日: 2020年2月7日

神保彰さんの新作「26th Street NY Duo」

 遅ればせながら、世界的ドラマー・神保彰さんの新アルバム「26th Street NY Duo」を拝聴しました。いや~もうエガったです(思わず訛った)。

 アダルトコンテンポラリー・フュージョンとでも呼びたくなるような大人のインストゥルメンタル(Smoothというにはまた違うハードさ、シリアスさが底にあります)。なんだかふとMJQ(Modern Jazz Quartet)を思い出しました、不思議です。一音一音の密度・濃度が高いのに、音数は少ないのだから(そう、まるでマイルスのソロのように)、実はスリリングでもあり、次の展開が楽しみで、一度聴き始めたらCDを止めることができません(w)。
 これが実質デュオで演っている音なのだから、驚いてしまいます。

 参加ミュージシャンは、ギターがOz Noy、ベースはWill Lee。二人一度に参加している曲はなく、Oz-Will-Oz-Willとデュオ曲が並ぶ構成。
 Will Leeは、いわずと知れた大ベテランのセッションメンですが(一体世界中で何枚に参加しているか本人もわからないはずw)、今回は非常に落ち着いたプレイ。というか、神保さんの出方を見て少し遠慮しているか、やや楽曲解釈に迷いがある感じはする。
 その分、Oz Noyは激ハマリの大暴れで(といっても節度はありますよ、人のセッションなのでw)、大当たりで楽しめました。方向は違うけど、故Hiram Bullockを髣髴とさせるヤンチャな弾きっぷり。実はこの人のギターは初めて聞きましたがこれはいいプレイヤーっすよ~。
(このあたりの差が、1曲目=withノイ曲という構成になったのかもしれません、まあ憶測ですが)

 前述の通り、音数を絞った神保さんのプレイのカッコ良さ。うーんこれは若いドラマーには無理ですねー、ベテランの余裕と貫禄。そして、もし自分の聞き間違いでなければ、まるで一時転調ならぬ「一時転拍」とでも呼びたくなるような、絶妙なタイミングでのショットが入ったりして、これがまたクール。ただただ脱帽です。
 ステディでタフなタイム感、これはジャズでもロックでもみられない、ジャパニーズ・フュージョンで培った神保彰さん独特のものではないでしょうか。このドラムプレイだけで値千金。

 またミックスがカッコよいのですよねー、実は、今回のを聞いて言うんじゃありませんが、少し前から神保さんのドラムをワンマイクでスタジオブースじゃない場所(練習部屋とか)で録ったらどうなるだろう……かなり面白いんじゃないかな、などと妄想しておりまして(w)。そしたら、まさにこのCDのサウンドがそれに近いじゃないですか! えええ……と驚くとともに、流石にご本人が一番分かってらっしゃるのだな、と。で、ですよねーw
 神保さんのドラムは、いつも現代レコーディング技術の粋を集めた環境での超ハイファイ録音なので(当然、世界最高レベルのドラマーなので)、そうでない音というのは非常に新鮮で面白いです。
 一言で言えばローファイですか、テープっぽい質感もあって、ルーミィなアンビエンスもたっぷり、スネアなんてアンビエンスのお陰で’80年代のゲートリバーブみたいな感じにも聞こえる。このミックスはとにかくクールっす。
(最近の音は全部こうだったのでしょうかね。妄言多謝です)

 あと同期シンセの音が、ユーロラックモジュラー感のあるアナログRAWな感じで非常に尖ってて現代的、これもプログラミングは神保さんなので。(なお全曲書き下ろしオリジナル曲)

 いやー、世界の名ドラマーから世界の今のフュージョンの音を教えて頂きました。アマゾンのカテゴリランキングで(同時発売のもう1枚と同時に)1位になるはずですね。
 フュージョンの可能性を再認識した作品でございました。