現代の音楽制作環境は、パソコン上でソフトシンセだけでなく、サンプリングでの生楽器も縦横無尽に使えるわけですが(それも極限までリアルなものが多い)、こうなると理論上は古今東西のどんな楽器でも組み合わせて曲が作れるわけです。オーケストラをバックに三味線が演奏してもいいし、ラテンパーカッションとカリンバとシタールが共演しても良い。とはいえ前衛音楽でなく、一応人様に聞いて貰ってナンボの商業音楽なら自ずから制限もあるわけですが、どんな編成にするにせよ、意外と選択の幅がない部分があります。制作やっている方はもうお気づきでしょうが、それは(楽器でなくパートとしての)ベース。
普通の音楽(機能和声を主体にした西洋音楽)だったら、ベースはとても重要なパートですね。コードのルートを決める部分であるし(ここがしっかりしてないとコードが正しく響かない)、大半のポピュラー音楽にとっては、ドラムスと一体となって楽曲のグルーブ感を司るパートでもあります。普通のミックスでは意外と聞こえづらいことが多いのですが、とはいえ重要度は高い。ご存知の通り、ここで使われるのはほとんどの場合エレキベースなのです。
実は、低音にも関わらず音がクリアで(ブーミーでもなく)、しっかりダイナミクスが付けられ、細かいグルーブ感も自在に出せるという低音楽器は、案外ないのですね。
鍵盤ならピアノ、オルガン、エレピ、どれも違うし(各々他の仕事あるし)、可能性があるならクラビネットか。あとキーボードならシンセベースくらい。
金管楽器ならチューバ、ユーフォニウムなど、ただ音がブーミーで独特なのでハマる曲が限られてくる。
木管ならベースクラリネットかファゴット、これも独特で汎用性は低い(音量も出ません)。
弦楽器ならウッドベース、これもジャズならともかく、色々な制限がある。(ミックス処理も必須) 弓弾きならまた曲が限られてくる。
いかがですか? こうしてみると、意外と汎用的に使える低音楽器というのはEベースしかないんですよ。エフェクターにも通せるし、アンプに繋いでもダイレクトでも良い。クラシック以外どんな分野でも使えるスーパーワイドルカードという感じ。(ジャズでも使われる、代表例ジャコを思い出せw)。チョッパー(スラップ)という強力な奏法もあるしね。
ミックス的にも、一般に低音楽器は録音や処理が難しく、ライン録りできるEベースは非常に楽ということもいえる。もちろんこれはPAでも同じ。
逆に、Eベースが無かった時代はどうやってバンド演奏等でベースを鳴らしていたんだろうと不思議になる。ディキシーランドジャズの時代はチューバだったり、モダンジャズも最初期はウッドベースを弓弾きしていたと聞いた。
あとはピアニストがベース音を鳴らしたり……という方法でしょうか。(オルガンなら足鍵盤がありますね)
バンドアンサンブルにとってEベースはEギターと並んで、いやもしかしてそれ以上の大発明だったかもしれません。……という話でした。
(オーケストラだと、コントラバスとチェロをオクターブユニゾンで鳴らしたりして、意外とベースパートの安定化・音量稼ぎには苦労することがある。そこもEベースなら問題ない)
NHKR2ラジオの「今もう一度ジャズ入門」最終回。ジャズ評論家の後藤雅洋氏による現代ジャズの紹介。
ジャズというと、僕らは1950-60年代のモダンジャズを一般には思い浮かべますが(マイルス・コルトレーン・ビルエヴァンスとか)、70・80・90年代にも色々な面白い動きがもちろんあり、特に2010年くらいから非常に興味深い動きが出てきているということです。
そのひとつが、女性ボーカルの大フィーチャーだというのですね。エラ・フィッツジェラルドやサラ・ボーンなどの伝統的な歌唱スタイルを継承しつつも、インストゥルメンタルとの融合・調和のような曲がたくさん出てきた。それはコーラスやボイスを積極活用し、声(歌)も楽器の一つとして使う。従来はジャズボーカルとインストの間にはファン層でも垣根があったが、それがなくなってきた。この種のライブに行くと、従来のジャズを聴いてないだろうと思われる若い人もたくさん見かけるそうです。普通にセンスのいい洋楽と思われているのでしょうね。
