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NIのNTKdaemonのトラブル

 どうも最近DAWを使っていると定期的にブチブチ音が入ってきて、これが非常に軽いプロジェクトの時でもそうなんですね。大抵こんな時はオーディオインターフェースのドライバをアップデートすると直るんだけど、YAMAHAのサイトを見たら去年が最新の更新という、非常に安定したバージョンだった(ここは不具合は放置しないメーカー)。

 何だかネット絡みな気がして、試しにネット切断したら途端にノイズが止まった。どうやら不審なプロセスがバックグラウンドで何かを送信してる可能性が大。タスクマネージャーでネット接続のグラフを見ると、なんと10秒ごとに送受信の山が出来てやがる。
 で、モニターとにらめっこして色々やって、何が犯人か突き止めました。その名は「NTKdaemon」。なんとNative Instrumentsのデーモンプロセス(常駐ソフト)であった(w)。試しにこいつを終了させるとピタリと送受信とノイズが止まったからね。おいおい……。なにしてくれてんの?

 ググってみたら、以下のNIのフォーラムで話題になっていた(2019年)。

https://www.native-instruments.com/forum/threads/ntkdaemon.348397/

 NIの公式回答があるが、sound.com (Machineなんかで使えるサウンドライブラリ)との連携を図るために動いているデーモンプロセスなんだって。今のところ自分は利用予定ないからサクっと停止させちゃって問題なさそう。
 で、やっぱりこのプロセスのせいでトラブルが起きているというMachineユーザもいるようだ。

 ということで、”Native Instruments is watching you”――ただし同社のソフトを使っている人だけですが。

(ノイズはパソコンリセットしたら直りました。たぶんそっちは複合的な要因だろうと推測)

サンプリング音源の国別カラー

 楽曲制作してて気付いたんだけど、サンプリング音源にも国別のカラーが厳然としてあるね。国別といってもざっくりヨーロッパ・アメリカくらいの区別だが。
 普段使っている音源は欧州製で固めているけど(現在の制作環境だと皆そうなると思う)、そこへSoundironの音源を入れてみたんですね。(Traveler Organ、Reedオルガンの親玉みたいな奴で、かなり高品質)
 ミックスしてCDに焼いて色んな環境で聞いたみたんだが、どうもそのパートだけ音がクリアで明るすぎて浮いてしまう。気のせいかと思ったが違和感が拭えないので、理由を考えたら「ああアメリカ製だから…」と思い付いた。
 それでトラックにWavesのKramer Master Tapeをかましてみたら、いい感じにサチュレーションが掛かって馴染みました。

 Soundironが非常に高品質なデベロッパーなのは事実だけど(価格もリーズナブル、笑えるネタ音源も多い)、やっぱりアメリカだから、サウンドのカラーがクリアで明るいんですね。他の音源を聞いてもやっぱりそうなっている。
 で、現状の欧州勢の中に入れるときは、多少汚してやるといい感じに溶け合ってくれるようです。逆にいえば欧州の音源は独特のダークさと深みがある。
 このあたり、実際のレコーディングと同様、機材やエンジニアや空気感、更に風土や文化的な違いなんかもあるし、そのあたりは録音物でもあるサンプリング音源にも確実に影響しているようで、面白いところです。機材なんかほぼ世界共通で、なんならみんなProTools使っているのに、やはり違いは出てくる。
(こうやって考えると日本の音源は世界からどう見られているのか興味ある。今は有力デベロッパーもあるし。もしや独特の湿度感があったりする?w)

 Soundironのネタ音源はオモロイし、本気で作った楽器やコーラスの音源は非常な高品質で、UI設計なんかも使いやすい。サウンドのキャラさえ理解していれば、今後もっと使っていけそうです。

(ここのライバルになるのかなぁ? イギリスのSpitfireは、いかにもコテコテのブリティッシュサウンドだもんね←特に管弦楽系。比較するとよくわかる)

音源レビュー「Session Strings Pro2」

 例によってボヤっとしたレビュー(感想)です、まだ一度使っただけなので。

 音質はSSP1に比べて向上している気がするが、かなり大編成になったので(20数人)、Modernパッチを使っても、結構クラシカルな感じになる。というか、これ人数の問題というより録り方が大きいかもしれない。ちなみにデフォルトのプリセットしかまだ試していない。
 インターフェース周りは、整理されて使いやすくなっている気がする。でもまあこれも好みの問題か……。

