アナログモデリング系のプラグインを使い過ぎて、マスターから透明感が失われた、という話をしばらく前書いた。ロックとかフュージョンとかアップテンポで元気のある曲なら歪み系サウンドが合うことも多いが、例えば静かなアコースティック系バラードとか、いってしまえば普通のインストでも歪みはあまり歓迎される結果はもたらさない(私見ですよ、無論)。
それで、試しに自分の曲で無色透明系のプラグインばかりでミックスしてみたのですね。シンセとかほぼない、サンプリング音源ばかりの曲で。
それをまた無色透明系のマスタリングに掛けたらどうなったか。
モニターヘッドフォンや、ミニコンポ、リスニングヘッドフォンあたりまでは、なかなか良かった(モニターSPも)。ただ弊社の最終確認環境、フルサイズのステレオコンポで聞いたら……これが、見事に各サンプリング音源の「色」が見えちゃって。NIならNIでまとまってていいんだが、そこにUVIやら、ギターのMusicLabやら(+IKマルチメディア)。ねえ。バラバラなんですよ。ああ、打ち込みで作ったな、というのが丸解りでかなり恥ずかしい状態。これじゃあダメだな、という結論になった。
(たぶんシンセだけの曲なら、無色透明でもイケたはず…)
この時はどうやってまとめたか、というと、マスタリングでちょっと色を付けたんです。すると音源独自の色が消えて、ちゃんと曲としてまとまりました。あまり好きな方法ではないが、色付け系マスタリングプラグインは、こういう風にも使えるのか、という発見をした次第。
これが、ミックスでアナログ色満載の2mixを作ると、今度はマスタリングが透明でないとかなりクドイ音になるからね。
もちろんこういう話は、楽曲の内容やらジャンルやら、色々な要素が影響するから、一概にはこうとは言えないが、常に全体の作業を意識しながら進めないと、成果物がトンでもない代物になりかねないので、注意しないとね。
統一感というのも、ミキシングの大切な要素です。
先日書いたRoland Cloudのソフトシンセ、ZENOLOGYのことだけど、一見動作が軽そうに思えるが(UIもシンプルだし)、意外と重いかも、というかメモリをバカバカ喰ってる予感。
割とプロジェクトサイズの小さい曲で、ZENOLOGY Liteを2本使ってみたんですね。それで急激にDAWがおかしくなることはなかったんだが、曲の完成間近になって、なんとボカロのホストプログラムであるPiapro Editorが、「メモリ不足」のエラーダイアログを吐いて落ちました。直後にDAWも巻き込まれて落ちるという大惨事。
Piapro Editorというのは非常に優秀なVSTiで、これまでこいつが原因で落ちたことって全くない。もう10年は使っていると思うが、ボカロは結構重い処理っぽいのに、クリプトン・フューチャー・メディアは技術力のある会社ってことですね。悪いがRolandよりクリプトンを信じるわ(w)。ハードは優秀でもソフトベンダーとしてはまだあまり信用できる段階ではない。(最近はアメリカのソフトハウスと協業してるが)
結局無駄なプラグインやサンプリング音源(といっても軽めの奴)を外して、メモリや処理能力を開放したら、なんとかこのままでも落ちなくなりました。
たぶんソフトシンセとしての使い勝手より、Rolandサウンドを再現するほうを主眼に設計されていると思うから、普通の軽めのソフトシンセのように何本も挿すというのは、避けた方が良いっぽい。
こうなると、ハード再現系の買い切りプラグインも結構重そうだなと予想。
こちらを立てればあちらが立たず、じゃないけどなかなか上手くいかないもんです。
書こうと思って忘れていた、Soundironの「Hyperion Strings Elements」(ストリングス音源)の使用感、軽くメモ。手持ちのストリングス音源が欧州系のやつばかりだったので、アメリカのデベロッパーであるSoundironの音源を試しに購入してみた。デモを聞く限りでは、なかなかブライトでリッチな感じの、アメリカンで良い感触だったので(一応は期待通り)。
それで早速使ってみたんだけど、困ったことになんだか若干サンプルの処理が荒い気がする。ちょっとザラつき、粒のそろってない感じが聞こえる。