そこで、インストプレイヤーのアルバムにも普通にそんな女性ボーカル曲がばんばん入るようになってきている。
加えてもうひとつは、女性ミュージシャンの活躍とエスニックな要素。これまたコーラスと融合したりして、楽器のプレイ・音色もその人なりの個性があり、独自の世界を作っている。
●グレッチェン・パーラト「許してあげよう」
(現代女性ジャズボーカル)
●ヌバイア・ガルシア「クンビアが私を呼んでいる」
(女性テナーサックス+コーラス+エスニック)
●シャバカ・ハッチングス(サンズ・オブ・ケメット)「マイ・クイーン・イズ・ハリエット・タブマン」
(男性テナーサックス+チューバ+ツインドラム、モダンジャズ黄金時代にも通じるホットさ、確かに聞きやすい)
3曲紹介されていましたが、いずれも確かにポップスでもR&Bでもラテンでもなく、これはジャズ。
同じブラックミュージックでも、ディアンジェロなんかは既存の金太郎飴R&Bへのアンチテーゼで手作り感満載の音楽ですが、あれも非常にジャズっぽい、実は(でもジャズじゃないんだね、明らかにミームが違う)。
だから、既存のマスプロダクション音楽に飽きたリスナーには、これらのPOPな現代ジャズは、非常にウケるんじゃないかと思いました。
やっぱり女性ボーカルは偉大。音楽のなかで昔より大きなウェイトを占める要素になっている、現代では。(女性クリエイター、プレイヤーは言うに及ばず)
などということを思った夜でした。やはり良い音楽は評価されて欲しいし、広まっていって欲しいですね。
(明日までまだギリギリ聞き逃しサービスで聞けるので、ご興味のある方は是非)
ここでたまには宣伝! 女性ボーカル・コーラス・ジャズギターをフィーチャーしたフュージョンもありますよ。なんと無意識にやっていたことが現代ジャズの到達点と重なっていたとは……。
2週に渡ってラジオで続きを聞いていたんだけど、これまたジャズの代表的レーベル「Riverside」と「ECM」の話では、極めてまともでお笑い要素ゼロでした(本来それが当たり前で、Prestigeが面白すぎたw)。
まずRiversideの特徴は、ジャズ評論家がレーベルを取り仕切っていた(経営は社長が別にいて、そちらで行っていたらしい)。ジャズ評論家というと一見マニアックな方向に進みそうだが、実際は逆で、業界全体、一般音楽ファンまで見据えてバランスの取れたレーベル運営やプロデュースを行った。例えばBLUENOTEやPrestigeで録音したが目が出なかったセロニアス・モンクを、良質なプロデュースでブレイクさせた。また地方のファンしか知らなかったウェス・モンゴメリーを拾い上げて録音し、これまた大ブレイクさせた。またビル・エヴァンスの絶頂期を捉え録音した。
「ECM」はヨーロッパ発(ドイツ)のレーベルだが、なんと創設者はベルリンフィルでコントラバスを弾いていた人。なので(これも有名だけど)楽器の原音に近いナチュラルで透明感のある録音で、音を「作って」いるアメリカのレーベルとは一線を画した。ただ、若干の演出はあるそうで、自分もリバーブは掛けていると思います(スタジオアンビエンスだけではない)。録音はノルウェーのオスロが多いそう。チック・コリアのソロピアノやキース・ジャレットの録音など、独自性のある数々の名盤を出している。ヤン・ガルバレク等、欧州勢の紹介にも積極的。
……ね、まともでしょ?(w) 本来いちジャズマニアやコレクターがレーベル運営しようというのは、おかしな話ではありました。それがBLUENOTEやPrestigeなんだよなあ。
これでレーベル系の話はおしまいのようです。
あと、書き忘れていたけど、今のいかにもジャズアルバムっぽいジャケットのアートワークってありますが、あれはBLUENOTEが元祖だそうです。そういった意味でも、ジャズのイメージを決定づけたレーベルといえそうです。