 たぶんSSP1を置き換える製品ではなく、別の雰囲気を出したいときに使ってくれ、ということだろうか。1もそのままだとシンセっぽく聞こえることがあるけど、ちょっと設定を弄るとかなりいい感じになるので、こいつもパラメータを弄ってやれば変わるかも。

 とりあえず少し聞いただけで大編成だな、ってわかる音なので、普通のポップス曲には大仰すぎる気がします。それこそストリングスをフィーチャーしたバラードとか、そういう方面に合いそうだ。(一言でいって音が「強い」。他のパートの邪魔になる可能性がある)

 あと、チェロを鳴らしていて気付いたが、一部のアーティキュレーションで、ちょっと位相が狂ってるような音に聞こえるやつがある、ミックスすると。本当に狂っているのか、音質の加減でそう聞こえるのは詰めてないが、少なくも1ではなかった現象なので要注意。
(これが事実ならアップデートして欲しい)

 今のところ自分の中では、SSP1の再評価に繋がった使い心地です。

(NIにこの製品を供給しているe-instruments社ですが、国はどこだろうと思ってHP見たらCompanyのところに住所一切書いてない。音源デベロッパーにありがちですが。で、更に調べたら普通にドイツだった、まあクラシカルなのも納得)

Guitar Rig 6 Proを軽く試用

 先日導入したKomplete13CEに入っている「Guitar Rig6」を試しに軽く使ってみた。音質はRig5よりリアルな感触で、少なくともAmplitubeに近い感じになってると思った。……ところが、Ampliと同じく、いざトラックに入れるとそのままでは使いずらい。たぶん本物のギタートラックと同じ処理をミックスでやらないといけない感じ。痛し痒しってとこ。こんなんなら最初から音が作りこまれているRig5で良いんじゃないかと思えてくる。
 たぶん本物のギターを繋いでアンプシミュとして使いたい人には6がいいが、ギター音源で打ち込み曲作るなら5かなあ。まだ少し触ったくらいなのでボヤッとした感想です。とりあえずいきなり5から6にすることはできんな自分は。まず自分の曲で使ってみて様子見ですね。
 今回からギター用のエフェクトラックだけでなく、汎用化されているんですね。シンセやキーボード類にも使えってことらしいが、どの程度使い物になるか、その辺りも徐々に見極め。

 K13で生楽器類も増えたが、なかなか試用してる時間がない。もちろん最初からクライアントさんの曲に使えないから、これもまず自分の曲で試すってことですね。

(Expansionsって、MACHINE用だから関係なかろうと思っていたら、なんとBattery用のデータもあるんですね。今のところノータッチ。Massive X? Super8? 存在すら忘…)

Komplete13U CE導入

 無事10Uから最新版にアップグレードしました。(ご存知ない方へ、業界標準的な位置にある、音源やプラグインのバンドルセットです。たぶん全部使いこなすのは無理なくらいの分量で、ハードディスクに入れて売られています)

 パッケージが随分シンプルになってしまっていて、軽いので最初入れ忘れてるのかと思ったくらい。ほぼ昔のガラゲーくらいのイメージだな。10Uの時はまだ国語辞典くらいのサイズと重量感がありました。

 で、USBで本体を繋いで、専用ソフトNative Accessでインストールしていくわけだけど(この点はシンプル)、まず既存製品のアップデートを16個くらい溜めてしまっていて、最初はその処理w。それが終るといよいよ追加された製品を導入していくわけだが、これてっきりHDDから全部転送できるかと思ったら、結構アップデートされた製品があり、どうもそうなるとダウンロードしにいくんですね。サンプリング音源だと時間が倍増のイメージ。
 あまりに時間が掛かるので、まず初日は5~6個にしておいた。考えたら1日で全部やらず、ボチボチ入れていっても良いわけだ。
 「もったいないから全部」とか欲を出さない方が絶対いいな。わけのわからない音源は、よく見極めてからにしないと。あとReatcor系のシンセは自分は使いません。

 実はいくつかインストール予約して裏で他の仕事をしていたら、デスクトップ画面がいつの間にか真っ青になってタスクバーやら何やらが消滅(w)。昔から結構バグがあるみたい、Native Accessは。サインオフして再サインインしたら直りました。