実はこれはある意味リアルで、昔スタジオにストリングスが常駐していた時代の録音を聞くと、今のようにツルツルスベスベの音じゃなく、ザラつきや乱れた感じ、下手すりゃピッチの狂いもしばしばある。(今のストリングス奏者は、昔より遥かに上手い。ミックスのせいもある)
奏法も一通り揃っているし、パラメータの設定も一応は使いやすい。だからその点だけどう考えるか、ってことだと思います。これに比べたらNIのストリングスはかなりサンプルの処理を磨き上げているんだなあ、と。
(ある意味荒っぽいところもアメリカンか?w)
一応、音的にはポップスや劇伴なんかに合う音だと思います。APIのモデリングプラグインを通したら、まさにコテコテのアメリカンサウンドになりそう。持っておいてもまあまあ悪くない音源ですね(たぶん将来上位エディションも出るんだろうな)。
アカウント作ってほぼ放置状態だったRoland Cloudを久々に試してみた。TR-808やTB-303の音があるんじゃないか……という漁り目的。プリセットだけど一応見つかりました。ただやはりFA-06に入っているやつとはまた音が違う。ビンテージのアナログ実機も個体差が大きいそうだし、ベリンガーのクローン、Roland公式のACBデジタル再現系でも違ってくるから、ほぼTRおよびTBでひとつのジャンルといっても過言じゃないな、よく考えたら。巷のVSTのやつまで含めたらかなりの数になる。
ちょっと脱線したけど、Roland CloudはフリーアカウントでもZENOLOGYというソフトシンセが使えるんですね。Liteバージョンでパラメータもあまり触れないけど、CUTOFF/RESO/A/Rとかエフェクトなんかも変更できるので、かなりサービスはいい。プリセットは少ないが厳選されている感じ。
最初見たときは外観がショボいのでテンション上がらなかったが、実用性考えたら余分な装飾いらないし、負荷も軽そうだから悪くないかも?(MIDI Learnにも対応)
音質的には公式だけあって流石のRolandサウンド、VP-330Choirなんて音もあったりする。
サブスクで有料プランにするとZENOLOGYが正式版になって完全なソフトシンセとして使える、あとFXもChorusを始め公式のやつがデジタル化されてる。$2.99/月だが、今円安で高いんだよな。昔のハードシンセもプラグイン化されていて、これは買いきりも可能だがやっぱり高い。
サブスク入会熟慮中だが、他にソフトシンセも既に一杯あって、ZENOLOGYだけで固めるわけにもいかない。それほど出番なさそうだし、迷ってます。
ミキシングでちと痛い目に遭ったので、とりあえずメモ。
シンセポップ調の曲を書いて、バックをふわっとした感じにしたかったんですね。(ドラムもベースもシンセ)
それで、一応普通にリズムもある曲だったので、ミックスで普通のバンド曲と同じように、ほぼ全トラックにコンプを掛けて音を抑える感じで揃えた(つもりだった?)。
どうもミックス中から違和感があって、アレンジを間違えたのか……いやそんなはずは、とか、マスタリング後も、なんだか音が不自然。全般的に平板で、ついでにハイも足りないのでここでもEQで持ち上げたり。
CDに焼いて色んな環境で聞くと、どうもハイファイな環境になるにつれ音がダンゴになってるな、と、まあ歴然と。
ここまで読んで理由がわかった人もいるだろうけど、そう、コンプが原因だったんですね。しかし掛け過ぎってほど掛けてなくて、ほぼピークで若干かかるRATIO1.5-3くらいの軽いやつ。これでも音がダンゴ化した。
シンセは、生楽器に比べてエンベロープもはっきりしているから、わずかな圧縮でもメタメタに効くってこと。今回はシンセポップだったので、余計にその点が目立ってしまった。
というか、バンドサウンドの中のリードシンセなら、そんな感じでコンプを掛けておくと、他のパートと馴染むので良いんですがね。
今回は、ふわっとした感じを目指したのでコンプを念入りに挿したんだが、ダイナミクスが死んだだけでした。
解決策は、ほぼ全てのコンプを外した。そりゃあもう見事にダンゴが解消して、副次効果として、高音域の成分が自然に復活して、変なハイ上げも不必要になった。現代のソフトシンセは上品で、ハイも非常にきれいに出てるからそこを弄るとおかしな音になるんですね。(コンプを掛けると低音に比べてエネルギーの弱い高音が死にがち)
