ディザリングのニッチな問題話

 いやぁ、最近ちょっとは耳が良くなったかな、earだけに。
 …そろそろ誰か止めてくれ。

 音楽制作で、マスタリングまでやっていると、必然的にぶち当たるのがデジタル変換ノイズの問題。パソコンを使った制作だと、内部的には音もすべてデジタル処理される訳ですが、最後にCDに焼くためのデータ化の時、内部データと仕様が違うと、変換処理しなけばならなくなります。CDと同じデータ形式(44.1kHz/16bit)ならそのままでOKだけど、今は高音質化のため大抵48kHz/24bitで行っているので、ここでどうしてもコンバートが必要になります。ところが何も考えずに変換すると、原理上耳障りなノイズが乗ってしまい、かなりマズいわけ。これを目立たなくするために、わざと最初から極小ノイズを乗っけてカモフラージュする、これがディザリングの原理です。(というか、自分はそう理解しているぞ)

 少し前、CDリリース用のデータを準備する機会があったんですね。それで、マスタリング後のデータ48/24を、44.1/16に書き出したわけです。ここで当然、ディザリングの出番です。Sonnoxのリミッターに16bitディザーが入っているので、これを最終段に通してディザーONにしたんです。
 ところがね……どうもこれが調子良くない。書き出したファイルを確認すると、なんだか全体的に透明度が失われていて、それこそディザーで汚しました感がしっかり出ちゃってる。
 ディザーをオフにしてもまだおかしいので、一度リミッターを外して、そのままで書き出してみた。そうしたら、非常にすっきりと透明度の出た、きれいな音だったわけ。おかしいなあ?ディザリングしてないハズのに、なんでこんなにいい感じに変換できるのか。ミックスの加減でこういうこともあるのかな、などと思っていた。

 しかし、流石にこのまま納品してしまうのも怖い、ディザリングは常識だし……と思い、もしや?とDAWのマニュアルを隅々までチェックしたが、それ系の設定項目はなし。我らが(株)インターネットが誇る最先端DAW「ABILITY PRO2.5」が自動でディザリングなんて気の利くことする訳ないし……と悩んだ末、とうとうサポートに質問投げてみた。

 翌日来た回答は……なんだったと思いますか? なんと、書き出しデータ形式を変えると、自動でディザリング処理してたんですよ! おい、それならそうと早く言え!(笑) あやうく二重に掛けて納品するところだったじゃないか。道理でSonnoxリミッターでノイズが乗ったような音になるわけだわ。これインタネWebの機能比較表には確かに載ってるが、マニュアルには一切記述がない。大丈夫かなあ、自分のほかにもプロで愛用者いると思うが、知らずに二重ディザーやっちまってる人がいたりしないか。ユーザー少ないから大丈夫?そうですか。

 いやもう、自分の耳は信用した方が良い、最後に頼れるのは自分の耳って話ですわ。
 これもデモ曲用に結構マスタリングをやってきたから、耳が出来てきてた、っていう流れなんだと思う、明らかに。

 まあ、ディザリングを切れない(=任意のディザーソフトを使えない)のは問題だけど、48/24のまま書き出してOZONEでやってもいいし……しかし注意書きは欲しかった。

 蛇足ながら、Sonnoxリミッターにも怖ろしいクソ仕様を発見した。こいつのディザーは、オンにすると16bitディザーとして働き、オフにすると24bitディザーになります。
 つまり、どうやっても絶対に切れないって寸法。おいちょっと(笑)、そんなのアリ? 道理でオフにしても音がおかしかったわけだ。ひゅー冷や汗。マスタリング最終段専用やん。
 というか、自動ディザリングのABILITYでは使っていけないリミッターじゃないか(笑)。えぇぇ?これヤバすぎっしょ。インタネさんOFFスイッチ付けて。

 ボカロP時代には良く使ってたが、最近は使ってなかった、ああ良かった。思えば昔はディザーなんて全く気にせずやってたなあ、どうせ128のmp3より音が悪いかも?って世界だったし。

 以上、優雅な生楽器プレイヤーの皆さまには無関係な、制作屋特有のエピソードでございました。

(追記/書き忘れてたが、SonnoxリミッターはABILITYに付属してます。ニッチな問題だけににっちもさっちもいかない、ルイ・アームストロングちゃうで)