 生楽器系の音源は随分増えたので、ぼちぼち試用していこうと思います。

Spitfire Solo Violinは結構アレな製品

 ちょっと前「バイオリンのミックス処理」という記事を書いたが、あれからハマりにハマってようやく完成形まで持ってこれた。(というのが先日upした曲)

 で、使用した「Spitfire Solo Violin」ですが、これはアンビエンスまでしっかり含んだ(録音した)音源になっていて、どうやらあくまでフルオケの曲でバイオリンソロの時に使ってね、という位置付けの製品のようだ。アナライザーで見ると、定位もアンビエンスも、まさにオケをバックにソリストが立つ位置で録音されている。一種の時短音源だなこりゃ。
 たとえクラシックでも弦楽四重奏なんかでは全く使えないと思うので、その意味ではフルオケ曲専用って書いておいて欲しかった。
 ご想像通り、そのままではバンドサウンドなんかには全く馴染みませんねえ(w)。
 前述の通り、アンビエンスを全切りするとかなり音の細いモノラル音になってしまうので、それでバンドに入れると(他の楽器は大抵ステレオ収録だし)浮いてしまう。かといってわずかにアンビエンスを入れただけで(一応ステレオ信号になる)、背景に大ホールが見えてしまう(笑)。バンドの中で一人だけホールしょってたら、そりゃ変だよね。

 で、色々やってみたのですが、解決法だけ書きます。アンビエンスを全切り(ドライ)して、コンプ2段掛けで潰して、最後にAIR Stereo Width(モノ信号をステレオに変換するプラグイン、多分類似品OK)をかまします。これでバンドサウンドにいれてもなんとか違和感になく馴染みました。
 ということで、「Spitfire Solo Violin」は、ちょっと癖のある音源といえそうです、検討中の方はご注意あれ。
(なんか、よく読むとソロ弦バンドルの中から、更にバラ売りしているパッチみたい。ケチ臭いことせずに、ステレオパッチもユーザーに公開しろ~! ←こんなことで文句言ってるとクレーマーみたいで怖いか)

使える音源・使えない音源

 皆様お馴染みNI Komplete(U)に入っている音源の話。

 買ってから一度も使ってない、というか存在すら忘れていた音源があって、それが「The Giant」(アコースティックピアノ音源)。
 昔一度使おうとしたら音がなんだか不自然だし、ビルみたいなサイズのアップライトの絵が描いてあるし、なんじゃこりゃ色物音源かと思って放置してたんだけど、ちょっと前思い出して試用してみたら、これシネマチック音源なんですね(いわゆる劇伴用)。そして、ピアノ鍵盤以外の部分を弾いた時の効果音系のやつも入っている。ああそういう用途なのかと納得。しかしどちらにせよ歌物ではなかなか使う機会がなさそう。

 効果音系の音源は使う機会がほぼないのは仕方ないにしても、「Action Strings」なんかも使えそうで使えません。これも劇伴によくあるストリングスの刻みを簡単に再現できるやつですね。
 あと民族音楽系のやつ、ガムランのとかインド・中近東なんかは仕方ないにしても、キューバのやつもなんか駄目。この系統は音色を作り込みすぎていて、本当に民族音楽やりたい時くらいしか使えない。それかやっぱり劇伴か。歌物でこんなにアクの強い音源持ってきたら全体のバランスが悪くなるもんね。
(その意味ではUVIの「World Suite」はよく出来ていて、絶妙のバランスで歌物や普通のインストにもハマります)

 で、結局使うのは……「Abbey Road Studio Drummer」「Session Strings Pro」「Session Horns Pro」「Alicia’s Key」、あとScarabeeのベース全般。なんだか夢の無い話ですが仕方がない。(うちはまだK10Uなので、クロスグレードしたら増えるかな?)あと、ARのドラマーシリーズは、適宜替えて使っています。さすがに録音が抜群に良い。

 Kompleteには不思議と雰囲気ボーカル音源が入ってないので、次の版ではくるかもしれませんね。まあこれもシネマチック音源になっちゃうんだけど(w)。
 クワイア音源も欲しいといえば欲しい。いまはKontaktのFactory Libraryの低品質のしかないので。

