伊勢佐木あたりに点る灯は…

 タイトルを見てピンと来たあなたは、少なくともアラフィフ以上のはずw そう、青江三奈さんが歌った「伊勢佐木町ブルース」の話です。イントロで扇情的なハイストリングスと、青江さんのハスキーで低い「アン、アン」という”喘ぎ声”(音楽的にはスキャットと考えられる)が呼応しあう、一度聞いたら絶対に忘れられない名曲ですね。
 なんか、いきなり聞きたくなったんですよ、Youtubeにも音源が上がっているけど、例によってあまり良いエンコーディングじゃないし、結局ベスト盤CDを買って聞いたがこれがやはり大変良いものなのですよ。聞こえない楽器の音がちゃんと聞こえる、アレンジが立体的によくわかる。ともかくこれは大人のPOPSだなあと、これもムード歌謡になると思います。
(ストリングスは音域の関係で少しピッチが悪いんだけど、そこがまた生の味。絶妙の効果です)

 作詞・川内康範、作曲・鈴木庸一、編曲・竹村次郎。この中で川内さんは、昭和の数々の演歌・歌謡曲を手がけた希代のクリエイターですね。なんと、あの『月光仮面』の原作者でもあり(日本の特撮ヒーロー物の元祖!)、そして70年代にはこれまた大ヒットした子供向け特撮物『レインボーマン』も手がけられた方。自分はそっちは小学生のとき直撃世代なので、敵の「死ね死ね団」は怖かったなあ(一説ではこれがオウム真理教にまで影響したとか)。
 ちょっと話が逸れましたが、そんなこんなで歌詞がまた素晴らしい。じっくりと聞き込んでいると、引き込まれてしまいます。

 青江さんは、今から思うとクラブシンガーっぽいな、などと思っていたのですが、Wikipediaを見ると本当にクラブシンガー出身で、高校時代既に有名な「銀巴里」で歌っていらしたのですね。この曲のアレンジはジャズっぽいけど(アフタービートだし)、だから見事に歌いこなしておられるのかと納得。川内さんに見出されたのだそうで、この曲の他にも作詞担当は多数。
 いや、しかしこのハスキーで低い声、これで冒頭の煽ぎ声のパートは、今から聞いても非常に良いですわ。凄いアイディアです、サビでまたスキャットが入るしね。
 そして、ジャズだからこの曲を昔の歌番組の生ビッグバンド(+ストリングス)でやると、実に決まるんですね。カッコいいブレイクもありますよ、これがビッグバンドブラスで決まると超クール。そんなところまで考えられたアレンジであったといえるでしょう。

 ま、この曲は大人が聞いても嬉しいが子供が聞いても楽しいんだよね(w)。なんかお姉さんがアンアン言ってるしシュビドゥバーとか言ってるし、子供にも大ウケ。真似してましたよ。青江さんはドリフの「8時だョ!全員集合」にもよく出演して歌唱されていたような記憶。

 横浜には、この歌を記念した歌碑まであるそう。
 平成も終り、令和の世からはるかに昭和中期のムード歌謡に思いを馳せる、そんな夜です。売れた枚数じゃなく、この頃のヒット曲は本当に大人から子供まで皆知っていました。
(ベスト盤には、後年リリースしたシティポップ調の曲まで入っていました。イイっすぜ)