実機としてのキーボードシンセ

 最近、曲を書いていて気付いたこと。ハモンドオルガンをバッキングに使おうとして音源を色々試していたのですが、NIのKompleteに入っているVintage Organs、あの中のパッチを色々試してみたがどうもしっくりこない。(一見高品質で良さそうだが、こういうことが多い気がする)
 それで、目の前の高級MIDIキーボード(として使うことが多いw)FA-06もハード音源だったなあと思い出して、この中の「B3 Organ」を呼び出してみたら、まあ一発でハマりまして。
 たくさんパッチを用意しても使えない音色ばかりだったら無駄というか邪魔でしかないな、と、やはり70年代からオルガンやキーボードを作っているハードメーカーは、ソフト音源のデベロッパーとは積み重ねが全然違うし、ノウハウも段違いですわ。実戦的な音色ばかり揃ってる。
 これはあんまり書いている人がいないが、キーボード(シンセ)は「実機」なわけで、DAWからドライブしてもその音の説得力は歴然としてますね。オルガンとかエレピならソフトより絶対こちらの方がいいし、シンセでも歌物で使うような典型的な奴は、やはりハマることが多い。(まあこのあたりはソフトシンセもカバーできるやつはあるが)
 実機は、やっぱり音色や操作性がハードに合わせて練りこまれているわけで、実体のないソフト音源よりはるかに優位かと。弾いたそのまんまのフィーリングで打ち込みでも使えるわけで。

 だから、打ち込み制作の場合、音源のないMIDIキーボードで作業する人も多いが、できれば少し奮発してキーボードシンセを揃えた方が、あとあと幸せになれる気がする。(Roland FA-06の場合、フェンダーローズの音もかなり良いっす、FM系のエレピも入っているし。まあYAMAHAでもKorgでも好きなメーカーを選べばOK)
 これは一番手軽に揃えられる「実機」なので。

(さすがにギターやら弦やら菅やらは、もう容量無制限のソフト音源にハードは太刀打ちできないが)

 FA-06の場合、レスリースピーカー(回転スピーカーね、扇風機の前のワレワレハ~、の原理)もシュミレートしていて、ピッチベンダーを倒すと、回転数が上がってレスリー効果が出ます。これが、実機に即して徐々に上がっていくの、切ると徐々に下がる、リアルでかわいくて笑えました。まあライブで使うときはペダルにアサインするしかないんだろうな、両手塞がってるし。打ち込みは後からできるから関係ありませんが)

 ちなみ、ハモンドオルガンも元はトーンホイールという歯車が中でぐるぐる回って発音していたという、「電気」オルガンですからね(「電子」オルガンではない)。
 エレピもローズやヤマハCP-70は電気ピアノだし(ピックアップで弦の振動を拾う、エレキギターと同じ原理)
 こういうのは重いし高価だしメンテも大変だしで、ほぼ全て「電子」キーボードに駆逐されましたね。現代では、サンプリングから更に進んで、こういう物理的な機構をソフトでシュミレートするような方向に来ているのが面白い。ハモンドもかなり前に潰れて、日本の鈴木楽器(浜松)が買収して鈴木ハモンドとして、今は製品展開しています。
 伝統的な「電気」楽器も、消えることなく技術の発達により受け継がれていくわけです。