 全体的に、歌物制作勢にとってはシネマチック音源というのは鬼門です。楽器音源というより効果音系の用途へ最適化されてることが多いので、作り込みが結構甘かったりする。なので、歌物勢の皆さんは購入時に注意したほうがよろしいかと思います。(プロ諸氏には釈迦に説法かw)

(追記:今日「The Giant」をもう一度確認したら、非シネマ系のパッチもありましたわ。しかしやっぱ楽器音源としては音が変)

Session Horns Proでビッグバンド

 たまには実用記事。
 少し前から、Native Instrumentsのブラス音源「Session Horns Pro」(以下SHP)を、なんとかビッグバンド曲に使えないかと色々やっていたんだけど、良い方法が見つかったので情報書いてみます。
 ビッグバンドブラスの構成の主流は、以下のような感じ。

トランペット x 4
トロンボーン x 4
アルトサックス x 2
テナーサックス x 2
バリトンサックス x 1

 これにドラムス・ベース・ピアノ・ギターが入ったのがビッグバンド。ピアノやギターはいないこともある。ベースは歌伴なんかだとウッドでなくエレキのことも。

 残念ながらこれを再現しようというのはSHPではやや弾数が足りない。なので普通はこうするでしょう。

トランペット x 2 (Tp1 + Tp2)
トロンボーン x 2 (TenorTb + BassTb)
アルトサックス x 1
テナーサックス x 1
(バリトンサックス x 1)

 これでも歌物のバックだとかなり大きな編成で、充分すぎるほど迫力あるブラスセクションになります。余裕で4声のアレンジをクリアできるしね。
 ただビッグバンドと比べると半分くらいの陣容になっちゃうので…。

 個別の同じトランペット音源を重複して使う……って方法は、どうしても位相やらの関係で気持ちの悪いうねりや濁りが出てしまうようです。なんだか音が不自然です。自分はちょっとチューニングを変えたり試行錯誤したがあきらめました。
 他の音源のブラスを持ってくるともっと最悪で、たとえばお馴染みIKのSample Tankとかね、あきらかに不自然なハーモニーになってしまう。全く違うスタジオで録音ミックス実装された音源なんで、合うほうがおかしい。シンセも同じ。
 Kontaktのファクトリーライブラリも駄目でした。あれはSHPの前世代の音源のはずなんだが。

 そこで、なんとかSHPだけで更にスケールを大きくできないかと考えていたのですが、よく見れば個別音源として使えそうな奴がちゃんとあるではないかと。そこでこうした。

トランペット x 3 (Tp1+Tp2) + Fluegelhorn
トロンボーン x 3 (TenorTb+BassTb)+ Tuba
アルトサックス x 1
テナーサックス x 1
バリトンサックス x 1

 バッチリです。実際ビッグバンドにフリューゲルホーンが入ることもあるし、チューバはトロンボーンセクションの最低声部に入ると、不自然さはまったくなし。バリトンサックスは結構音域広いので、汎用的にサックスアンサンブルで使える。

 SHPはそんなに重くないわりに音は非常に良いし、アーティキュレーションも使いやすいのが揃っているので最高。
 たぶんこういう使い方も想定して、チューバやフリューゲルホーンを入れているんだろうな。さすがNIはよく考えてるわ、って改めて納得した次第。

 ミュートトランペット音源だけは、さすがにこのアンサンブルの中には入れないが、ソロなんかでは使えますね。これもかなり自然でバランスがいい音源。

 いかがですか。ビッグバンドは、今はほぼアレンジで使うこともないんで、それ専用音源入れるのも疲れるしお財布に優しくない。SHPなら持っている人も多いからどんどん使いましょう。

 もし足しても不自然でない音源を見つけたらまた報告します。まあアーティキュレーション等が合わなくなるんだけどね。

スラップベース音源の暴発

 スラップベース、自分の世代だとチョッパーベースって言っていたけど、いつの間にかスラップという名になったんですね。これはエレキベースの弦を叩く・はじくなどしてパーカッションのような強烈なアタックをつける奏法で、名前は知らなくても音を聞けば誰でもすぐわかると思います。ちなみに超カッコイイ音です、フュージョンで多用される奏法でもある。
(この奏法の登場で、ベーシストがソリストとしてスポットライトを浴びる機会が格段に増えた)

