月: 2021年1月

新年シンフォニックジャズ

 大晦日~新年の年またぎの時間帯で毎年TV東京でやっている東急ジルベスターコンサート、東京フィルハーモニーががっつり演奏を聞かせてくれるのですが、今年も行われていました。コロナのため、チケット払い戻しで無観客だったのに、堂々の全プログラム演奏。東急の男気を見た。といっても後半少ししか見られなかったけど、これがちょうど良いところだったようで、なんとジャズの小曽根真トリオが出演、東フィルとのガチ生共演ですよ。曲は小曽根さんオリジナルの「No Siesta」でしたが、物凄かった。この曲、結構なアップテンポの16ビートジャズなのですが、完全にフルオケアレンジされていて、複雑なキメやらハモやらギミックが絡み合い、それらを全部小曽根さんのピアノが引き受けてリード、圧倒されるうちに6分以上にも渡る曲が終っていた。まさにシンフォニックジャズの頂点、テンションボイシングの宝石箱や~、って感じ。
 この「No Siesta」という曲、原曲もかなり複雑なグルーブ感で、トリオ編成でありがながら、16ビート+8分裏打ち+ピアノ左手リフが交錯してます。それをそのまんま東フィルが踏襲してくるとは……唖然。海外有名フィルでもバンドとの共演だと全くリズムに乗れてない演奏はよくありますが、東フィルさんは違いますね。コンサートマスター席の女性が、弦が休みの時にトリプルグルーブで身体を揺らせていたので、これは確実(笑)。
 いやー新年早々とてつもない演奏を聞かせて貰いました。お陰で1年分のパワーを貰った感じ。もしどこかで見られる機会があれば皆様も是非。
(一体どうやってこんな演奏を仕上げたのか。今オケも感染考えたら命がけなわけで、その気迫が乗っていたのかも……。指揮者の方は大変そうでしたw そしてこのオケに負けない小曽根トリオのパワーこそ超一級。グルーブは結局トリオが司令塔なので)

年末年始の音楽番組

 紅白歌合戦少しだけ見てたけど、なんとか話題のYOASOBIのパフォーマンスを見られました。「夜に駆ける」って初めてちゃんと聞いたけど、こういう歌だったのか。ラップかと思われるくらいギッチリ歌詞を詰め込んだ、いかにも現代的な、というかモロにボカロ曲っぽいナンバーだと思った。メロについては息継ぎや歌いやすさ無視だもんね。ボーカルの人は非常に達者だったと思う、TV初出演とはいえYotubeなんかでライブみたいな動画も上げてたそうですね。あと、曲調としてはちょっと70年代洋楽の影が見えますね。もっともベースやドラムは現代ロックな感じだけど。まあ、世間ではあんまり気付かれてないようだけど、あれは「演奏のフリ」で実際は演奏してませんから…。失敗を避けることを考えたら仕方ないのかな。ボーカルは確かに生でしたよ。今後が非常に楽しみなユニットでした。

 あと、その直前に歌ってたOfficial髭男dismも見られたましたが、こっちも昔の洋楽っぽい感じがある。こちらもピアノとボーカルだけは生ですが、他はアテフリだったと思いました。こういうのNHKでは流行なのかな。(ピアノもちょっと怪しいな?)
 以上ボヤッとした感想です、妄言多謝。

 元日夜のNHK-FMの「坂本龍一ニューイヤー・スペシャル」、途中から拝聴。ちょうどスイッチ入れたら生演奏の途中だったらしく、効果音の紹介?それとも「音の風景」(お馴染みラジオ番組)かと思いました。面目次第もござらぬ。ノイズミュージックですね。調性や音程・リズムに捉われないやつ。しかし自分には難解でした。作曲家の大伴良英さんとのコラボだったのですが、そのあとの対談で、演奏中にどうしても自意識が邪魔になる、音楽的な経験から頭でつい考えてしまうから、無意識にまで持っていきたい、というお話が興味深かった。(お二人とも、作曲家と同時に演奏家でもあられるので)
 関連して坂本さんが、花鳥風月ってどうですかと大伴さんに質問。若い時は「けっ」なんて思ってたが、50歳を過ぎてからあるとき何でもない鳥の美しさにハッとした、それから身近な自然の流れを意識するようになった、とのこと。もしやノイズ音楽の理想ということでしょうか。あと一番身近な自然は人間の(自分の)身体である、というお話。
(今ようやく気付いたが、この対談自体もノイズ音楽の一種だったといえるかも。調性(統一性)とかなかったしw 深い!)

 二人目のゲストは人文学者の先生で、ベートーヴェンの第九の成り立ちと、「喜びの歌」の歌詞に衝撃的な一節がある話。「この喜びの輪に加われぬ者は泣きながら去れ」みたいな排斥の論理を叫ぶ箇所があり、これはドイツのナチズムにも関連していたのではないかという指摘(実際にフルトベングラーがナチズム下のドイツで演奏した音源が流れ、これは歴史的な名演と言われているそう)。あるいはベートーヴェンは人間社会の光と影を織り込みたかったかという、先生の指摘。

(私見ながら、第九レベルの芸術作品でしたら、あんまり表層的な解釈はしないほうが良いように思いますが。色んな解釈を許す深みがあるので)

 このあたりで時間切れでした。
 なかなか濃い年末年始でした、ってもうひとつ書こうと思っていたがまた次回。