日: 2020年1月7日

ミキシングの低域処理

 ミキシングも慣れてくるとだんだんコツがわかってきて、作業手順なども効率化できるところはやって、スピードも上がってきます。この楽器のこの音域とボーカルは被るな、などとわかるようになってくる(アナライザーで調べてなくても、音を聞いてわかる)。
 ところが、いつまで経っても効率化できないのが低域の処理。普通のポップスの楽曲なら、ベースとキックドラム(バスドラム)の音の被り防止処理。これはいつもアナライザーとにらめっこしながらEQを調整し、音を聞いて確認し、の繰り返し。キックとベースの組み合わせによって、50-60Hzあたりでどちらかがピークになっているので、ピークは生かして被るところを下げる、という処理。下げすぎると迫力がなくなるし、上げすぎだと低域がボヤけてブーミーな感じになります。なのでカット&トライの連続です。アナログシミュ系コンプやEQなどの癖もあるし、なかなか一発では決まりません。

 これ、なんとかならないかと思って、その種の本を見たり、ミキサーの方のブログやら海外翻訳系の記事を見たりするが、どれも上のような泥臭い処理手順しか書かれていない。つまり、これは誰も効率化できない処理なのですわ(笑)。
 で、結局いつもミックスをモニタースピーカーで聞いたり、ラジカセやらコンポやら大型ステレオ、スマホで、……なんて総動員の事態になっちゃう。こうやってできるだけたくさんの環境で聞いてみる、という至極面倒な手順が、低域(+他の部分も)を確認する唯一の方法ということです。これ、第一線の専業ミキサーの方は必ず書いている方法なんですね。

 面白いことに、ハイ&ミッドは、モニターヘッドフォンでほぼきっちりバランスが取れるんですわ。ただ低域だけは、やはりスピーカーで確認しないとバランスを調整できない。非常に音のエネルギーが大きいので、大抵は上げすぎでボヨボヨした音になりがちです。
 ジャンルによっても低域の処理は違ってくるし(ロックやEDMならド迫力でいい)、このあたりはAI的なミックスプラグインが今後発展するにしても、結局人間が耳で最終確認しないといけないのでしょう。「方針」を決めるのは人間なので。

(スピーカーのことばかり書いたが、様々なヘッドフォンを試すってのも重要。ただ、リファレンスのモニタヘッドフォン&スピーカーできっちりバランスを取ると、大抵他のものでも良いバランスで聞こえます。流石にモニタはそういう目的で作られているだけある。粗捜し専用って感じ)