「春と修羅」の意外な発見

 今回は音楽じゃない話。

 国会図書館のサイトで蔵書をスキャンしたものが見られるのですが、その中に宮澤賢治の「春と修羅」もありました。賢治の生前発表された唯一の詩集ですが、これの貴重な現物が見られるのだからとても良い仕組みです。
 これを見てて気付きましたが、初期の賢治作品の中でも非常に重要な意味を持つ詩、「冬と銀河ステーション」は詩集の一番最後にありました。「春と修羅」は何度も読んでいるのに、意外と気付いてなかった。

 この詩は、ご存知の方も多いでしょうが、後の「銀河鉄道の夜」につながるイメージがふんだんに盛り込まれ、ほぼ間違いなく名作童話の誕生につながるきっかけになったと思われます。科学用語も散りばめられ、賢治以外には絶対書けない世界が現出しています。

 そして気付いたのですが、「冬と~」は「春と修羅・序」と明らかに対になっているんですね。最初と最後で、呼応しあうような関係になっている。あの「序」も賢治以外には書けない非常に新しい表現だったので、これは両方とも賢治は相当の自信があったのではないかと。
 自分も大好きな詩なので、これに気がついた時は嬉しかった。
(ちなみ、序のあと詩集の本編冒頭にくるのが「屈折率」)

 当時世間的な注目はほぼ浴びなかったものの、草野心平が一読して驚いてすぐ同人誌に誘い、中原中也に至っては心酔して座右の書にした詩集なので、たぶん二人とも序と冬と~には、大きな価値を見出していたのではないでしょうか。

 賢治は、作品そのものも凄いが、詩集の構成力にも並々ならぬものがあったといえそうです。
(編集者がいたわけではないので……)

 その他にも、この春と修羅の初版を見ると、当時の印刷とか紙の質感とかがデジタル化されているとはいえ伝わってきて、非常に興味深いものがあります。やはりオリジナルは貴重。お好きな方は是非。