前回最後に書いた放任主義のレーベル、これはもう完璧主義の「BLUE NOTE」とは全てが正反対だったそうですが、その名はなんと……「Prestige」。おい待て嘘だろ、とジャズ好きの方は言われるかもしれませんが、後藤雅洋氏の話によればそうだったらしい。あの一杯名盤を出しているレーベルが、驚きですね。
BLUENOTEは移民のA・ライオンが設立したのですが、Prestigeはアメリカ人のレコードコレクターのB・ワインストックが設立。やはりここも当時は中小企業で(インディーズといった方が多分早い)、初回刷り枚数は500-1000枚がせいぜいだった。
ここはレコーディングに当たってリハをほとんど、あるいは一切やらせなかったらしい(w)。とにかくテープを回して、ミュージシャンを放り込んで好き勝手にやらせて一丁上がり、という方針。プロデュースも何もないです、時間(金)が惜しかったのだろうな。スタジオだって時間貸し。
それでもあれだけ名盤を出せたのは、一重に時代状況が良かったせい。1950年代中盤のマイルス・デイヴィス・クインテットが典型だけど、今から考えると世界的なプレイヤーが壮年期でノリにノっている時なんです。そんな人達がスタジオで好きにやっていいと言われたら……もうわかりますね。モダンジャズが芸術として花開いていく時代だったし、それを無造作に記録するだけで、世界中のミュージシャンが今でも聖典と崇める名盤が次々と生まれてしまったのです。
ドイツの完璧主義から生まれたのがBLUENOTEなら、正にアメリカの実践主義から生まれたのがPrestigeだったわけ。
後藤氏によると、マイルス・クインテットには面白い逸話があって、当時Prestigeと契約していたんだけど、なんとメジャーレーベルのCOLUMBIAと契約が取れてしまった。それでマイルスはPrestigeとのレコーディング契約を一刻も早く消化しようと、2日で4枚のアルバムを録音してしまった(w)。無論リハなんて一切なかったらしいが、これでも名盤が生まれてしまう、当時の状況なら当然ともいえるでしょう。(曲が流れていましたが、さすがに若き日のコルトレーンも準備不足で冴えないソロでした、初見だったかもしれんw)無茶するわー、この人。
こんな感じだったので、売れるかどうかわからないミュージシャンもスタジオに放り込まれて録音ができた(ある意味幸運)。結果玉石混淆なんだけど、後に有名になっていく人もいて、その代表格がエリック・ドルフィーだったとのこと。
なおここは運営も緩いが金払いも(悪い意味で)緩かったらしく、ギャラ未払いを連発していたらしい(w)。もしかして当時の名盤でギャラを貰ってないプレイヤーがいたかもしれません。
また何かラジオで聞いたら書きますね。(番組名→NHKR2カルチャーラジオ~「今、もう一度ジャズ入門」)
ラジオで聞いた面白い話。ジャズ評論家の後藤雅洋氏によると、世界屈指といっていいジャズレーベル、アメリカの「BLUE NOTE」ですが、始めの頃は本当に中小企業のような感じで、レコードの刷り枚数も初回500枚とか1000枚だったらしい。レーベル設立者はA・ライオンというユダヤ系ドイツ人の移民で、移民だからこそアメリカのジャズを「外」からの視線で芸術として評価できた。(米国内ではあまりに身近なので正しい評価が難しかった)
あと、BLUENOTEのアルバムは、プロデューサーでもあったライオンの考えで、実は非常に作りこまれた「完成品」であった。コンセプトに沿って何度もリハーサルし、アドリブも練りこんでから本番の録音をしていたらしい。実例の曲が流れていましたが、そういえばミスもないし非常に流麗にプレイしている。ある意味ジャズの生っぽさからはちょっと離れているんですね。
ライオンは、リハにもミュージシャンにギャラを払うという徹底っぷりで、自分のプロデュースを貫いていた。また著名なレコーディング・エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーに指示して、徹底してミドルの音域を強調した音作りをした。それは当時の黒人家庭は裕福でなく小さなスピーカーしかなかったため、それに合わせたとのこと。