教訓:無駄なコンプは休むに似たり。
(といっても、普通のバンド歌物だと、耳がコンプの音に慣れてるから、掛けないわけにはいかないが……。ボーカルにも絶対掛けるので)
色々と調べて、オリジナルのKontakt音源を試作、というか試作に至るまでの作業手順を試行錯誤してた。
まずは生音源として、フルタ製菓のキャンディー缶(小バケツサイズ)が実家に転がっていたので、こいつをドラムかパーカッションに見立てて、コンデンサーマイクで録音。色んな場所を叩き方を変えて録音。ラウンドロビンを考慮して、4回づつ叩く。ノイズもなく上手く録れました。
意外と普通の部屋は、物がおいてあって吸音もできるし、外来ノイズさえなければキレイに録れることが判明。
これをフリーソフトAudacityの自動分割機能で分けて、Kontaktに読み込ませる。
これで一応、簡易メタルパーカッション音源が完成(?)。
ただ、自動分割だと、意外とアタックは揃うが、リリースの部分で上手くいなかったりする(途中で途切れたりね)。このあたりは分割パラメータを調整するか、手動で切り出す必要があるんだろう。
ラウンドロビンも、設定がわかりづらくて苦労したが、Youtubeに説明動画があることが判明。無事、設定できました。これであとはベロシティレイヤーかな……って思うけど、元がそれほどの音源でもないので、これでいいかと。
まあこんな風に試作するのは難しくないが、これがリリースできるようなクオリティまで持っていけるかとなると、難しいこともわかった。最低限のインターフェースはいるもんね、あとオリジナル背景も欲しい。
世の音源デペロッパーは非常な苦労して売り物を作っているんだな、とわかった次第。
そろそろミックス時のPCの負荷がギリギリのようで、ちょくちょく不思議現象が発生するようになってきた。
もちろんバウンス(WAV化)しています。今は歌物の標準的なプロジェクトで、ボーカルや楽器のトラックが30前後。FXやグループトラック等が20弱。
各トラック、平均2本程度プラグイン挿しているだけ、ボーカルはみっちり挿すが、FXも軽めのやつばかり(良いリバーブやディレイはそうでもないが)。
こんな感じで、PCもWin10で中の上~上の下くらいのスペックなのに、完全にギリギリです。負荷見てるとちょくちょく100%を叩いている。
これで、下手にプラグインを追加すると落ちたりとか、再生すると特定トラックだけBPMが変わったり、とか。
あんまりトラックフリーズするのは好きじゃないが、そろそろ対策していかないと、と思案中。
EQやコンプなんて、無色透明でいいなら、DAWのやつで全く問題なかったりするもんね。WavesのAudiotrackチャンストでさえ大量に挿すと重い。(だから、今度のABILITY4の内蔵プラグイン強化は期待)。
負荷分散ソフトなんかを導入する前に、できるだけやれることはやってみるつもりです。(このテのだって、バグがないかといえばそうじゃないだろうし)
プラグインも、実用性を考えればあんまり処理が重いのはどうかと思う。そりゃCPU能力を大量に使えば音は良くなるんだろうが。理想は負荷レベル違いのエディションが用意されていること。気の利いたデベロッパーだとそうなっているのもありますね。
WavesのNxというプラグインがありますが、これはヘッドフォンでスピーカーの音場を再現するというもの。
スピーカーで聞くと、空気の中でL・Rの音が混ざるから、実はヘッドフォンで聞くのと違う感じに聞こえるんですね。(ソフトになる、といえばいいか)
実際使ってみると、なかなか面白い聞こえ方で、一応まあまあの再現度に思えます。
ヘッドフォンでミックスしている時、最終段にインサートして軽く確認するのには最適。「自然」な感じに音場が広がるので、バランスが取りやすい。(しかし、Nxでミックスの破綻を見つけたことはないなぁ。そのあたり、絶対に本物のスピーカーには敵わない)
前置きが長くなったが、このNxには面白い機能が付いていて、Webカメラでミックス中の自分の顔を写すと、自動で顔の向き&距離等を測定して、なんとスピーカーのシミュレーションに反映してくれるんですね。実際に聞いている時のように音場が変化します。頭を動かすと聞こえ方が変るわけ。
