ハープの不思議

 アレンジしてていつも思うのが、ハープという楽器の音色の美しさ。まあ自分の場合はサンプリング音源(バーチャル楽器)ですがw それでも現在の音源は、ただ録音した音を並べただけのものとは大違い、ちゃんと演奏エンジンで奏法も網羅して、音の強弱で音色まで変わり、同じ音程・強さの音を複数用意して自然に聞こえるようにしたりと、驚くべき細かな作り込みがされています。これはもう便宜上でなく本当にVirtual Instrument=仮想楽器といって差し支えない。特にヨーロッパのデベロッパの音源は素晴らしい物が多い、音楽への愛がないと作れないってのばかり。
 ちょっと脱線したけど、ハープの話。もちろんハープの音色が美しいといっても、おいしい音域ってのはやっぱりあるわけで、高すぎるところ低すぎるところは、やはりイマイチ響かなかったりする(このあたりは音源毎の差もある)。それで、アレンジでちゃんとハマるように使うわけです、そうするとああハープだね美しいねってなるw

 で、なぜかハープでアレンジを書いていると、ホールトーンスケール(全音音階)が使いたくなるんですよね。多分これ自分だけじゃないでしょ?作曲勢の皆様も同じじゃないかなぁ。
 わからない方は、鉄腕アトムのオープニングの不思議なフレーズを思い出して下さい、あれがホールトーンです。(何?アトムがわからんて?w 白黒のやつだしな)
 ねえ?ピアノとかでやると、ちょっと不自然な感じもあるんだけど、ハープでやると非常に美しく響くんです。チューニングの関係もあるんだろうけど、どうもこれハープという楽器に内在している、なんらかの根本原理的なものに触れるからちゃうかと、思えてきます。むしろこのスケールこそ本来のハープだったのでは?とかね。

 今僕らが思い浮かべる一般的なハープは、オーケストラのどでかいグランドハープですが、あれは非常に洗練された複雑な楽器で、あのフレームの中に精密メカが入っていて、ペダルを踏むと弦が半音(全音)上がったり下がったり、というシステムですからね。
 昔のハープはむしろ民族楽器で、ハープ類のリラなんか手で持てるくらいの大きさだったわけで(その代わり音域も狭い)、当然西洋音楽確立前からあるわけで、その頃はメジャースケールなりマイナーなりにチューニングされてたわけじゃない。むしろ今でいう民族音楽スケールだったり、それこそホールトーンだったかもしれない。その名残りなのかもしれないですね。
 グランドハープは、これらのハープを発展拡張してオーケストラでも使いやすいようにしたものだから、やっぱり昔を引きずっているわけです。

 民族楽器を使うと、それがたとえ仮想楽器でも、つい違うスケールを使いたくなるのは、やはり知らず知らずのうちにその楽器の歴史に影響されているんだなあと。それくらい一つの楽器の背負っている背景・文化は重い。そしてそういうスケールを使うと、また非常に美しく鳴ったりするのだから不思議ですね。
 面白いなあ、と日々思っています。

(そこへ行くとピアノやギターは、歴史はあるが明らかに根無し草で汎用的だなあ。楽器界のコンビニってとこか? 更にシンセサイザーは……って広げるとキリがないのでこの辺で)