後藤氏が例としてバド・パウエルの曲を流したあと、「ほら、これってホントのところ実際のピアノの音からかけ離れているでしょ?」と言われたのは衝撃でした(w)。まあ確かにそう。だから当時の曲を今聞くとややストレンジなのは、モノラルとかレコーディング機材のせいばかりでもなく、極端な音作りの結果ということもあるらしい。ただ、“作った”ウッドベースの音もそうだけど、名盤の数々がこういう音で録音されてしまったので、それがジャズのスタンダードになってしまった面もあるとのこと。
また移民から見たジャズなので、音の“黒人音楽っぽさ”も強調していた。
もともとライオンはジャズマニアだったそうですが、完成品を作ってしまうあたり、完璧主義のドイツ人といえばドイツ人らしい。
逆に超放任主義のレーベルもあったそうですが、この話はまた次回。
季節の変わり目、皆様どうかお身体はお大事になさって下さい。(個人的には早く花粉の季節が終わって欲しい…)
キーボーディスト向谷実さんのラジオ番組をらじる・らじるで拝聴。
音楽遊覧飛行 ▽音楽急行~笑顔のジャズ・フュージョン・ナンバー
2月8日(月)午前9:20放送
2021年2月15日(月) 午前10:00配信終了
https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=2298_01_2722229
聞き逃し配信なのでもしや曲の部分は無音か?と心配していたのですが、ちゃんと入っていました。向谷さんの語りが凄くダンディで渋い!これは令和の城達也か、フュージョン界の若山弦蔵かっていう雰囲気ですね。(←ヨイショw)
暗い世相を吹き飛ばそうとスマイルがテーマで色々な曲が聞けました。神保彰さんの新作から「ユア・スマイル」や、カシオペアの’81年の懐かしい曲「スマイル・アゲイン」も流れていました。この頃はもちろん向谷さんがキーボード担当ですが、20代でこんな曲を書く野呂(一生)さんは天才か、と弾いていて思ったそうです。実際、全然古びてないですからね。
(前作「EYES OF THE MIND」に続いてハービー・メイスンさんが今度はコ・プロデュースでした。そっちでアレンジやシンセ演奏で加わってたのはなんとボブ・ジェームスさん。40年前から皆さんお元気で心強い!)
面白いのはスタジオにキーボードが持ち込まれていて、時々今の曲のこんなところは~みたいに演奏が入るのですね。流石。なんとなくミニキーボードっぽいなぁと思ったのですが如何でしょうか。
お話によると、なんと向谷さんも、このブログに書いた「東急コンサート」の小曽根真トリオ+東京フィルの演奏を見られていたとのこと。やはり物凄い演奏だったので1年分のパワーを貰ったというお話。あれは本当に圧倒的な演奏で、日本のトッププロだからこそ余計にわかるクオリティってこともあると思います。(逆にネットで見かけた一般リスナーの感想は「?」ってのもあった)
ほぼ東フィルが小曽根トリオに加入した、って体のアンサンブルでしたので(もう共演というレベルではない)。
ということで選曲も良くとても楽しめた番組でございました。司会屋さんから、社長、プロデューサーに、そして今や興行主という無敵のキーボーディスト向谷実さん、今年もご活躍されますよう。有難うございました。
数奇な運命により、世界的な音楽家として知られるBob Jamesさんの楽曲をアレンジすることになってしまった、極東の小国の作曲家の運命や如何に(違うか)。
VIDEO
原曲
VIDEO
やっぱり聞いているだけとは違って、実際にアレンジしてみると、全く別のものが見えた気がする。
なんと、Bobさんが昨夏この参加型動画を投稿してから、誰もjoinしてなかったらしい。言うまでもなく楽曲はこんなに素晴らしいのに、世界の皆がビビったね。うん自分もビビったが。テンポが流動的で2回ほど転調するので、正直アマチュアには難しいかも…?