画面を見ているとサイバーな雰囲気で笑えます。
よくもまあこんな簡単な機構でそんなことを実現するもんだと思いますが、さすがにレイテンシ等も発生しており、完璧な自然な追尾にならないようだ。むしろ、しばらくやっていると違和感の方が大きくなる。
やっぱり、玩具のレベルだなあというのが自分の結論だけど、これで気付いたのは、案外ミックス中は身体を変に傾けたり、頭を左右どちからに向けていたりと、「正しい姿勢」ではないのだということ。変な発見をしたのであった。
(NxにはBLUETOOTHかの特製デバイスで追従する機能もある。こっちもレイテンシは出るらしい)
インタネのDAWであるABILITY3で音楽制作をしていますが、最近経験した不思議現象。他のDAWの方にも参考になるかもしれないので書いてみます。
サンプリング音源、ソフトシンセ、簡易ミックス用プラグイン(リバーブやイメージャー程度、軽いもの数本)、合計30トラックくらいのプロジェクト。だいたいミックス前、アレンジの完成時にはこんな陣容になっていることが多いです。
これだけならそのままバウンスして、すぐミックスに入れるのですが。
トラックの1~2本がハード音源をドライブしている場合は、その前に「レコーディング」が必要なんですね。ハード音源の出力をDAWで録音するわけです。
ここで問題発生。
なんと、録音を聞くと遅れが発生しているのです。レイテンシならまだわかるが、これがまあBPMが遅くなるという……。例えばBPM120の曲だったら、BPM115くらいで録音されてしまう。当然曲のラストでは全く合わなくなっています。
不思議現象ですね。どこかのバッファが足りないのか、それともPCの性能不足かと思うが、そこそこ高性能のWin10パソコンなのです。
重いプラグインや、ボカロなどを外してみると、多少は軽減するが、それでも同現象が発生。しびれを切らして全部バウンスしてからレコーディングしてみたが、それでもまだ遅れる。仕方なくその状態で、ハード音源のトラックをソロ演奏モードにして録音すると、ようやくジャストのタイミングになった。
(ここまで軽くしてまだ遅れてた、ってことはたぶんPCの処理速度不足ではないはず)
半年位前までは出なかった現象なので、たぶんどこかのアップデートでエンバグしてるんじゃないかと勘ぐっている。むろんWin10の方のアップデートのせいかもしれません。あとは当環境だけの独自現象か?(だとしたらイヤだなあ)
……などと考えていたら、ABILITY4が出るんですね。この件、直っているといいんだが。
ということで、まあなんかの拍子にノイズが入ることもゼロじゃないし、ライン直結=超優良環境のハード音源のレコーディングでも、最後まで確認した方が良い、という話でした。
(今回、何トラックもハード音源録音してから気付いたのでキツかった 汗)
アナログモデリング系のチャンネルストリップを結構使っていて、具体的にはWavesのSSL(G/E) Channelだけど、以前も書いたがこれは結構はっきり「色」がつくので、ポップス系には迫力が出ていいんですね。
ただ多トラックで使いすぎると、音が濁るみたいな現象が出てきて、ミックスに透明感がなくなりますね。(というか、なんだか落ち着かない奇妙な音になる)
一種のサチュレーターと言ってもいいんじゃないだろうか。サチュなら全チャンネルにかけるという人は(多分)いないだろうけど、チャンストはつい便利だしどんどん使ってしまって、気付いた時にはマスタリング後の最終段でなんでこんなにぼやけているんだろ……と悩む結果になる。
今回、それがどうしても曲調に合わなかったので、チャンストの大半を普通のコンプやEQに替えてみたら、音がクリアになって驚いた。
なんでも適材適所だなあ、とは思うけど、下手をするとABILITYの組み込みEQやCOMPやサチュで足りて、一体なんなんだ、と思ってしまった。これで間に合うならプロジェクトは非常に軽くなる。
ただし、確かに「マジック」はなくなるので、そこは外部の良質なサチュを挿すなり、ステムに色づけ系コンプやEQを通すとか工夫がいるかも。(あるいはマスタリングの仕事か)
アナログモデリングを有り難がるのもホドホドにしないとね。それより基本に忠実に腕を磨いたほうが、最終結果は良くなる。