14番目のツンデレ

 ようやく荒井(松任谷)由実さんの「中央フリーウェイ」をCDで堪能(アルバム「14番目の月」収録)。以前も書いたがシティポップの名曲です。
 お洒落でシックでたまらんですわ、不安定なメロディラインがふわふわした恋のときめきを暗示してるんだな、とか。アレンジのセンスの良さはもう言うまでもないし。
 一個、ミキシングで思ったのは、結構パーカッションが大きめにしてあるな、ってこと。ビブラスラップなんて「カーン」って入ってる。

 アルバムのレコーディングメンバーを見てのけぞったよ、ギターは松原正樹さん&鈴木茂さん、パーカッション斉藤ノブさん。キーボードはもちろん松任谷正隆さん、細野晴臣さんが面白い楽器で参加してる曲もある。後年の作品で名スタジオミュージシャンを起用していたのは知ってましたが、この頃からもうそうだったんですね。
 コーラスは山下達郎さん、吉田美奈子さん、大貫妙子さん…他にも凄い名前が並んでいます。いやちょっと待て…w

 いやー、これはもっと早めにちゃんと聞いておかないといけなかった。自分みたいな(元?)音楽マニアって、根っからのひねくれ者で、みんなが聞いてるユーミンなんて今更聞けるか……なんて思ってるんですよ。なるべく人が知らない曲を聞いて名曲名演を発見したい、みたいなね。身に覚えがある人もいるでしょ?(笑)やはり人がいいっていうものは一回は聞いて確かめるべきですわ。
 とりあえず、ちゃんとCDボックス買いました。「荒井由実 / Yumi Arai 1972-1976(5CD+DVD)」

 その中で最初に聞いたこのアルバム「14番目の月」ですが、良曲揃いでうかうかしていると頭から聞いて止められず全部聞いてしまいます。1曲目冒頭の松任谷正隆さんの強力なピアノ、こりゃマイケル・マクドナルドあたりを彷彿とさせる音。
 そしてユーミンの歌詞とメロディのコンビネーションの非凡なこと。時に、その歌詞には文学的ともいえる美しいイメージが散りばめられ、聞いていてドキっとさせられます。ほんと今更だけど、目も眩むような才能の輝き。これで二十歳そこそこだったのだから、なんと形容すればいいのか。1976年、ため息が出ます。

 このアルバムの発売直後くらいにお二人はご結婚されるのですが、最初ユーミンさんは結婚後引退を考えていたらしい(wikipedia情報)。ここだけは自分をおわかりでなかったと思う、このレベルのクリエイターがおいそれと引退できるわけがない。その後の活躍はもう言うまでもないですね。
(お二人はだから、もちろん音楽家として全てを認め合ってご一緒になられたのでしょう、ロマンチックなお話です)

 アルバム「14番目の月」はしかし、決してシティポップ作品というわけでないのです。バラエティに富んだ曲が入っています、売れ線系ロックもあり、フォーク的なアプローチもあり、クラシカルな曲もあり。もちろん全体的に統一感はありますが。非常にお洒落な感じなのは事実、これ’76年に聞いた人はどう思ったんだろう。このセンスには、虜にされたんじゃないだろうか。

 さっきパーカッションのミックスのことを書いたけど、(フィーチャリング)ピアノの録り方もいまと違っていて、そこは違和感がある。なんとモノラルで録っているんですね(今は普通ステレオ収録)。当時はまだスタジオの録音機材はアナログテープの時代で、16chか下手をすると8chかもしれない。それでトラック数が足りなくなると、トラック間でピンポン録音して空きを増やしたそうで。その分、音は悪くなったりする。(実際、このコーラスはそうだな、とわかる箇所ある)今はデジタルでトラックは事実上無制限ですが、そんな事情でトラック数節約のためかもしれない。

 ところで、アルバムで一番意外だったのは、ユーミンさんの声がチャーミングでカワイイってこと(w)。口はばったいけどこりゃツンデレお嬢さん系ですね、かなりデレ成分の濃い。(←少なくともこのアルバムでは?)

 ボックスの他の4枚を聞くのが楽しみになってきた。また何か発見したら書きます。音楽制作をやっている人間だったら、今の音楽から失われたものが見つけられると思います。(配信なんかで聞いたらダメよ)