こういう形にしろ、まさかBobさんの楽曲を自分がアレンジする日が来るとは。フュージョンというジャンルそのものを作った方の一人なので。2021年、恐るべき幕開け。饅頭こわい。
スマホで歌詞や小説を書いたりしている方がいたら、せめてタブレットにした方が効率良いし、目も悪くならないよ、ってアドバイスした方がいいんだろうか。でもタブレットも大概目が痛くなるからね(スマホよりはマシだが)。自分の場合、思いついた歌詞の断片をスマホに書いていたら、使っていたメモ帳アプリがいつの間にか配信停止、しかも誤ってデータを消すという大失態を経験したので、それ以来スマホ大の“リアル”メモ帳に書いています。
(メロディの断片も口笛で録音していたのでそいつも消えた。といっても時間が経つと「なんじゃこら?」ってのも多いですが。大抵新しく考えてる)
リブート版のスタートレック映画見てたら、3作目で操舵士スールーの恋人(パートナー)として、ちらっと男性が出てくるんですね。つまり男同士のカップルってこと。これはオリジナルシリーズでスールー(ミスターカトー)を演じていたジョージ・タケイが近年ゲイであることを公表した影響らしいが、これにタケイは怒ってコメントを出してたんですね。余計なことをするな、自分はノーマルの男性として演じたのにとw なかなか作品愛があって素晴らしい話です。それにしてもリブート2作目後にスポックのレナード・ニモイが亡くなってるし、リブートでチェコフ役の人もなんと事故で3作目公開前に亡くなっているとのこと。新しいスポック役の人はなかなか良いと思う、ウーフラと恋人同士だが倦怠期で喧嘩。ドクターのアドバイスは「地球の女が“私が悪いの”という時は大抵男が悪い」。
ディアンジェロの「ブラック・メサイア」を聴いている。画一的にプロダクション処理されたR&B・ブラコン音楽へのアンチテーゼですね、世間で言われている通り。近年のこの種の音楽は音質から曲調まで金太郎飴で、どれを聞いても同じに聞こえる状態なので。たぶん音質の良くないレコーダー(テープかな?)で一発録りを多様している感じ(もしProToolsなら夢がないなーw)。画一的なアレンジやミックスを拒否してあえて生々しいアーティストの肉声を残してるんだなあと思う。まあ、敢えてヒネたことをいえば、そういう処理を選択した(これも)大量生産商品なんですが。とはいえもちろんなかなか骨のある人で素晴らしい。ピカピカに磨き上げられたプロダクションミュージックではなく、隙だらけの宅録的なものが逆に受け入れられているというのは興味深い。インディーズアーティストでも、凝ったフルアレンジの曲が、シンプルなピアノの弾き語りで新たな顔を見せることだってあります。だから音楽は面白い。
大晦日~新年の年またぎの時間帯で毎年TV東京でやっている東急ジルベスターコンサート、東京フィルハーモニーががっつり演奏を聞かせてくれるのですが、今年も行われていました。コロナのため、チケット払い戻しで無観客だったのに、堂々の全プログラム演奏。東急の男気を見た。といっても後半少ししか見られなかったけど、これがちょうど良いところだったようで、なんとジャズの小曽根真トリオが出演、東フィルとのガチ生共演ですよ。曲は小曽根さんオリジナルの「No Siesta」でしたが、物凄かった。この曲、結構なアップテンポの16ビートジャズなのですが、完全にフルオケアレンジされていて、複雑なキメやらハモやらギミックが絡み合い、それらを全部小曽根さんのピアノが引き受けてリード、圧倒されるうちに6分以上にも渡る曲が終っていた。まさにシンフォニックジャズの頂点、テンションボイシングの宝石箱や~、って感じ。
この「No Siesta」という曲、原曲もかなり複雑なグルーブ感で、トリオ編成でありがながら、16ビート+8分裏打ち+ピアノ左手リフが交錯してます。それをそのまんま東フィルが踏襲してくるとは……唖然。海外有名フィルでもバンドとの共演だと全くリズムに乗れてない演奏はよくありますが、東フィルさんは違いますね。コンサートマスター席の女性が、弦が休みの時にトリプルグルーブで身体を揺らせていたので、これは確実(笑)。
