1位獲得

 再三お知らせしている、ヒカリ真王子さんの新曲「見つけて群馬」ですが。
 昨日の17時台&18時台のAmazonデジタルミュージックの演歌ランキングで、なんと堂々の1位獲得しております。

Amazon 売れ筋ランキング: アルバム – 148位 (アルバムの売れ筋ランキングを見る)
87位 ─ J-POP (アルバム)
1位 ─ 演歌・歌謡曲・その他邦楽 (アルバム)

 こんなに応援して下さる方がいるとは思いませんでした。制作させて頂いた立場として、改めて皆様にお礼を申し上げます。
 やはり良い曲を良い歌手の方が歌って世に出せば、ちゃんと理解してくれる方がまだまだたくさんいらっしゃるのだな、と、胸が熱くなりました。
 今後とも初心貫徹の意気で制作して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

「見つけて群馬」Amazon 6位

昨日深夜の時点でのデジタルミュージック・ランキングにおいて、「演歌・歌謡曲・その他邦楽」で6位を達成しました。

Amazon 売れ筋ランキング: アルバム – 678位 (アルバムの売れ筋ランキングを見る)
266位 ─ J-POP (アルバム)
6位 ─ 演歌・歌謡曲・その他邦楽 (アルバム)

こんなに聞いて頂けて、制作させて頂いた側としても大変幸せです。
皆様、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

「見つけて群馬」配信開始

 先日こちらでPVをご紹介したご当地ソング「見つけて群馬」ですが、主要各配信サイトで配信が始まりました。

アーティストページ
https://www.tunecore.co.jp/artist/Hikari-maoji

 気鋭の新人演歌歌手「ヒカリ真王子(まおじ)」さんの熱唱が光るコミカル曲です。ソフトで甘いハートフルボイスでの演歌は、現代的で稀有な存在感です。
 これからぐんぐん活躍されていく方なので、いまヒカリ真王子さんのファンになっておくとおトクですよ。どんどん階段を駆け上がっていくところをリアルタイムで体験できます。こちらの奥様方や、そちらのお嬢様方も、いかがでしょうか。

ファーストガンダムの音楽

 TVシリーズ「機動戦士ガンダム」(1979年)、いわゆるファーストガンダムをYoutubeで無事見終わったけど、改めてみるとBGMも素晴らしいですね、これ。
 当時はまだサンプリング音源も(+ハードサンプラーも)ない時代なので、レコード会社のスタジオには生の弦やブラスが待機しており、当然作曲家はそれらを好きなだけ使うことができた。いや、むしろ使わなければならなかったでしょう、良い劇伴を作るためには。
 電気ピアノ(ローズ)はあったけど、ちょうどここへシンセなんかも入ってきてた時代なので、シンセドラムも入ったり、それでいてティンパニや女性コーラスもいる。生楽器主体ではあるが、なかなか面白いサウンドになっています。考えたらこのアニメの放映もギリで70年代なんですね。ちゃんと時代の音になっている。
 弦の低いところで迫力あるリフを奏でたり、ブラスやトランペットの流麗なフレージングとか、アニメの様々なシーンを盛り立てるBGM群。名曲揃いといえるのではないでしょうか。
(音楽は大ベテランの渡辺岳夫さん、松山祐士さん)
 ちゃんとスタジオストリングス、スタジオブラスの音になっている、これがもっと編成が大きくなるとまた違う音。
 懐かしいなあとか、興味が湧いてきた、なんて方は、一度どこかで是非。

(おまけ:確か効果音作りにシンセが使われた始めた時代の走りで、ガンダムのビームライフル発射音などはARP2600で作っていた、と聞いた。これは「宇宙戦艦ヤマト」も同じ)

(おまけ2:この直後1980年頃からハードサンプラーが導入され出して、だんだんスタジオが生の弦や菅を使わなくなるんですね。失業者が多数出たわけで、皮肉なものです)

アフロな「JIMSAKU IN THE HOUSE」公開

 とうとう完成、さきほどYoutubeで公開しました。

 今回は、アフリカンなエスニック色を取り入れ、「リモートアフロmix」としました。

 原曲は4バージョンほど公開されていますが、その中からドラムのみ・ベースのみの動画を使っています。DAWのトラックにいれてモニタヘッドフォンで聞くと余計にわかるのですが、とにかくお二人のアンサンブルは鉄壁。素晴らしいグルーブ感とコンビネーションで、完璧すぎてこれまた付け入る隙がない(w)。
 そこで、あえてドラムだけ、ベースだけのパートを作り、楽器やループを重ねました。これでドラム+ベースに戻すと、アンサンブルの良さが際立つということもあります。
 今回は、クラブ色のある曲と思いましたので、コンストラクションキットみたいやつでループやらボイスも積極的に使っています。
 随分変えてしまったけれど、これまた怒られないかな~?

(曲よりも動画制作で四苦八苦したのは内緒ですw)

「JIMSAKU in the house」in youtube

 実は、先日の野呂一生さんの「A・RI・GA・TO」に続いて、このような超・見逃せない参加型動画もアップされています。

 JIMSAKUといえば、言わずと知れたドラマーの神保彰さんとベーシストの櫻井哲夫さんのフュージョンのユニットです。ちょうど結成30周年だそうで、プロジェクトが立ち上がっているのだとか。
(この曲は、神保さんがこの企画のために書き下ろした新曲)

 カシオペアを聞いて育った人間としては、何もしないわけにはいきません。いや、むしろやるな!と言われてもやります(笑)。
 ドラムだけ、ベースだけ、という動画もアップされているので、かなり面白いことができそうです。
 というか、もう数日前から色々と試行錯誤してます、例によって仕事の合間を縫って。
(大変有り難い話なのですが、また2曲ほどお仕事を振って頂いています、今←もちろん別口ですよ)

 完成したらまだ動画にして公開したいと思います。乞うご期待!?

TOP OF THE WORLD

 「TOP OF THE WORLD」はカーペンターズの曲ですが、今の自分はまさに世界の頂上にいる気分……。
 なんと先日Youtubeに上げた「A・RI・GA・TO」のアレンジに、野呂一生さんご本人からコメントを頂きました。なんともまあ勿体無いと言いますか一体なんと表現すれば……。
 「ひえっ」と声が出てしまったことは事実です。その次に、悪戯(騙り)ではないかと思ってしまったのは内緒です(汗)。他の方のコラボ動画を見て、そちらでもコメントされているのを見て、ようやくこれはご本人だ!と……。
 そりゃそうですよ、あの野呂さんですから。人に言っても信用しないんじゃないかな? 少なくとも数年前の(音楽マニア時代の)自分に言っても絶対信用しないでしょう。
 音楽やっているとこんな驚くべきことも起こるのですね、音楽本当に凄い、そして怖い。
 怖いって書いたのは、本当にいいのかな~という名状し難い不安(正直ビビってます)。頂上って書いたけど、そこから足を踏み外せば奈落……うーん(w)。

 とりあえず、これを励みに、カシオペアっ子として育った不肖この私、引きこもり系(リモート?)作曲家として今後ばく進、邁進します。
 とり急ぎ決意表明。しかしいいのかな、これ…。嬉しさ半分、不安半分。まさかこういう気分になるとは。
 実は2020年は何かありそうだなーと年始に思っていたんだけど、これだったのか。