日: 2018年10月4日

アウトボードの話

 少し前の話ですが、アウトボードを導入したらミックスが良くなるんじゃないかと思い、物は試しと一度やってみることにしました。
 アウトボード、つまりスタジオなんかにあるハードのオーディオプロセッサの総称ですね。
 といっても、そんなに高額な物をポンと買えるわけでもなし、とにかく一度実験してみようと、目ぼしい製品を探していたら、ちょうどラックマウント型のステレオコンプレッサーが安く出ていました。
 具体的な値段は、恥ずかしいので書きません(笑)。そういう価格帯だと思って下さい。

 本体に多少傷はあるが完動品で、前オーナーは大事に使っていたらしい、これはいいと思って。特に80年代(の多分後期頃)の製品なので、もしかしたらこのコンプを通したら音が80年代になるのではないか?とホワンホワン(妄想)してまして、期待度マックスでオーディオI/Fに接続したわけですよ。

 DAWから出力した2mixの音を、I/Fから結線したコンプの入力に通し、アウトをまたI/Fに入れて、DAWで録音する、というルーティングです。デジタルで回っていた音がアナログ信号に変換され、コンプを通って、またデジタルに変換される流れ。アナログの歪みもいい感じに付加されるはず(きっと)。

 信号を出してみたところ、コンプのレベルインジケーターも点灯し、DAWにも信号が入ってきており、ちゃんと動いている模様。
 いよいよ、モニターヘッドフォン装着。これでミックスが終ったばかりの曲の2mixをプレイ! これ、どうなったと思いますか?

 「キャッ」ですよ「キャッ」。
 あまりの音の酷さにリアルに身をよじったね。
 いい歳したおっさんにこんな声出させるなよ(w)。

 いやー、この時の音の薄っぺらさ、ペタンコな感じといったら。驚くべきものでした。2mixの音って、もうあらゆる楽器の音やらボーカルやらすべて信号処理が終わって、膨大な情報量があるわけです、考えてみたら。この時点でかなり音が立体的になってますのでね。音の定位や奥行き感まで考えてミックダウンしてるので。
 それらの潤沢な情報が全部飛んで、ほんとペタンコ。3次元が2次元になってしまった感じ。ある意味凄い。

 それで思い出した、こんな感じの音、確かに80年代にあったっけ……CDが出た当初、SHARPあたりが低価格のCDラジカセを作ってたけど、あれと同じ音だわ、とw
 80年代っていっても、そっちじゃ困るなあ……。

 ということで、ショボーンとなりつつこのコンプは押入れ行きになったのでした。
 そもそも、この製品は元の価格からいっても、2mixの音圧上げとかではなく、ギターやキーボードのエフェクトボードに入れたりするやつだからなあ。こんな使い方をしちゃいかんでしょう(今更)。

 そして悟ったよ。こりゃ10万以下のアウトボードは問題外だ、ってね。
(もちろん、前述のエフェクトチェーン入れるやつでは、安くてもいい製品はあるが、あくまでミックス用製品の話)
 しかも高額なアウトボードはそれこそ精密機械なので、年中温湿度管理が必要でしょう。故障も心配だし(ほぼ修理不能と思われる)、経年劣化もする。こりゃ個人が手を出すのは得策じゃないってね。
 ある程度まではソフトのプラグインでやって、それ以上のクオリティを望むなら、スタジオに依頼した方が早いし確実っすわ(それなりにギャラは発生しますが)。

 インディーズで本格的にやっておられるアーティストさんも、やっぱり信頼できるミキサーとスタジオを幾つか知っていて、そこへ頼んでいる感じのようですね。宅録である程度やって、今はネットで送れる時代なので。

 よほど儲かって仕方がない作家さんならともかく(税金対策にもなるし)、流石に自分のような立場の人間が、アウトボードに手を出すのは無茶のようです。
(怖ろしいことに、本当にスタジオ級の機材を揃えている作家さんは、これまた結構いますが…w)

 また、今のプラグインは本当に優秀で、安いハードなんて全く不要なんですね。アナログ風味を出せるやつもたくさんあるので。
 色々わかって面白かった実験でした。

(あと、このレベルで機材を使いたいなら、もうケーブルも確実に音に影響しますわ。アナログルートを通るので)