いやー新年早々とてつもない演奏を聞かせて貰いました。お陰で1年分のパワーを貰った感じ。もしどこかで見られる機会があれば皆様も是非。
(一体どうやってこんな演奏を仕上げたのか。今オケも感染考えたら命がけなわけで、その気迫が乗っていたのかも……。指揮者の方は大変そうでしたw そしてこのオケに負けない小曽根トリオのパワーこそ超一級。グルーブは結局トリオが司令塔なので)
たまには実用記事。
少し前から、Native Instrumentsのブラス音源「Session Horns Pro」(以下SHP)を、なんとかビッグバンド曲に使えないかと色々やっていたんだけど、良い方法が見つかったので情報書いてみます。
ビッグバンドブラスの構成の主流は、以下のような感じ。
トランペット x 4
トロンボーン x 4
アルトサックス x 2
テナーサックス x 2
バリトンサックス x 1
これにドラムス・ベース・ピアノ・ギターが入ったのがビッグバンド。ピアノやギターはいないこともある。ベースは歌伴なんかだとウッドでなくエレキのことも。
残念ながらこれを再現しようというのはSHPではやや弾数が足りない。なので普通はこうするでしょう。
トランペット x 2 (Tp1 + Tp2)
トロンボーン x 2 (TenorTb + BassTb)
アルトサックス x 1
テナーサックス x 1
(バリトンサックス x 1)
これでも歌物のバックだとかなり大きな編成で、充分すぎるほど迫力あるブラスセクションになります。余裕で4声のアレンジをクリアできるしね。
ただビッグバンドと比べると半分くらいの陣容になっちゃうので…。
個別の同じトランペット音源を重複して使う……って方法は、どうしても位相やらの関係で気持ちの悪いうねりや濁りが出てしまうようです。なんだか音が不自然です。自分はちょっとチューニングを変えたり試行錯誤したがあきらめました。
他の音源のブラスを持ってくるともっと最悪で、たとえばお馴染みIKのSample Tankとかね、あきらかに不自然なハーモニーになってしまう。全く違うスタジオで録音ミックス実装された音源なんで、合うほうがおかしい。シンセも同じ。
Kontaktのファクトリーライブラリも駄目でした。あれはSHPの前世代の音源のはずなんだが。
そこで、なんとかSHPだけで更にスケールを大きくできないかと考えていたのですが、よく見れば個別音源として使えそうな奴がちゃんとあるではないかと。そこでこうした。
トランペット x 3 (Tp1+Tp2) + Fluegelhorn
トロンボーン x 3 (TenorTb+BassTb)+ Tuba
アルトサックス x 1
テナーサックス x 1
バリトンサックス x 1
バッチリです。実際ビッグバンドにフリューゲルホーンが入ることもあるし、チューバはトロンボーンセクションの最低声部に入ると、不自然さはまったくなし。バリトンサックスは結構音域広いので、汎用的にサックスアンサンブルで使える。
SHPはそんなに重くないわりに音は非常に良いし、アーティキュレーションも使いやすいのが揃っているので最高。
たぶんこういう使い方も想定して、チューバやフリューゲルホーンを入れているんだろうな。さすがNIはよく考えてるわ、って改めて納得した次第。
ミュートトランペット音源だけは、さすがにこのアンサンブルの中には入れないが、ソロなんかでは使えますね。これもかなり自然でバランスがいい音源。
いかがですか。ビッグバンドは、今はほぼアレンジで使うこともないんで、それ専用音源入れるのも疲れるしお財布に優しくない。SHPなら持っている人も多いからどんどん使いましょう。
もし足しても不自然でない音源を見つけたらまた報告します。まあアーティキュレーション等が合わなくなるんだけどね。
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