 そのスラップですが、当然サンプリング音源でもそれを再現したものがありまして、先日それを使って曲を書いていたんですよ。今の音源は、何度も書くけど本当に優秀で、まあミックス前でも実際の演奏と聞き分けは非常に難しい。ミックスしちゃうと、ちゃんと打ち込めばほぼリアル演奏との区別は無理、と思われます。
 ところが、その優秀な音源が、曲の特定の箇所で暴発のような状態になるわけです。意図してないのに「バイーン!」と爆発音のような感じになる。おっかしいなあ、さすがにスラップだからサンプルが均一じゃないのかなあ、とか、ベロシティを下げても同じだし、奇妙でした。それも曲の最初から再生するとそうなるが、途中からだとならない。「???」となりつつも、しばらく放置していたのですが。

 ある時、ミキサーに刺さってたコンプのプラグインを見つけました……ははぁこれかと、いやもっと早く気付けよと。オフにしたら音圧は下がったが、非常に安定した音になりました。犯人こいつでした、って随分杜撰な捜査だなこれ(笑)。
 有名ハードコンプをモデリングしたやつだったので、非常に正直に挙動を再現していたんですね。途中からと最初からで挙動が違ったのもそのせい。
 ただ音質や音圧感は自体は非常に良かったので、解決策としては、こいつのあとにもう1個コンプを挿して更にダイナミクスを潰しました。これで「バイーン」現象も解消して安定した音になりました。

 やはりスラップベースのような、アタックが非常に強い癖のある楽器の処理には、念入りなダイナミクス管理が必要なのかと痛感。昔も使ったけどその時はどうしてたっけか。
 あんまり潰すと音がペタペタになって、スラップベースがスクラップになっちゃう。オヤジギャグが出たところでまた今度。

ストリングス問題

 本物のストリングスなのに、なぜか打ち込みに聞こえてしまうという問題。自分には結構前からあるんですね。TVやYoutubeなどでオーケストラの弦やスタジオ弦が映っているのに、なぜか打ち込み(サンプリング音源)に聞こえてしまうというアレです。
 最近耳が良くなったからなのか? はたまた? とりあえず昔、音楽マニアだった時代にはそんな現象はなかったのですが。
 なんでこんなことが起こるのか、ちょっと考えてみました。

 まず前提として、打ち込みのストリングスの音を知っていないと、こんなことは感じない、というのがあります。なので音楽制作をしている人間特有の問題なのかもしれません。

 「ストリングス音源」の音というのは、もちろん音源作製の段階で音質的にも音程的にもかなり処理されているので、かなり整った音ということになります。ここが乱れていたら音源として売り物にならないので。(逆に、フリー音源や超安価なスケッチ音源などでは、かなりおろそかにされている。最も手間もお金もかかる部分)
 またレガート等各種奏法も網羅しているので、これらを自然に組み入れるソフトウェア・エンジンも完備し、それで全体として非常に美しいストリングス・サウンドを実現しているわけです。今の主要音源は全部そう。
(とはいえ、いわゆるシンセストリングスではないので、生サンプリング特有の微細な「乱れ」はある。そこがリアルさに繋がる)

 問題は、本物のストリングスがなぜ音源のように聞こえてしまうのか。今回考えてみて思い至ったのですが、それはつまり生ストリングスがずばり音源並の精度の演奏に近づいている、もうそのものになっている、ということではないかと。つまり、奏者の方々が非常に正確な演奏をするようになった、ということ。これしか考えられないですからね。もちろんトップレベルのプロ限定ですが。

 思い起こしてみれば昔の弦は、大抵は今のように正確無比な演奏ではなかったのです。ピッチが悪かったり、リズムが乱れていたり、それが普通にプロのスタジオ演奏でもあった。また音質的なところでも、いまのような超ハイファイ録音というわけでもないから、それが生々しいリアリティに繋がっていた。
 今は演奏正確だわ録音は完璧だわで、皮肉なもので(?)音源に近づいてしまっている、ということではないでしょうか。それで生なのに音源に聞こえてしまうわけです。

(商用音楽でサンプリング音源が全盛になった時点で、大半のスタジオ弦奏者は職を失いました。今残っている弦の皆さんは、音源以上のクオリティで演奏できる人ばかり、ということに当然なります)

 こう考えるとかなり面白いところです。ここで制作屋としては、逆に音源を生々しく聞かせるにはどうしたらいいか、という難題にもぶち当たるんだけど、このあたりの話はまた今度(w)。