ミックスの極意(2)

 チャンバーオーケストラ(フルオケより小人数、バロック音楽あたりの時代はこの編成だったそう)のデモ曲をミックスしていて気付いたこと。当たり前かもしれませんが、楽器の配置が違っているんですね。
 もともとフルオケの楽器の配置も、調べてみると昔はそんなに厳密には決まってなかったらしいが、ある時今のような配置にすると音響的にとても良いとわかり、それが広まったとのこと。(弦でいえば、客席からみて左から右へ順に第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスと半分に切った扇のような形態で並ぶ)
 これをそのまんま小人数化したのがチャンバーと思っていたが、調べたら全然違っていた。

 第1バイオリンが左前列にズラッ、第2バイオリンが右前列にズラッ、そしてビオラ以下はどこに配置するかはそんなに厳密には決まってないらしい(w)。今回は写真があったオケに合わせてイメージしてたが……。金菅、木管、パーカッション等はもっとはっきりしない(資料や写真ごとに違っていたり、わからない楽器もある→多分定石なし)。
 フルオケ=100人、チャンバー=30人なので、音響的にも最適解が違ってくるのでしょうね。そしてバロック時代の配置資料はほとんどないと思われる。

 なんでオケの配置がミックスに関係してくるかというと、それはもちろん楽器の定位(パン)決めに直接影響するからです。面白いもので、打ち込みのオケでも、というかだからこそ、ちゃんと実際に即した定位にするとリアリティが段違いです。人間の耳はほんとに優秀で、不自然な配置だとすぐ違和感を覚えますので。普段そんなところは聞いてないようで聞いてるんですね(リバーブの分量もそう、奥にいくほど深くする)。

 で、まあ第1・第2バイオリンの配置を資料の通りに左右に振ったら、これが驚くべき左右泣き別れ状態(最初期のステレオ音源みたい)、どうも変だと元に戻したら自然に混ざった。そう、最初から定位を振った状態で収録された音源(パッチ)だったのです(w)。まあクラシック系のオケ音源ではよくある話なのですが、チャンバーのやつはアナライザでみるとアンビエンスもたくさん入っていて、いかにも振ってないように見えたのよ(人数少ないから相対的に反射音が大きくみえる)。

 結局、最後はアナライザーより自分の耳を信じろって話ですわ。

(話を簡単にするために定位って書いたが、むろんイメージャーで振ってますよ、モノラル音源じゃないんだから。ステレオ幅の設定も大切)

 あと、単品の楽器のパッチ(例トランペット)とかもステレオ収録なんだけど、イメージャーで幅を絞るかモノにしないと、トランペット奏者だけ「目の前」に来て吹いている状態になってしまう。そんなオーケストラはいやだ!(笑)
 いかにリアリティを“作る”かっていう話になってくるんですね、最後は。これは実は打ち込み音源だけでなく、本物のオケの収録でも同じ。多数のマイクで収録するわけで、それをミキシングの段階で整理しないとオケの音にならないので。意外ですけどね。